景観構造マトリクス

 

1) はじめに 

  景色を、ある空間の中で体感し、総合化(構造化)する事を「景観」 としたい 

  その際、個性(個々の感性=個々の想像力)は、様々なイメージをメッセージとして受け取る  

  (美しさ・楽しさ・明るさ・スピード・安心・驚き・清潔・健康・懐かしさ・落ち着き・癒し・和み etc)  

  それらに共感することが「感動」である そしてその時、生きていることを肯定し

  あらためてフレッシュな感情つまり「希望」を実感することとした

  そこで、その様々なメッセージについて今一度整理しておきたい

  「景観デモクラシー」の中で述べている通り、ともすればその文化性を尊重する傾向があるが

  より大衆的な景観概念もまた貴重である

  それらを並列的にあつかうために、タテ軸・ヨコ軸からなるマトリクスを作成し

  上記メッセージを含む景観概念をあてはめてみることにする

 

2) 景観デスティネーション(景観鑑賞目的)

  様々な景観概念(コンセプト)が考えられるが

  ここでは少し柔らかく考えて それを景観デスティネーションと呼んでみたい

  「人が何をして景観を鑑賞する目的とするか」 を順不同で列挙してみる

 

 名勝……………渓谷・滝・湖・洞窟・海浜・温泉・高原・台地・湿原・湧水

 遺跡・文化財 …国宝・重要文化財・史跡・庭園・重伝建・産業遺産

 町並・集落 ……城下町・門前町・宿場町・湊町・散村・花街・町屋・民家・下町・美しい村

 道路……………街道・国道・高速道路・SA・PA・道の駅・旧道・ロングトレイル・林道走破

 巨石・巨木 ……信仰空間・磐座・御神木

 山並……………霊峰・遥拝所・山容・シンボル・スカイライン・雪形・山当て・山座同定

 パノラマ ………都市パノラマ・山頂展望・峠・オーシャンビュー

 聖地……………神社・寺院・御朱印・お守り・パワースポット・巡礼・遍路

 太陽・月・星……ご来光・夕焼け・星空・星座・月見・霧景色

 祭り ……………伝統祭り・民俗行事・都市祭り

 花景・グリーン…桜・梅・桃・・菜の花・ひまわり・芝桜・藤・はなもも・菖蒲・ラベンダー・野草群生・芽吹き・紅葉

 乗り物 …………鉄道・飛行機・船舶・クルーズ・バス・秘境駅

 テーマパーク …キャラクター・時代村・世界村・博物館・美術館・動植物園・水族館・公園

 リゾート…………島巡り・海辺・高原・温泉地・スポーツリゾート

 イベント…………スポーツ・コンサート・野外フェスティバル

 夜景……………都市夜景・工場夜景・港夜景・花火煙火

 廃墟……………廃村・廃道・廃線・廃坑・廃墟

 お城ツアー ……城郭・城址・山城遺構

 土木施設………橋・ダム・運河・港・灯台

 建築物…………有名建築・レトロ・高層ビル・団地

 工場萌え………プラント夜景・工場クルーズ・工場見学

 農地景観………棚田・パッチワークの丘・茶畑・放牧地

 

3) ヨコ軸−社会性(時間概念) 

  人間の根源的な感情に基づくものをX軸の最も左に位置させる

  個人が求めるもの…美、趣味性、精神性(スピリチュアルなもの)である

  その対極に文化的なもの、アカデミックなものをもってきたい

  人間の営み(風土)がイメージされるもので、歴史性あるいは物語性も意識される

  あえて時間的な概念が強いもの、としてみた 

 

4) タテ軸−都市性(空間概念)

  Y軸の座標の要素については未だこれだというのには行き着かないが

  暫定的に地理的な概念をあてはめてみたい

  たとえばわかりやすいのは都市空間的なものか自然空間的なものか

  別の言葉では人工的なものか自然的なものか、という捉え方である

  またこれは日常的か非日常的なものか、あるいは動的か静的か

  機能的か非機能的か、などとも言い替えられよう

 

5) 景観デスティネーション・マトリクスの4象限 

  

  上記の景観デスティネーションを思いつくままにマトリクスに置いてみた

  もちろん景観概念には優劣があるわけではなく その特性を掴むことが目的である

  したがって4つの象限を上位下位ということでなく あえてまとめてみると

  いわゆる第T象限は人が集まる都市文化ということができる

  それに対して第U象限はむしろ個人の趣味性の強いマニア好みといえよう

  さらに第V象限は人間の根源的な嗜好に基づくものとも考えられる

  最後の第W象限は長い歴史の中で育まれた人間の営みに関するものである

  以上は必ずしも独立したものではなく ときに複合し関連しあって

  別の象限に位置することもありうる

 

6)  おわりに

  「飯田市の都市景観構造」と題して 別項のように その特性を報告しているが

  それらの項目を上記マトリクスにあてはめてみると

  いままで以上に飯田市の景観構造が理解できるような気がする

  今後 さらに多くの飯田市の景観デスティネーションを拾い上げ

  相互に関連付けることができるならば その全体像を把握できそうだ

 

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2017・6・13

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