オール読書日記 2001年上半期

 


6月30日(土) C

「五感の故郷をさぐる」 山下柚実 東京書籍 1500円

昨日の楽観論と正反対。近代社会が切り捨ててきた「五感/感覚」について、もういちど眼を凝らそう

という試み。学級崩壊やLD、ADHD児童の増加も「五感/感覚」の喪失が一因と指摘する。ところが

後半、白州正子を気取っての、日本文化論がはじまってしまい、急速におもしろさが失せてしまった。


6月29日(金) C

「プレイフル・ワールド」 マーク・ペシ 早川書房 2400円

MIT中退のプログラマー、インターネットのウェブ上で、3次元立体ヴィジュアルを展開することので

、VRML(ヴァーチャル・リアリティ・モデリング・ランゲージ)の製作者。ファービー、レゴマインド

ストーム、AIBO、PS2など新しいオモチャで、人間のイマジネーションはますます進化すると楽観。


6月28日(木) C

「日本の水文化」水をいかした暮らしとまちづくり 三和総合研究所・編 ミネルヴァ書房 2000円

〈環境・エコロジー・人間〉シリーズ第3巻。編集協力、国土交通省土地・水資源局水資源部だそうだ。

水をキイワードに、地域の水文化を研究することから、まちづくりを、また地球環境を考えようとする試

み。方法論としてくわしいが目標がなんなのかはっきりしない。そこらが今ひとつ乗りきれないところ。


6月27日(水) C

「カフェCafe」東京スタイル50 毎日新聞社 1200円

新しいカフェ文化ができたようだ。あちこちのカフェをメニューとともに紹介。一方で老舗、古くからの

茶店も対比させている。国立の「邪宗門」や「ロジーナ茶房」にまじって、中野の「クラシック」も。30

年前ですら、その古びたインテリアに驚いたのに、いまだ健在とは。さすがに代は替わってるらしい。


6月26日(火) C

「木の家に住むことを勉強する本」 「木の家」プロジェクト編 (株)泰文館 1886円

木の家がブームらしい。この本は農文協が発売で、入門編というべきか。単なる「家づくり」の本ではな

く、木、森、木材、棟梁さらには炭焼き、しいたけ栽培など幅ひろく展開。いろいろな「木の家」の造り方

がある。あまり凝り固まらず、地元産材を使う伝統工法、杉を使ったローコスト、集成材使用、民家再

生、古材利用、それぞれの長短を、はっきり示したうえでの選択を、施主と一緒に考えるべきであろう。


6月25日(月) D

「アリがわらうときキリギリスがわらうとき」 大滝令嗣 扶桑社 1524円

21世紀の人生設計と副題。この大変革期、サラリーマンはどう生きるか?著者は理系出身ながら

営コンサルタントとしてとくに人事関係を専門とする。退職金、年金など人生シミュレーションをしてくれ

るが現実感なし。この人の周辺は大企業のサラリーマンばかり、そうでない人にはまるで関係ない。


6月24日(日) C

機長が教える「自衛隊機操縦の秘密」 山田 誠 エール出版社 1700円

自衛隊機といっても戦闘機ではなく、元海上自衛隊の哨戒機のパイロットの話だ。P3−Cだから、対

水艦の哨戒や、救難任務が主である。戦闘機にくらべれば地味だけど、4発の大型機を操るのは、

それそれで面白そうだ。前に千葉市で低空を飛んでいるのを見たことがある。館山基地への帰り。


6月23日(土) C

「披露宴 好・珍プレー」 亜繰舞子 文芸社 1500円

披露宴司会業数十年が立ち会った、結婚式泣ける話、笑える話。悲喜こもごもの人生だが、その最大

ターニングポイント結婚披露宴に、スポットを当てたのは企画の勝利か。肩の凝らない軽い読み物に

仕上がった。文句を、というわけじゃないが、強いて申せばその大阪的な泥くささが東京人にはどうか。


6月22日(金) C

「やっぱり木の家」 坂本 卓 葦書房 1700円

本人が満足していれば何もいうことはありません。昔どおりのやり方で家を建てる話。間取りも外観も

それはまさに30年前のもの。同年代の機械屋さんながら、中小企業診断士という器用な人だ。もち

ガンコで、奥さんのいうこともあまり聞かなかった様子。将来、愛想づかしをされないことを祈りたい。


6月21日(木) C

「全国住民サービス番付」 日本経済新聞社日経産業消費研究所・編 日本経済新聞社 1700円

「先進自治体」がひとめで。様々なサービス、行政システムをランキング。これを見て一喜一憂す

職員が眼に浮かぶ。わかりやすい反面、数値化しやすい内容に偏って、個性のあるサービス、シス

ムが生まれない危険性。いつまでたっても我が飯田市が出てこない。巻末にアンケート無回答と。


6月20日(水) C

「サディストは合コンでテーブルを拭く」 富田 隆 世界文化社 1200円

思い当たるヤツいるでしょ?「いがちな人」50人の心理分析だそうだ。駒沢女子大心理学者が“よくい

タイプ”をネタにしての性格分析で盛り上がる。「関西弁を使う関西出身でない男」は、調子のいい時

フレンドリーな感じだが、ちょっと気分がすぐれない時には、まったく別人になる軽い2重人格だとさ。


6月19日(火) C

「老後を楽しく暮らす家」 山本ふみこ 建築資料研究社 1800円

同社発行のインテリア雑誌「Comfort」に連載されたとか、知らないぞ。終始、違和感を覚えた。エッセ

ストというが、たしかに身の廻りのことを書いてるぶんには雰囲気はあるのだ。しかし何処かを取材と

いうことになると、説明者の受け売りで現実感が感じられないのだ。そういった意味では正直なお人。


6月18日(月) D

「ダンカンが行く!」 ダンカン 新潮社 1300円

小説新潮での連載。ダンカンの2泊3日ていどの、旅日記の集合だが企画が新潮社で、放送作家とし

てのダンカンの実力(?)を出しきっているとはいえない。視点が定まっていないというか、彼の個性が

伝わってこないのだ。だから編集担当など、内輪ネタが多くなる。旅にテーマをもとめちゃいかんか?


6月17日(日) B

「サクラを救え」 ソメイヨシノ寿命60年説に挑む男たち 平塚晶人 文藝春秋 1762円

全国の桜の7割を占めるという染井吉野が短命だとは聞いた。一代雑種としての成長の速さも病虫害

に弱く、忌地性のため植え替えも難しい。ところが弘前城の染井吉野は120年も生きているという。

の謎にせまる骨太な物語。なぜ青森なのか?同じバラ科のリンゴの剪定と施肥が、そのヒントらしい。


6月16日(土) B

「『精神障害者の犯罪』を考える」 山口幸博 鳥影社 1800円

近所に精神障害者のリハビリ施設ができることになり、図書館にリクエストして入れてもらった。著者

は地方公務員でありながら、その触法問題について、その歴史、欧米の事情と過去の判例を紹介。

司法精神医学の抜け落ちた問題を提起。おりしも大きな事件の発生で、注目の本となってしまった。


6月15日(金) B

「ケータイ生活白書」 博報堂生活総合研究所 NTT出版 1600円

今や世界語の「ケータイ」。今後そのケータイ文化が、どんな未来を目指すのかを模索する。ケータイ

自体の進化予想もさることながら、日本的な発想、つまりニーズを汲み上げるうまさが世界をどう変え

るか、の社会論でもある。著者はそんな日本の将来性を IT先進国としてバラ色で描いてみせている。


6月14日(木) C

「グルーヴィー ブック レヴュー」 「同 ブック 2001」 ブルース・インターアクションズ 各1900円

70年代「全都市カタログ」の様なものか。そのころを中心にマニアックな本や音楽の紹介。時代の

気を知るものとしては違和感、2冊とも読めなかった。歳をとりすぎたか、しかし同年代の諸君、な

黙っているのだ。植草甚一になりたがっている連中には「30年早いよ」というべきではないのか。


6月13日(水) D

「板谷バカ三代」 ゲッツ・板谷 漫画・西原理恵子 角川書店 1200円

角川書店の「メンズウォーカー」他に連載されたものだとか。大山倍達の本とはなんの関連性もない。

ただひたすら家族のバカさ加減をこれでもか、と説明してくれる。雑誌の連載ならばマンガ雑誌と同じ、

なんでもありでけっこうだけれど、本にすることはないだろう。買って読むひとはいないんじゃないかな。


6月12日(火) B

「装丁/南 伸坊」 フレーベル館 2300円

馬丁や園丁のように、装禎の職人を自認して、装丁家ではなく「装丁」を名乗る。ややこしい話ではあ

るが、中身は作品とその誕生の過程を語る。歌舞伎でいえば「けれん味タップリ」の猿之助のように

毎回のアイデアを自分自身が楽しんでいる様子。玄人筋には、あまり買わない人もいるのでないか。


6月11日(月) B

「日本社会の可能性」 維持可能な社会へ 宮本憲一 岩波書店 1700円

そこで大御所の登場。環境問題を軸に、サステイナブルな社会をもとめ、日本の財政、政治システム

地方自治まで、幅広く論議をする。農業を中心とする内発的発展と景観の復旧により、環境の再生を

提案。しかしイデオロギー的な生々しさが随所に現れ、かならずしも大賛成というわけにはいかない。


6月10日(日) B

「必読!環境本100」 石 弘之+環境ゼミ 平凡社 1500円

東大大学院新領域創成科学研究科石弘之研究室のゼミ研究。実際は104冊、それぞれ3、4冊づつ

院生が本の解説を担当している。ここにある本を全部読めば、環境問題の専門家になれるわけ。おお

まかな流れは理解できるものの、サステイナブルな社会と経済成長の関係は未だよく見えてこない。


6月9日(土) C

「可笑しなアメリカ不思議なニホン」 長野智子 青春出版社 1400円

「ひょうきんアナ」が夫の転勤でNYへ、ニューヨーク大学大学院メディア環境学を専攻しつつの5年

報告。毎日新聞の連載をまとめたものらしい。なるほど軽薄な文体も、目線の低さを強調、バブ

絶頂期のアメリカの姿を垣間見せる。専門のメディアにたいしての日米の意識のちがいがおもしろい。


6月8日(金) C

「もっとも危険な読書」 高橋源一郎 朝日新聞社 1800円

週間朝日連載の「退屈な読書」の単行本化。本にたいして「愛」があるのか、129篇の書評はほとん

美点のみを取り上げる。唯一の例外が、柳美里の「命」で、後味が悪いと評している。「好きにな

かった本については書かないことにしている」というから余程のことなんだろう。読むつもりもない。


6月7日(木) A

「王子さまを探す女、お姫さまを待つ男」 町沢静夫 佼成出版社 1400円

「自分探し」の落し穴。現在社会の若者の病理を、平易かつ明快に指摘する立大教授。母親密着性

糾弾するが、これは農耕民族の宿命ともいう。父親の存在感と幼児期のしつけの再評価。うつ病予防

の3原則など豊富な内容。それにしても通俗的な書名、「ボーダーライン」とでもしておけばいいのに。


6月6日(水) C

世界おもしろ比較文化T「トイレはどこですか?」 小屋一平 心交社 1500円

旅と比較文化をテーマにホームページを運営してきたウタリクリエイツ筑波研究所に寄せられた世界ト

イレ事情。韓国から中国、モンゴルそしてロシアからヨーロッパへ。さらにトルコ、エジプトからパキスタ

ン、インド、チベット、東南アジア、オセアニアと地球を半周。すべて写真入りで、ここまで続くと疲れる。


6月5日(火) C

アートビュウシリーズ「ターナー」 藤田治彦 六曜社 1800円

近代絵画に先駆けたイギリス風景画の巨匠の世界だそうだ。水彩の地誌画家としてスタートし、晩

のあの有名な「雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道」にいたるまでの、画風の変遷のすべてを、

影響を受けた絵画とを対比させながら克明にたどる。こんなにも、器用な画家とは知りませんでした。


6月4日(月) C

「飼ってはいけないマル禁ペット」 パンク町田 どうぶつ出版 1400円

動物好きでプロレスラー志望、モヒカン刈り、フリーのペットコンサルタントである。ほ乳類、は虫類はも

ろん、魚類、鳥類、両生類その他、昆虫類まで。それぞれの餌、価格、月刊飼育費用、対人適応度

に学術的な説明も詳しい。がそれよりも、エピソードをつづる半分壊れた文体がおもしろく、ユニーク。


6月3日(日) B

「テレビ−『やらせ』と『情報操作』」 渡辺武達 三省堂 1600円

同志社大教授による硬派のメディア論。テレビにおける「やらせ」「情報操作」はそもそもが逃れられ

いものとし、それらを監視する、公立の「日本マスメディア委員会」と、後で検証可能な資料を保存する

「国立映像資料館」の設立を提唱。ケイタイ、インターネットなどとの関連については言及していない。


6月2日(土) C

あなたも理想の家が持てる「建てて、納得!」 片山かおる 文藝春秋 1429円

バブルをうまくやり過ごし、前作「お受験」であてて中古の3階建てを購入した著者が、こんどは住宅に

む。今回もカチッとした文章。34軒の1戸建てを取材するが、ほとんどが建築家とうまくいった例だ。

最後に施主、建築家、工務店、不動産屋の座談会で本音が出る。ほんに、住宅づくりはむずかしい。


6月1日(金) B

スペンサー・シリーズ第二十七作「ハガーマガーを守れ」 ロバート・B・パーカー 早川書房 1900円

本屋でずっとガマン、やっと図書館に入った。素人がみればヘタな訳なのだが、ファンはその計算しつ

れた語彙の選択に酔いしれるのだ。もうストーリーはどうでもいい。しかし今回はホークがヨーロッパ

出かけて不在。スペンサーとスーザン、ホークの3人の、絶妙な会話を楽しむ向きには不満気味だ。



5月31日(木) C

「馬追い街道」 (財)馬事文化財団 馬の博物館

表紙の写真(明治のころの馬方)にひかれて借りてきた。同博物館春季特別展の全55頁の冊子であ

る。山国信州は何処に出るにも、峠をこえる必要がある。他地域との交易は主として「中馬」といわ

馬の背にたよった。奥会津の馬街道とあわせて、郷愁をさそう展示品が並ぶ。こんな時代があった。


5月30日(水) D

「ガールズ!ポップラン」 長谷川理恵 ワニブックス 1580円

[CanCam」でモデルデビューした著者の、初めてのエッセイだという。芸能方面に疎い身には「誰な

の、この人?」というところ。家内にきいたら、「不倫は文化だ」とのたもうた石田某のお相手だというこ

とだった。内容はオシャレ、メイク、ファッションとまるでお呼びでないことばかり。したがって感想なし。


5月29日(火) C

「いうこと聞けよ、パソコン」-致命的トラブルの傾向と対策- 奥 和宏 技術評論社 1580円

MS−DOSの時代、「あーそうだったのか」で爽やかな朝を迎えたものだ。たしかにWindowsでいろ

ろできるようにはなったものの、訳のわからないトラブルが発生してお手上げという事態も。そんな

事例を検証。ところどころのイラストがよろしい。ああ、もうこのノートには3台分くらい突っ込んでいる。


5月28日(日) B

建築家 宮脇 檀・名作椅子コレクション「父の椅子 男の椅子」 宮脇 彩 PHP研究所 1650円

学生の頃「マユミと読むらしいぞキザだよなあ」と話していたダンディ檀さんも、故人となって早や2年、

離婚して以来、娘と二人暮らしは聞いていたが、彼女も結婚、パリで父をそのコレクションの椅子ととも

に想う。椅子ブームで売れて出版社品切れ、ようやく探して、半年ぶりに本を買う。欲しい椅子ばかり。


5月27日(日) B

戦略経営に活かす「仮設検証のノウハウ・ドゥハウ」 野口吉昭・編 PHP研究所 1600円

経営コンサルティング会社HRインスティテュートを率いる著者が提唱する、仮設検証のサイクル。変化

感じ、仮設を設定、情報の収集・分析、そして仮設の実行・修正。経営とは日々の、この繰り返しだ

いう。それを全ての社員が実践できるようコーチすることだとか。いやあ大変なことだ、経営トップは。


5月26日(土) A

「日本の木造住宅の100年」 坂本 功・監修 (社)日本木造住宅産業協会

上記、社団法人が東大大学院坂本研究室に委託した調査の報告書。明治以降の住宅を構造、構法、

取り、設備、産業の面から詳細にみていく。建築史の分野からは意外と抜け落ちていて新鮮。今後

は、それら研究の「元本」になりそう。住宅の面からみても、この百年の変化の激しさを実感した次第。


5月25日(金) C

遊歩vol.9 水のまち おどりのまち「郡上八幡」 編集工房あゆみ 1000円

30年ほど前、渥美 清のTVドラマ「こんな男でよかったら」でこの町を知り、2度訪問。橋からの飛び

みはしなかったが吉田川で泳ぎ、徹夜おどりも経験。遊歩シリーズは本来、大和案内だが、地元が売

り込んだらしくメチャ詳しい。下駄を鳴らす踊りの所作が多いから、下駄持参くらい書いてほしいところ。


5月24日(木) C

ダマされないための「学生の部屋探しハンドブック」 朝永 彰 太田出版 1380円

たしかに東京のアパート探しは苦労する。いままで3回やったが、必ずしも満足できるモノではない。

まあ家賃が高ければ、それだけ良い物件なだけ、いくら出せるかということだ。著者は大学生協のア

パート担当で内容は詳しいが、とりたててナルホドと思わせることなし。この程度のことはやっている。


5月23日(水) B

「虹の解体」 リチャード・ドーキンス 早川書房 2200円

グールドとの進化論の論争で有名な、イギリスの生物学者。熱烈なファンの期待に答えて、科学にお

る「想像力」を詩にたとえ、脳、ゲノム、認知心理、物理、宇宙論まで縦横無尽に斬りまくる。書名も

キーツの引用で格調高く、そしてイメージ豊か。しかし理解できたのは6割ほど。いささか残念でした。


5月22日(火) B

お客がお客を連れてくる実践プログラム「口コミ伝染病」 神田昌典 フォレスト出版 1500円

本人と派遣社員1人で1億円を売り上げるというコンサルタントの「口コミ宣伝論」である。新鮮な思考

口コミの伝わるメカニズムを説明、またその実際を紹介する。しかし、これをヒントにすぐ実践でき

ばセンスのある人で、そうじゃない人はやはり、このコンサルタント会社の門をくぐる必要がありそうだ。


5月21日(月) C

新編「石原慎太郎5人の参謀」 上杉 隆 小学館 1400円

NYタイムズ東京支社の記者による5人の参謀というよりも石原慎太郎そのもの論。それによれば26

前の都知事決戦で敗れて以来の美濃部コンプレックスが彼の現在の姿をかたちづくっているとか。

の夜、新宿東口は美濃部、石原両候補の最後の演説に集まった群衆で動けなかったことを思い出

す。それからほどなくして、東京での生活をたたんだ。…おっとガラにもなく、感傷的になってしまった。


5月20日(日) C

「価格の見える家づくり」 こうすればいい家が安く建つ 山中省吾 (株)コスモ・リバティ社 1500円

オープンシステムつまり工務店を使わず、設計者が工事の面倒をみて直接、施主が建設する方法を

提唱。工務店に支払う諸経費、2割が安くなるという。そのとおりさ。しかし量の拡大に加え、設計能力

の衰え、工事管理能力のある社員の確保の難しさ、などの問題、そうやって易きに流れ、結局は工務

店と同じ形態に,なってしまう。それへの歯止めが書かれていない以上、この運動には賛同できない。


5月19日(土) C

「ここまできて それなりに わかったこと」 五味太郎 講談社 1200円

150項目どうでもいいことを、どうでもいいように描いている絵本。このひとの絵はわるくはないし大人

絵本なんだから、わずか15分で読み終わったからといって怒っちゃいけませぬ。読書日記のネタが

労せずして増えただけでもいいじゃないの。だけど逆をいうと感想もなにも、書くことが何もなくってさ。


5月18日(金) B

母と子でみる「道具としてのからだ」 須藤 功 草の根出版会 2200円

「愛と平和の図書館」シリーズ第14弾。出版の意図は別として、民俗学写真家と自称するように、昭

和40年から50年にかけての日本の農村の、むしろ貴重な写真集というべきもの。前にも感じたこと

だが、都会でイキがっていた、あの時代が、写真でみると、こんなにも古く、昔のように思えるとは…。


5月17日(木) D

「乗っ取られる大国・日本」 浜田和幸 祥伝社 1600円

前作「たかられる日本」は読んでないが、おそらく同じ内容なのだろう。「お人好し日本」がアメリカと中

、いいように、たかられ吸い上げられるという被害妄想。さも、もっともらしい裏読みも飲屋での

題には打ってつけか。たかられてもいいじゃないの、さらにその上を行けばいいんじゃないだろうか。


5月16日(水) C

[THE MINI 絶版車ミニの選び方&つきあい方」 丸山修二 山海堂 1600円

ミニ専門ショップ、ガレージアウトデルタのオーナーがミニについて熱く語る。ちょうど、ブレーキの様子

おかしくなって修理工場へ入れてきたので、思わず手にとってしまった。41年前からの名車「ミニ」

ついに生産終了。いかに手をかけなきゃいけないかを説明。小さいくせにエネルギーを使わされるぜ。


5月15日(火) B

「新まちづくりハンドブック」 園 利宗 連合出版 1800円

全国の中心商店街が、軒並み空洞化で四苦八苦。それへのコンサルタントの処方箋だが、講演として

はいいんだろうけど、文章としてみるとわかりにくい。方向としては、1つには都市型観光など交流人口

のリピーターを増やすこと、もう1つは高齢者対象の、福祉型シルバービジネスの展開だと力説する。


5月14日(月) D

図解雑学「流通」有坂誠人 ナツメ社 1300円

元代々木ゼミナール講師の書き下ろし。しかし、ちょっとレベルが低くはないか。総花的なら、やむをえ

ないのか。それと、この図解シリーズ全般にいえることだが、見開きで片方に文章、その右側1ページ

が絵というスタイルをとっている。それによって理解が進むとは思えない。むりやり図にしている感じ。


5月13日(日) B

「進むべき道」 堺屋太一・浜田宏一 PHP研究所 1600円

「日本は楽しくなれる」と副題、前経企庁長官とエール大学教授の対論。バブルから日米逆転10

の総括と今後の展望。660兆の財政赤字も、1400兆の個人金融資産があれば、どということは

ない。規制緩和など構造改革をすすめ、安心して金を使えば、デフレから脱出できるという楽観論だ。


5月12日(土) B

花火見物ハンディガイド「ドン!と花火だ」 武藤輝彦・著 小野里公成・写真 三空出版 1000円

このあいだの「日本の花火のあゆみ」と同じ著者が、花火のすべてを素人にもわかりやすく解説。しか

も文庫本サイズで、花火見物にポケットに入れての必需品と自負。愛宕神社は、昔は昼花火が有名、

小学校4年の時、打ち上げられた袋物を追っていてスクーターにはねられ、右足を骨折した思い出も。


5月11日(金) C

「夢占いキーワード事典」 マリィ・プリマヴェラ 永岡書店 1000円

あなたの過去・現在・未来を知るのだそうだ。夢の中にでてきたことから、そのメッセージを読み解くの

だから延々と50音順に言葉が並んでいる。問題は、そのメッセージをどう解釈するかだ。基本的

にはその夢の印象で吉凶を見るが、ときに逆夢の場合がある。その判断には経験を重ねるしかない。


5月10日(木) C

「だましだまされ生きるのさ」 岡崎大五 角川書店 1400円

沈没していたバンコックで金欠、職探し、怪しい法律事務所に勤め、だまされ日本へ脱出するまで。

行者でもなく、ビジネスの表舞台でもなく、どっちかといえば裏社会での出来事を描く、スピード感ある

章。小説、それともノンフィクションか?アジアのサーファー無宿を題材の前作と同じ印象を感じた。


5月9日(水) C

「パソコンが僕の生き方を変えた」 52歳からの挑戦 荒川じんぺい 岩波書店 1600円

八ヶ岳山麓で遊びながら仕事をする装幀家のホームページを立ちあげるまで。当然、本職にもパソコ

ン使用。しかし、ちょっと大げさではないかな。まったくの素人がパソコンを始めるのは、なかなか難し

い。いまのところ、あまりにも不完全な機械。どんなことでも聞けて教えてくれる助っ人が欲しいところ。


5月8日(火) C

「大切なことはみんな芸能界が教えてくれる」 森口 朗 扶桑社 1143円

都庁から小学校勤務という異色の経歴だが、辛口というか1960年生まれとしては右寄り。芸能界の

ネタをもとに社会論、生き方論を展開す。中間の2/3を占める若者との空想座談会はまったくもって、

企画倒れ。その他については共感できる部分も多いのだが、自慢めいた言動にシラけるところもある。


5月7日(月) C

「自衛隊に誇りを」 志方俊之 小学館文庫 476円

銀座に装甲車を入れた元陸将の「国防軍」改革案とか。現帝京大教授の自衛隊の現状と、その将来

方向論。あくまでも軍隊として位置づけ、「国民全体が誇りに思う自衛隊を」と理想をかかげる。熱意

は伝わる。しかし失礼ながら、もう少しうまい文章をかいてほしい。自衛隊は現状でいいんじゃないの。


5月6日(日) C

「『リスク』の教科書」 アーリン・アールバック 花風社 1500円

リスクとは何か?「結果のわからない新しいこころみ」。毎日を生きていくなかで、つねにポジティブ

リスクに挑戦し、より自分の可能性を高めようという話ではある。中間の若者の20の実例はタイクツ。

リスク日記をつけることを推奨。つまり目的と手段を混同しないよう、いつもチェックしておけということ。


5月5日(土) C

ラッコブックス「ジョージ・ブッシュの華麗なユーウツ」 名越健郎 新潮社 1000円

史上最軽量のアメリカ大統領の愛すべき「笑える人柄」を、これでもかとばかり書き連ねる、時事通信

の前アメリカ支局長。最後のほうで下り坂のアメリカ経済のなかでの今後の予想もしてみせるが、あと

がきでも書いているように、いささか悲観的な雰囲気。さて4年後どうなるか。ゴアの目はないそうだ。


5月4日(金) B

「公共事業をどう変えるか」 保母武彦 岩波書店 1600円

宍道湖中海干拓事業の、中止運動会長を務めた島根大学教授が、公共事業依存体質からの脱却を

提言。サスティナブルな社会を実現するには、公共事業の替わりに、福祉事業を中心にすべきだと力

説。ただし問題は、それが現在の「デフレ心理」を解消させ、日本経済を再生させることができるかだ。


5月3日(木) C

「頭には、この刺激がズバリ効く!」 ウィン・ウェンガー 三笠書房 1200円

3週間で「脳力」が40%以上も伸びる!ほんとか?まず炭酸ガスで「脳幹」を鍛え、ついで「延髄」を水

中運動で、視覚など感覚の運動で「橋脳」を、さらに平衡感覚運動から「中脳」を活性化する。最後に

時間感覚をとぎすまし「大脳皮質」の仕上げをする。しかし、これをまともに実行にうつす時間がない。


5月2日(水) C

「日本の花火のあゆみ」 武藤輝彦 リーブル 2000円

東大の美学出というから哲学的かというと、そうでもない。体裁といい構成といい、郷土出版の私家版

いった雰囲気。(社)日本煙火協会専務理事を永く勤め、さらに日本煙火芸術協会事務局長を続け

界のドンが書きつらねる花火の話。飯田市から車で30分の清内路村の自作仕掛け花火も登場。


5月1日(火) D

「個性的な家をハウスメーカーで建てる!」 井形慶子 ミスター・パートナー 1500円

情報誌編集長が英国コテージ風な家をつくる7ヶ月の体験記。根強い人気のカントリー調だが、はっき

り言って趣味はよくないし、支離滅裂のデザイン。コーディネーターとはうまくいかなかった様子。自慢

気な、施主としては避けたいタイプだ。だがこういう人も相手にしないと仕事はなくなる。困ったことだ。



4月30日(月) C

「俺たち『ひきこもり』なのかな?みんな、どうなん?」 川口漕人 ビイング・ネット・プレス 1200円

ネットでの呼びかけとインタビュー。それぞれ、さまざまなスタイルで「ひきこもり」をしている様子。要は

経済的に独立しているかどうかだ。中原中也は三十まで仕送りを受けていたとか。だから俺も、では

る。あとがきの「2ちゃんねる」への書き込みもわからないこともない。しかし当方は何も言えないのだ。


4月29日(日) A

「20世紀の美術家500人」 美術出版社 2200円

セルリアンブルーの表紙に細かく白抜きで500人の名前を刻む。1ページに1作品と的確な解説。A

からZまで時代、地域に関係なくアーティストが並ぶ。まさに社会、政治を反映する芸術、モダンから

アートへ「戦争の世紀」という20世紀の始まりから終わりまで、その背景を想いおこす重量感。


4月28日(土) C

「拳銃王」全47モデル射撃マニュアル 小峯隆生 小学館文庫 638円

3月22日「拳銃王U」の前作文庫版。1999年と古いけど、好きなもんで許してチョ。このごろは拳銃

鋼鉄製より、プラスチックの外装が多くなってきた。カメラと同様、こういうものは、金属製でなきゃ。

その点パートUよりも古い拳銃がとりあげられ、好みにはあう。しかし拳銃射撃はむずかしいらしい。


4月27日(金) C

「都の西北 貧乏荘物語」あのころのおれたち 阿部牧郎 毎日新聞社 1800円

昭和20年代後半、東京は大久保の安アパートでの、野坂昭如を軸とする自伝的青春記。けっして金

なかったが夢はあった(かな?)時代。たしかにこれに近いことはあったなあ。懐かしくなって借りて

きたが、エピローグの六十なかば過ぎの仲間たちとの再会には、身につまされる思いがしてしまった。


4月26日(木) C

「古代文明はなぜ滅んだか」 金子史朗 中央公論新社 1600円

ジオマイソロジーという学問「神話地理学」とでもいうのか。古代神話を実際の地理、歴史に対照させ

試み。古代文明滅亡は、旱魃とそれにともなう難民の大移動による社会システムの崩壊に起因す

るという。しかし言葉が難しいでもなく、間も十分とってあるのに、頭に入りにくい文章はなぜなのか。


4月25日(水) C

ショトル・トラベル「日本の世界遺産」 塙 ちと 小学館 1600円

日本での「世界遺産」への旅だ。白神山地、日光の社寺、白川郷・五箇山の合掌造り集落、古都京

文化財、法隆寺地域の仏教建造物、古都奈良の文化財、姫路城、厳島神社、原爆ドーム、屋

久島、琉球王国のグスクおよび関連遺産群だそうだ。春の奈良は大学の修学旅行。よかったなあ。


4月24日(火) C

「里山図鑑」 おくやまひさし ポプラ社 1680円

そのまんまなんだけど、詩情あふれる書名。友遊塾を主宰する、おくやま先生の里山楽しみ術とある。

春、夏、秋、冬それぞれの季節での山野草、昆虫、鳥類の図鑑、これ一冊で一年中、間にあうわけ。

これを持って、野遊びできる余裕がほしい。ただ昆虫が苦手な身にとってはいささか辛いところもある。


4月23日(月) C

「徳川埋蔵金検証事典」 川口素生 新人物往来社 2500円

在野の歴史研究家、徳川幕府をはじめとする埋蔵金について、資料を検証しその真実をさぐる試み。

結果としては、風聞、伝説の類をすべて否定するわけだが、いつ誰それが掘ったという事実も列挙し

なかなか面白い。数年前テレビでも話題になったが、何年かすると、また誰かが騒ぎ出す永遠の夢。


4月22日(日) C

ラーメン偉人伝「湯気のむこうの伝説」 垣東充生 企画・大村明彦 新宿書店 1800円

ラーメンブームである。ここにでてくる主人は、いずれもテレビで知っている顔。そもそもラーメン好きの

ホームページでのコラムを主体にしたもの。HPの運営者が企画として名を連ねている。それぞれの主

人の半生記とラーメンへのこだわりを丁寧に取材。マスコミでのつくられかたとは違うと自負している。


4月21日(土) C

「林檎の礼拝堂」 田窪恭治 集英社 1800円

ノルマンディーの片田舎、廃虚だった16世紀の礼拝堂を、現代アーティストが家族5人で移住再生

村野藤吾賞をうけるまでの14年間の話。わかるけど、なにかスッキリしない。この中で礼拝している

人の写真が、1枚としてないこと。使われていないのだ。バブルの後半にはじめた3億円のお遊び。


4月20日(金) C

「ドン・キホーテのステップ 6」 鴻上尚史 扶桑社 1333円

「週間SPA!」の人気エッセイの第6集。よく続くもんじゃないか。演劇プロデューサー鴻上の日常と同

進行する、肩のこらない日記みたいなもんだから、気楽に読めていいわけだ。まあそれだけだけど。

どうも、このごろ軽い本ばかり読んでるな。反省。毎日の読書日記に追われて、ついつい楽しちゃう。


4月19日(木) D

「宮本武蔵事典」 加来耕三 東京堂出版 2400円

「…だろうか」という疑問体を多用する文はやめていただきたい。だいたいが武蔵に関する資料自体

少ないので、出てくるのも3分の2くらい。大阪の歴史作家が書いた、武蔵ほかの剣聖・剣豪について

の随想であって、とても武蔵の事典とはいえないぞ。しかし装丁はやたら立派、お年寄りが読む本か。


4月18日(水) C

「不動産借金王裏ファイル」 小林宣隆 情報センター出版局 1700円

借金100億の不動産屋。不良債権を顕在化できなくて、倒産もさせない銀行とノンバンク。煮ても

もしてくれと居直る、バブル紳士の半生記だ。良く書けているから、ゴーストライターがいるようだ。

ブルの頃をしたり顔で解説する人も多いが、やらなきゃ生きていけなかったのも事実。 待望論もある。


4月17日(火) C

マーブルブックス1「ハッピー・ペインティング」 発行マーブルトロン 1300円

なんとも正体不明な本だ。無名の若いイラストレーター8人の作品を紹介する、78ページA5変型の

体裁。どれもがヘタウマの範疇、だからこそのある種の個性はある。しかしコワイ世界だ。たまたま

売れて好い気になっていると消費つくされポイ。しかし横尾忠則のような例もあるからやってみるか。


4月16日(月) C

「『やめたいモノ』をやめる本」 シンプル生活研究会 大和書房 1400円

デフレの世の中である。やめればいいの。クレジットカード、テレビを見ること、自家用車、タバコ、保険

宅配新聞、入場料、外食、国民年金、NHK、携帯電話、キレイ好き、高い買い物、持ち家、中元・歳暮

ギャンブル、会社、結婚まで。だから、ますます不景気に。無料遊園地の項目に飯田動物園を発見。


4月15日(日) C

哈日杏子の「ニッポン中毒」 本名・陳桂杏 小学館 1200円

日本が好きで好きでたまらないという「哈日(ハーリー)族」のカリスマ、ハーリー杏子。14才で日本に

憧れ、売れない漫画家だったが日本に関するエッセーなどを発表するうち人気者に。ついに日本での

刊行となった。来日でのあちこちの報告だが、台湾の人がどう日本を味わっているかがわかり新鮮だ。


4月14日(土) B

「建築探偵、本を伐る」 藤森照信 晶文社 2600円

書名はいただけないが中身は良い。週刊誌や新聞の書評をまとめたものだが、本の選択、好みがピタ

あっている。しかも書かれていることに共感を覚えるし、高度な内容もチラホラ。それに書評だから

適当な長さで、ついつい読みつづけてしまうのだ。ここにでている本をみつければ、即、手にとりそう。


4月13日(金) C

「モダンガール論」 斎藤美奈子 マガジンハウス 1600円

女の子には出世の道が二つある、のだそうだ。社長になるか、社長夫人になるか。面白そうな書名も

身は女性史百年である。社会情勢つまりは経済状況のなかでの、女性の社会参加歴史のけっこう

詳しい報告ではあるが、この現在の状況にまで言及するも、前回の歯切れの良さはついになかった。


4月12日(木) C

「英語は絶対、勉強するな!」 チョン・チョンヨン サンマーク出版 1300円

韓国でもシャベる英語はやっぱり苦手。この先生の方法で半年から1年でペラペラに。全部で段階

テープをひたすら聞く、英英辞典を使う、ビデオを字幕なしで見るなど。英語を学ぶ間は母国語の教材

使わず、英語で考える習慣つけること。それと6日やって1日休むことが重要だとか。もっともらしい。


4月11日(水) C

「愛されて、許されて」 鈴木啓之 雲韻出版 1500円

話題のイレズミの牧師の半生記である。たしかに面白いので昼休みを大きくくいこんでしまった。しかし

ちょっとカッコ付け屋すぎる“ズルッ君”である。話もうますぎるところもある。でも信仰の強さってのは、

ほんとにそうなんだろうなあ。そういったものに、とことん打ち込んでいけるところは、羨ましいところだ。


4月10日(火) B

「世界の知性が語る21世紀」 S.グリフィスス編 岩波書店 2600円

21世紀にはなにがおきているのか?30人の思想家へのインタビューとそれを補足する本人の独自の

見解。英タイムズ社の企画だけに大陸に偏る傾向があり、はじめて知る名前も。それに専門も革新が

著しいものが多く、科学の進歩と倫理を考えさせる。こういう本は読むというより手元に置いていたい。


4月9日(月) C

「言語が生まれるとき・死ぬとき」 町田 健 大修館書店 1500円

言語学の初歩的な教科書を読んだ感じ。言語がどのように誕生して、発達して、さらにどう変化し

いくか。場合によってはその死、あるいは分化する。ことによっては、二つの言語が接触し新しく言語

生まれる過程も説明する。しかし、それがどうしたといわれると、答えに窮する。勉強なんだからね。


4月8日(日) B

「迷いの体」 ボディイメージの揺らぎと生きる 石井政之 三輪書房 1500円

よく五体満足であればというが、そうでない人はどうする?という本である。著者自身、顔の右半分は

きな赤いアザにおおわれている。そういった身障者ではなく、普通の身体ではない人たちの生き方

のルポルタージュ。そこには明快な答えはまだない。ボディイメージの何たるかを求めて、取材は続く。


4月7日(土) D

人気急上昇中!「福祉住環境コーディネーターになる本」 町田ひろ子 大和出版 1400円

すでに全国に9校展開しているインテリア専門学校の校長。前にも「インテリアコーディネーターに

本」を手にしたことがあったが、内容は現実感のない話で、要は「私の学校へ入りなさい」というところ。

福祉住環境コーディネーターという資格の元締め東京商工会議所にはカラーコーディネーターもある。


4月6日(金) C

いでまゆみの「テレ美少年講座」 いでまゆみ ダイヤモンド社 1300円

「美少年は地球を救う」んだそうだ。黒木瞳と同年という漫画家がテレビ上の美少年について、あれこ

のたまう。雑誌に連載されたものらしいが、描かれているイラストは、いわゆる女性マンガといわれる

もの。文章は、名詞で止める超スピード体で小気味よし。しかし誰が読むのかよくわからないところも。


4月5日(木) C

「暮らしのなかの死に至る毒物・毒虫60」 著・監 唐木英明 講談社 1300円

おそろしげな書名である。身の廻りの毒物として、毒ガス毒薬農薬などの薬品類、細菌とウィルス、寄

虫やカビ類、公害物質、くすりや酒あるいは洗剤漂白剤などの日用品、昆虫や爬虫類などの生物、

それから常習性のある物質までオンパレード。なんとまあ世間は危険に満ち満ちているのでしょうか。


4月4日(水) D

「男と女とのことは何があっても不思議はない」 林 真理子 PHP研究所 1300円

出版社がいけないのか、作家がだらしないのか、タチの悪い本だ。弟子か取り巻きが、著者の106

の著作のなかから、適当なフレーズを選び出し、テーマにそって並びあげる。全編が男と女の話だから

こういったと思えば、つぎには正反対のこともある。いずれにしても大都会で生きるのは大変だわさ。


4月3日(火) C

「カフェの話」 アスペクト編 (株)アスペクト 2000円

カフェと喫茶店はどこがちがうんじゃ?つまりスノッブ達がが爪をむき出しあう空間ですな。音楽はどう

ボサノバが多いとか。おう趣味はにているじゃないの。だから「絵本とイスのプチ・ミュゼ」で紅茶をだ

せば、そのままカフェじゃない?そうじゃない。徹底したサービスと居心地の良い空間を実現すること。


4月2日(月) C

タダで大学を卒業させる法」 吉本康永 三五館 1100円

高崎在住、団塊の世代の予備校講師。長男が3浪で信大医2年、長女1浪して茨大文2年、そして次

現役で東大文3の1年、3人への仕送り地獄奮戦記である。まったく身につまされる思い。いか

学資を工面するかのノウハウ。ここに書かれていることは、すでに実施。ただ本人たちの自覚の問題。


4月1日(日) B

「沈黙の団塊へ」 かわぐちかいじ (株)ワニブックス 1600円

双子の兄だとか。51年の半生記をかなり濃密に描く。家族像とともに社会とくに団塊の時代の分析、

さらに戦後日本の目指したフラットな社会が、実は新しい全体主義だった主張も。しかし、そこで

唐突に終わる。つまり書けなくなったのだ。自伝を書くには若すぎるのだ。10年後の後編を待ちたい。



3月31日(土) B

東京大学公開講座 「夢」 東京大学出版会 2800円

安田講堂での土曜日5回10人の教授、助教授による公開講議録。テーマは「夢」であり、不老不死、

睡眠と夢、アニマルセラピー、クローン動物、源氏物語の中の夢、弥生時代の土器と青銅器、バブル

経済、ウナギの回遊、環境問題、超伝導と各分野いろいろ。さすがに東京大学の底力を感じさせた。


3月30日(金) B

「あほらし屋の鐘がなる」 斎藤美奈子 朝日新聞社 1500円

少し古いが面白かったので。1956年生まれのライター、徹底的にオヤジを皮肉るもの、朝日での書

女性誌の性格論、と新聞雑誌への3つの連載をまとめたもの。なかで竹内久美子を、オヤぽいと揶

する。がそもそもこの本の面白さは、その男性的な思考と文体にこそあるのではないのか。「カーン」


3月29日(木) C

「在日外国人が創る新市場」 神雄英一 ダイヤモンド社 1500円

中身はほとんど、本名「元栄得」滞日20年の韓国人のベンチャー社長の現在、過去、未来。国際電話

用のプリペイドカードの開発で倍々ゲーム、一部上場も近いという鼻息。これまでに回も会社をつ

、また這い上がってきただけに、その人生哲学は今の日本人が失ってしまったものを思い出させる。


3月28日(水) D

「無産大衆神髄」 矢部史郎・山の手 緑 河出書房新社 1600円

お口にあわなくて、評価Dをつけるためだけに読んだ。宮台氏を毛嫌いし、正当的左翼を標榜するふた

りが「プロレタリアに生れるということは惨めだ」と騒ぐ。そりゃそうだが酒のはいった議論と同じでまっ

新しい地平線は見えてこない。若さとして許されるのだろうが、難解な言葉の繰りかえしに酔うだけ。


3月27日(火) C

大人のための「徹底!ロボット学」 北野宏明 PHP研究所 1500円

ソニーのロボット工学博士が、ロボットによるサッカー世界大会「ロボカップ」を中心に、ロボットの現在

と未来について熱く語る。さまざまな解決すべき問題があるようだが、とくに興味をそそるのはロボット

デザインとした1章。自律的に動くもののデザインは、まったく新しい方向を予感させるという点だ。


3月26日(月) B

読みこなし使いこなし 活用自在「倫理がわかる事典」 鷲田小彌太 日本実業出版社 1700円

北の地から発信しつづける札幌大の教授。ひさしぶりに借りてきた。本職の倫理学しかも事典と大きく

出た。環境、生命、宗教、教育、民主主義、エコロジー、勤勉、平和、情報社会、消費社会、ともすれば

価値判断に迷うことがらをわりと明快に解説してくれる。そばにいつも置いておくと、いいかもしれない。


3月25日(日) C

ブルーバックス B-1313 「呼吸の奥義」 永田 晟 講談社 800円

なぜ「吐く息」が大切なのか。呼吸の「奥義」というよりも、「呼吸の科学」のほうが適切なほど、人間の

呼吸の仕組みを説明する医学博士。呼吸と武道あるいは東洋の伝統スポーツの関係についても医学

的解説が主で、ちょっと怪しい呼吸法を期待した向きにとっては、なにか肩すかしをくったような感じだ。


3月24日(土) C

「新・匿名座談会」 本の雑誌編集部 本の雑誌社 1600円

2001人ランク付け「アイドル探偵団2001」は200位で挫折、読むのを放棄。それで、続いてこれだ。

本の雑誌に2年にわたって連載された、各種業界人の覆面座談会23本。東京の虚業に生きる人たち

本音。それぞれが不健康そのものだ。それが嫌で田舎にひっこんだけど、なつかしいところもある。


3月23日(金) C

「そうよアタシは不眠症の女」 結城真子 大和出版 1400円

OLあがりのライターの10年におよぶ不眠症体験。大量の薬も効かず、ついには神経科入院。ありあ

まる時間で、陸上、水泳、ゴルフ。音楽ではピアノ弾き語り、ジャズ、声楽。語学では英語、仏語、イタ

リア語まで。ついには心理学のカウンセラーにも。おそろしいほどの能力。10年後の消息を知りたい。


3月22日(木) C

「拳銃王U」 小峯隆生 グリーンアロー出版社 1800円

「コンバット・マガジン」連載続編、海外でさまざまな拳銃を撃ちまくった報告。そっちが好きな人以外は

なにがなにやらという感じだろう。やたら擬音のおおい文章のわりに、実弾を撃った気分にはならない。

一時、宅八郎と大ケンカし、ストーカーされ続けた著者だが、その後、宅チャンは一体どうなったのか。


3月21日(水) A

新世紀へのメッセージ「20世紀の良品」 株式会社良品計画 2000円

身体の解放、電気と石油、インスタント性、移動と伝達、快適と便利、趣味と遊び、伝統と現代。の8つ

キーワードから斯界のオピニオンリーダーに20世紀の良品をアンケート。計算されつくされた奇麗な

写真。モノ・マガジンにも似たような企画の特集号があったが、じっくりと考えさせる点ではこちらが上。


3月20日(火) C

別冊宝島real#008「『 I T 』の死角」 宝島社 952円

ネット社会の裏側で今何が起こっているのか?似たような本の氾濫。2月9日「個人情報流出のすべ

て」と内容的にはほぼ同じだが、政治について「ネットワーク型政治活動の可能性と限界」は、なかな

面白かった。政治活動というか、政党とネットワーク社会との関係性については今後も注目したい。


3月19日(月) D

「日本経済幻論」 しりあがり寿+日本総合研究所 PHP研究所 1400円

中身がうすいのも無理はない。「Voice」に連載した漫画に解説をくわえたものとか。まえがきでは痛烈

アイロニーに満ちた漫画と最新の日本経済、日本的経営論を組み合わせたきわめてユニークな内容

自賛する。とんでもない。あまりうまいとは思えない絵だし、この程度の解説なら皆わかっていること。


3月18日(日) B

寺子屋ブックス22「こんなスポーツ中継はいらない!」 青弓社編集部・編 青弓社 1600円

日本のプロスポーツが世界レベルに達しないのは何故か?無意識のうちに働きかけるサブリミナル・メ

ディア「スポーツ中継」が諸悪の根源。そんな姿勢から中継はどうあるべきか、野球、甲子園、サッカー

プロレス、箱根駅伝、テニス、ラグビー、F1それぞれのスポーツの奥底にも踏み込む辛口エッセイ集。


3月17日(土) C

「機長席への招待状」 徳田忠成 イカロス出版 1600円

航空自衛隊の戦闘機乗りで、その後、日本航空の機長を勤めた元パイロットが、さまざまな分野で活

躍したヒコーキ野郎の姿を、愛着をこめて描く。しかし思い入れが強すぎるのか、見てきたような書き

に読むほう、むしろシラケ気味となる。書名からの予感を裏切り、文章も構成も、いま一歩の印象だ。


3月16日(金) C

「新線鉄道計画徹底ガイド東日本編」 川島令三 山海堂 1900円

なんといったらいいか、よくわからない本。鉄道ジャーナリストが、計画中の新線について評価していく。

新幹線では、北海道、奥羽、羽越、東北新幹線の延伸など。それから各中核都市の、新鉄道計画

いて。最後は首都圏の新線、既線の延伸や新交通システムの実現性など、たんねんに検討している。


3月15日(木) C

寺子屋ブックス23 「オーディオ道入門」 青弓社編集部・編 青弓社 1600円

〈音楽〉を聴くのか〈音〉を聴くのか。はじめのうちはクラシックにおける録音技術ウンヌンで放り出しそう

なったが、ジャズ、ロックと進み、わかりやすくなってきた。さらに長岡鉄男論、オーディオ雑誌比較、

評論家の品定め、マニアの生態など。それにしても「オーディオ道」も、また深い迷い道のようである。


3月14日(水) B

「環境生態学序説」 松田裕之 共立出版 2800円

持続可能な漁業、生物多様性の保全、生態系管理、環境影響評価の科学についての大学、大学院の

教科書。いかに数理モデルをつくるかで、また確率と行列式だ。序説の名のとおり未知の部分を多くか

かえる生態学の現状。つぎには経済社会のなかでの環境生態学の考え方を早く提示してほしいもの。


3月13日(火) C

「日本語おもしろ雑学練習帳」 難読漢字篇 日本雑学能力協会 編著 新講社 1238円

前回の誤用篇につづいて、こんどは読みがむずかしい漢字の解説だ。初級、中級、上級とランクづけ。

ワープロ、パソコンの普及でわりと簡単に読みから漢字が出てくるようになり、難読漢字が一般化して

きたようだ。逆にそれを見せられた方は読めないという事態で困ったことに。しかし今更、勉強は勘弁。


3月12日(月) C

「こんな書店で本を買いたい」 池田良孝 日本経営協会総合研究所 1500円

だいぶんまえに酷評した沼田某氏が、知り合いのサイトで若い女性に大人気なのを知る。好みの

いとはいえ、なにか「空恐ろしい」もの感じた。年代の問題か、性差か。それはそれとして本日は

もと出版社に勤めていたライターの描く、現代書店事情。再販制度は、最後の砦になりうるのか。新

世紀に入って、さらに揺れ動く書店業界。図書館専門としては、あまり関係ないが、まあがんばって。


3月11日(日) A

道迷い遭難を防ぐ「最新読図術」 村越 真 山と渓谷社 1700円

期待してなかっただけに、時としてこういう本にぶちあたるのは、ことのほかうれしいものだ。道迷いに

いたらないためのナヴィゲーション技術を、32の遭難事例をもとに解説する。文章もうまいが、なんと

いう説得力、オリエンテーリング全日本で18才から15連覇した、静岡大の先生だというから当然か。


3月10日(土) C

「どうせ一度の人生だから楽観主義で行こう!」 ジグ・ジグラー 田中孝顕 訳 きこ書房 1600円

講演家という職業、またモティヴェーターという肩書きが、アメリカにはあるらしい。そういえば、ときどき

眼にする訳者の名前も、どちらかといえば同じような分類になるのか知らん。まあ言ってることは、しご

く常識的なことなのだが、これも実際に講演会で聞くと、全てが霊験あらたかに感じてしまうのだろう。


3月9日(金) C

「アジアのホテル ベストセレクション」 岸川惠俊 河出書房新社 1800円

近ごろこの手のムック本が良く出る。売れるってことか。アジアのリゾートとしてのヴィラ・スタイルもい

いが1900年初頭から30年ころにかけて建設された、コロニアル・スタイルのホテルや、アール・デコ

調のインテリアも捨てがたいものがある。まあいずれにしても、当分はそんなことに縁のない生活だ。


3月8日(木) C

「ネット&ケータイ人類白書」 多感階級の誕生 NTTアド編 NTT出版 1600円

消費者調査を分析し、情報生活者を9つに分類、さらに情報感度が高いクラスターを、多感階級と名づ

ける。群人、公人、操人、居間人、達人とわかったような、わからないような分類で、現代社会とこれか

らの情報社会の姿をさぐる。ってのはいいし、なんとか説明したいってのもわかるけど、消化不良の感。


3月7日(水) C

「日本語おもしろ雑学練習帳」 誤用篇 日本雑学能力協会 編著 新講社 1238円

「クイズ赤恥青恥」や「タケシの平成教育委員会」を見ているような、国語雑学問題がつづく。軽いノリ

いつでもどこでも、というわけだ。まあひまつぶしにと思ったものの1時間ともたなかったのは残念。


3月6日(火) B

「涙の取材手帳」 鬼沢慶一 幻冬社 1500円

明日からの3泊4日の東京行きをまえに、なにもする気もおこらず読みはじめてしまった。硬派の鬼さん

である。新聞記者あがりときて文章はうまいし、間のとりかたもいいし、誰でも知っているひとの話で読

やすい。今年はもう六十九にもなるのか。芸能レポーターという虚業をどう生きるかの回答でもある。


3月5日(月) C

「写真集を読む2」 ベスト338完全ガイド リテレール編集部・編 メタローグ 2200円

写真は誰でも撮れる。が写真集をつくることが写真家なのだ。このコンテンポラリーな創作手段は、ま

よくわからない存在でもある。難解な文章がすくなく助かった。やはり写真集専門の、図書館がほし

思う。なかに「森山大道は60年代のヒロミックスだ」という一節が。おいおい、それは逆でしょうが。


3月4日(日) C

別冊歴史読本「日本の苗字ベスト10000」 村山忠重 新人物往来社 1500円

ただの名前の羅列を見てどうする?と思われそうだが、これが意外とおもしろい。苗字をみて知ってる

顔が浮かび、自分のと比べ、多いか少ないか。なるほどそうか、となるのだ。1位の佐藤さんから

10000位の広上さんまで、電話帳から集計したためか、読み方の不明を苗字本として許せるのか?


3月3日(土) C

「と学会年間2001」 と学会著 太田出版 1300円

すでに「トンデモ本」は市民権をえたが、そんなトンデモない物件を俎上にたのしむ「と学会」の例会で

発表をまとめたもので、27編の会員のレポートと、第9回のトンデモ本大賞の発表で構成。雑多す

る印象は、やむをえないところか。やはり個人の一定した見解でまとめたものの方が読みやすい。


3月2日(金) D

「ヒロスエが藤原紀香に勝てなかった理由」 櫻井秀勲 東洋経済新報社 1400円

アニムス型女性が社会を変えるのだそうだ。つまり、ひとことでいえば、男性的な女性が今後もふえる

うという話。女性週間誌の編集長を歴任したという短大講師。またいつものように、わかったような

説、奇説のオンナ論を展開する。こんなの書いて、講演会でしゃべって、メシがくえればいいよなあ。


3月1日(木) B

「いろは悪態辞典」 多田阿呆 文芸社 1500円

表題どおり悪態語をあつめた随想集。著者は同年、昭和20年生まれの理学博士、京都大学情報工

の教授とか。軽妙洒脱、抱腹絶倒の悪態語700とある。たしかに日本の古典への造詣の深さは

めるが、読み進むほどにそのオヤジ好みのネタが気になってくる。ペンネームもそんな雰囲気だ。



2月28日(水) C

「銀座の女、銀座の客」 週間新潮 『CLUB』通信部発 岩本 隼・國安 輪 新潮社 1500円

艶種(ツヤダネ)記者という人種。昭和51年から20年間、主として銀座のクラブの話題を追い求めた二

人の回顧録。水商売に向く人と、そうじゃない人がいる。後者にとっては、まるで縁のないことだし興味

ない話だ。お二人は、やはり根っから好きだったんだろう。そうじゃなくては、こんなに続かないはず。


2月27日(火) C

「テレビ芸能職人」 香取俊介・箱石桂子 朝日出版社 1500円

テレビの裏方として生きる職人たち。照明・記録・殺陣・メイク・スタント・料理・音楽・考証・特撮・写譜

カメラ・小道具・効果・衣装・背景とほぼ網羅。それぞれのプロ、ベテランへのインタビューをまとめる。

職業上の苦労話というよりも、いままでの生き方のほうに、重点がおかれてしまうのも無理はないか。


2月26日(月) C

「文明の主役」 エネルギーと人間の物語 森本哲郎 新潮社 1500円

いつものとおり遺跡のまえに立ち、文明を想いつつ、人類の行く末を考える森本さんだが、今回はこと

のほか軽い印象だ。火、風、川、家畜の力、そして石炭、石油、蒸気、電気まで、さらに今後の主役の

ネルギーたる地熱、風力、波力、原子力へと想いはつづく。「新潮45」の連載で、文明史を顧みる。


2月25日(日) A

「あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント」 鴻上尚史 講談社 1400円

他人とのコミュニケーションにのぞみ、いかに伝えるかについて、演出家・鴻上さんが、日頃考えてい

ことを開陳する。それは感情であり、声そのものであり、体の内と外、さらに言葉のステージ、などなど。

いいこと言ってると思うけど、文章で伝えるには難しすぎる問題。なんとなくわかるがストンとは来ない。


2月24日(土) C

「開運!えんぎ読本」 神崎宣武 編著 チクマ秀版社 1300円

自己癒しの文化再発見との副題に、魔除け・厄払い、招福・安全祈願、目的成就、風水・家相のさまざ

をフォークロア・ライターが語る。「まじない」や「えんぎかつぎ」は「自己癒し」であり平和の象徴とか。

どうも最近の神崎さんの本には重みを感じない。ルポライター的に追いつめていく「姿勢」が懐かしい。


2月23日(金) C

別冊宝島「男を上げる!正しい酒の飲み方」 943円

すごい霧の朝だったワ。三月下旬の陽気とか。また寒い日も来ようが、陽は確実に濃くなっている。で

また「正しい…」だ。居酒屋、立ち飲み屋、蕎麦屋、バー、ワインバー、ビアパブ、それぞれの場所での

粋でカッコいい酒の飲み方のレクチャー。ようするに、あらゆるところに気を使え、という現代版作法帳。


2月22日(木) C

「燃料電池とは何か」 清水和夫・平田 賢 NHKブックス 970円

電気分解の逆で水素と酸素から電気をつくる、理想的なエネルギー源の燃料電池だが、水素の供給

法に問題があるらしい。先日は、ガソリン改質で世界の自動車メーカーが提携するとの新聞報道も。

インフラまで考えると 2、30年はかかりそう。本としてはちょっと物足りなさを感じたが、仕方ないのか。


2月21日(水) C

「happy style A to Z」 ハッピーな毎日のためのスタイル・ブック 黒田美津子 ギャップ出版 1680円

ハッピーな生活、つまりデザインのある生活ですな。B6版111頁にしては高い本だ。ソファでパラパラ

するには適切。感心するのは、けっこう幅の広いこと。ミース、コル、イームズ、ヤコブセン、ウェグナー

から、現在のスタルクやモリソンあるいは、ダッチ・デザインまで、凝りかたまっていないところがいい。


2月20日(火) A

「からだことば」 立川昭二 早川書房 1700円

昭和2年生まれの北里大学名誉教授の名講義を受けた感じ。構成も16話プラス補講だから、ちょう

後期分。しかも挿し絵は和田誠という豪華版。古来からの「からだ」に関する言葉より、日本人、日本

を考察。身体の現実感の欠如が、「からだことば」を衰退させたと、ひ弱な現代社会に苦言を呈する。


2月19日(月) C

「クラシック・カメラで遊ぼう」 山崎敏憲 グリーンアロー出版社 1600円

チョートクさんの本にでてきた自作派のY氏というのが、この著者だったのか。まさに書名通り、蒐集で

はなく、写したり、改造するために、クラシック・カメラを手にする。とくにステレオ・カメラの自作に、こだ

わっている。ここに出てくる、4×4判の2眼レフも小学生のころ、欲しくてほしくてしょうがなかったもの。


2月18日(日) B

「とげぬき地蔵経済学」 竹内 宏 メディアファクトリー 1300円

購買意欲を刺激するシニアの心の掴み方、だそうだ。全国の商店街が全て青息吐息の中「おばあちゃ

の原宿」は健在。その秘密を今はなき長期信用銀行の調査役として一世を風靡した「路地裏の

学」の竹内先生が解説。御歳70、元気でよかった。講演向きの軽さはあいかわらず。そこがいいのだ。


2月17日(土) C

「東京1000円味のグランプリ」 山本益博・マーキー牧元 講談社 1300円

1000円台で、いかにウマイものを食うか、というのがこの本のテーマ。イタリアン、フレンチ、カフェ、

ド&ドッグ、洋食、すし、和食、韓国、中華、カレー、そば&うどん、ラーメン、アジアめん、酒亭、甘味

オール地図入り200店。このガイドブックを携え、さがす連中がいるわけだ。しっかり食べてクラはい。


2月16日(金) C

「ふろしき入門」包み方結び方 森田知都子 主婦と生活社 1400円

コピーライターにして「ふろしき研究会」代表。「現代生活に活かす、ふろしき」をテーマに、伝統の枠を

超え、新たな視点から、ふろしきの使い方を模索しているらしい。地球環境問題、ごみ減量対策からも

さまざまな物の包み方を提案している。なかなかオシャレな現代のふろしき、いかにオシャレに使うか。


2月15日(木) C

図解雑学「心理学入門」 久能 徹・松本桂樹 監修 ナツメ社 1300円

このシリーズの存在意義はなにか。いままでの自然科学系に加えて、人文科学や社会科学方面ま

シリーズがふえている。そんなに売れているのか。心理学自体は大学1年の教養課程で、選択して

だ。読み進むうちに、当時の望月衛教授の講義を思い出した。内容的にもほぼ同じような気がする。


2月14日(水) B

チョートクの「ボクのカメラたち」 田中長徳 グリーンアロー出版社 3619円

カメラ好きにとっては全1005頁5センチの厚さも苦にはならないが、長かったワ。2000台という名機

ガラクタのカメラとシネ・カメラを紹介。中には、小学生のころ、買ってもらったオモチャのようなカメラに

あきたらず、覗き込んだショーウィンドーの懐かしのカメラもある。そのころを思い出し、すこしシンミリ。


2月13日(火) B

「日本経済に起きている本当のこと」 糸瀬 茂 日本経済新聞社 1400円

テレビで辛口経済論を披露する、新進気鋭の宮城大学教授が、テレビ東京のインターネットニュースの

コラムをまとめたもの。本音をいう人だ。つまりは巨額な財政赤字をどうするという話。理屈はわかるが

けっきょく恐くて何もできず、ズルズルとインフレの道を歩むのだ。いままでもそうやって来たんだから。


2月12日(月) A

「21世紀に向けて異文化コミュニケーション」 プリブル・チャールズ ナカニシヤ出版 1800円

アメリカにおける異文化コミュニケーション学を、北陸大学外国語学部助教授が紹介。訳語が日本語と

わかりにくいものの、全体としては理解できる。自分さがしと平行した「他者」の発見「他者」との交

流、と腰巻きにある。いまや生活技術として、小学生から教えておいていいのではないかと思うほど。


2月11日(日) B

「殴られ屋」 晴留屋 明 古川書房 1300円

電気工事屋で1億5千万円の借金をつくり、殴られ屋をはじめた元ボクサー。新宿歌舞伎町で毎夜商

売をつづける姿は、マスコミにも何回もとりあげられた。生来の明るさ故に泣かせるところも何ヶ所も。

彼の家族に平和は来るのか、いつまでこの生活をつづけるのか、密かに応援したくなる本でもあった。


2月10日(土) C

「ミュージカル完全ガイド」 音楽の友社 1400円

前半分はミュージカル作品40の紹介。つづいてニューヨーク、ロンドンの観劇案内。エアライン、ホテル

食事、チケット入手方法など。さらに日本のミュージカル状況では劇団、スター名鑑、劇場案内とグルメ

情報と微に入り細に入る。最後にCD&映像紹介。たしかにパーフェクトを名乗るだけあってくわしいゼ。


2月9日(金) C

「個人情報流出のすべて」 三井 優 山下出版 1300円

おおげさなタイトルの割には内容は薄い。ネット社会でのなりすましや、クレジットカード犯罪の実態を

さらにデビットカードの安全性など。警察による個人情報監視システムの現状を不安視。それからアメ

リカ主導の世界的監視システム「エシュロン」の存在を報告。個人情報保護基本法に異議をとなえる。


2月8日(木) C

「大小暦を読み解く」 江戸の機智とユーモア 矢野憲一 大修館書店 1700円

太陽暦の採用された明治以前、太陰暦は月を30日と29日にわけ、それぞれ大と小の月としたとか。

暦は市販されず、趣味人が私的に判じ物として交換した年賀状のルーツだそうだ。第5章に「江戸と

れる」とあり、そのままに伊勢神宮の神官が、その解説を長々と楽しんでいる様子。熱意は伝わる。


2月7日(水) C

日本人の「仏教のしきたり」ものしり辞典 ひろさちや 大和出版 1760円

いざというとき困らないための仏事の「心」と「作法」なんだそうだ。なかなか明快に、日本仏教の「しき

たり」を、わかりやすく語る。最後に「仏教の深い智慧」と題して、仏教論を展開。それなりに説得的だ。

しかし、そんな人が 1億5千万もタンスに貯め込み、さらに空き巣にやられた、というのがオカシい話。


2月6日(火) C

香山リカの「生きる力をつける処方箋」 海竜社 1400円

「そのままの私」で生きていけばいい。そんな「こころの処方箋」を、各章のあたまに、それに既発表の

エッセイをつなげて体裁をつくろっている。「処方箋」が結構いいこと言ってるだけに、エッセイの軽さが

興醒めなのは否めない。根がまじめな人だからこそ、こういう本の作り方は、してほしくないと思うのだ。


2月5日(月) C

「不肖・宮嶋の一見必撮!」 宮嶋茂樹 文藝春秋 1286円

あの小菅の麻原某を撮影した、事件屋カメラマンの不肖シリーズ。何冊目になるか、わからんけど

あまり面白くなかった。週間文春の連載で文が短すぎるのだ。だから、あたかも著者と一緒

なって街へ、あるいは戦場へ飛び出していく臨場感が希薄になってしまった。つぎに期待したい。


2月4日(日) C

「中国ビジネスのウラのウラ」 橋本嘉文 PHP研究所 1300円

元日刊工業新聞北京支局長の「もう中国人には騙されない!」という副題に期待すれば、やたら数字を

使い、週刊誌のような報告だけ。この程度の話なら、産経の古森さんがすでに書いている。今後、

がどうなるのか、を知りたいのだ。自分の意見がほしいのだ。マスコミ特有の客観的無責任では困る。


2月3日(土) C

「韓国は日本を見習え」 イ・ドンフン 文藝春秋 1238円

ソウル大卒、コロラド大MBAの韓国エリート官僚が、アジア経済研究所での、3年間の日本生活の感

想を母国で出版したベストセラー。日本語版は自分で書いたという、優秀な人のわりには見方が一面

的で日本人としては面映ゆいところも。まあ「隣の芝生は青い」って言うから、あまり真に受けなくても。


2月2日(金) C

テレビ犯科帳「許せん !!」 吉川 潮 講談社 1400円

3年におよぶ日刊ゲンダイ連載コラム108編、プラス星評価。演芸評論家で小説家という著者が、小

味よい文章で小言幸兵衛的にテレビ局、番組、タレントを実名入りで一刀両断していく。同じ中年に

とって、家庭での孤独感と現代社会での不満を代弁するものとして、読まれていたものと推測したい。


2月1日(木) A

「マスコミ無責任文法」 イアン・アーシー 中央公論新社 1300円

日本の中学校でAETを勤めたのち、山口大学で研究生として留学したカナダ人が、マスコミ報道での

日本語に文句をつける。白日夢という形式を嫌いな人には、無視されそうだ。その無責任きわまりない

用法は、この単一民族国家のもつ無責任さ故なのか。後半は大学の新設学部の名称の不思議さを、

さらには自治体、企業の内容空疎な美辞麗句のキャッチフレーズを槍玉に日本語の抽象性にせまる。



1月31日(水) C

初級人間学講座2 基礎常識講義「ニッポン文化大革命」 ビートたけし 新潮社 1100円

いかにも口述筆記そのもの、という文章と、前作にもでてきた同じ内容の繰り返しが、しらける。朝日

聞をコテンパンにやっつけるのは痛快だが、もうそろそろかな、という感じもする。まあお得意の世相漫

談と思えば、もう2、3作くらいは許されるかもしれないが、このシリーズいつまで続けるつもりなのか?


1月30日(火) B

「東京ロンリーウォーカー」 松尾 潔 扶桑社 1143円

自称・東京通たちに贈る「真のトレンディ」ガイド。「週間SPA!」の3年の連載からの抜粋。今年32才

になる音楽プロデューサー、もう若くもなく、といってオヤジでもない微妙な年頃に、半分醒めつつトレ

ディスポットをたずねあるく。そんな、揺れる心情をも吐露する軽佻浮薄な文体も、悪くないなと思った。


1月29日(月) C

山寺宏一の「だから声優やめられない!」 主婦の友社 1800円

雑誌「声優グランプリ」の対談集。そうとは知らずに借りてきたが、返すのもシャクで読んでみた。いわゆ

ベテランという立場か、往年の大ベテランは大塚周夫、羽佐間道夫くらい。俳優との兼業が、多い

が、声優との掛け持ちをする人と、俳優一本のちがいはどこから生まれるのか、よくわからなかった。


1月28日(日) A

「脳の時計、ゲノムの時計」 ロバート・ポラック 中村桂子・友子 訳 早川書房 1800円

現役の生命科学者とその長女の訳が非常にいい。感覚、意識、記憶そして病気死について、最先端

の脳研究の解説ながら、文学的匂いを感じた。脳内時計による知覚のコンマ何秒かの遅れ、それが個

の資質を決定しているのか。そこに原題「THE MISSING MOMENT」の意味するところがありそうだ。


1月27日(土) C

この1冊で「東京の地理がわかる!」 正井泰夫・監修 三笠書房 1400円

積雪は56cm観測史上2番目とか。こんな日はウチでじっとしているに限る。本もしっかり読めるから。

「この1冊で」シリーズも日本の歴史、アメリカの歴史、世界の地理と4冊。地理からみた大都市、江戸

東京の歴史、成り立ち、ウラ話など。知っていて損はないと思うけど、それ以上のものではないようだ。


1月26日(金) D

「おいしい毎日」 大橋 歩 幻冬社 1500円

今でも忘れない。週間「平凡パンチ」の創刊は大学1年の時。その表紙絵で華々しくデビューした幸運

イラストレーターの食べ物に関するエッセー。どうでもいいことばかり。それでも途中、想像力の

がズレているだけだから、と思ったりしたが、再び読み出せば、やっぱり付き合いきれない感じ。どうも

これは月刊の女性誌がふえページを埋めるために、こういうモノがもてはやされる、というふうに解釈。


1月25日(木) B

「エコロジカル・マインド」 三嶋博之 NHKブックス 920円

「知性と環境をつなぐ心理学」というのが副題。米の心理学者ジェームズ・ギブソンが1960年から70

代に提唱した「生態心理学」の福井大学助教授による解説本。環境情報をどのように知覚システ

で認識し、行為につなげていくか、といった難しい話である。とくに用語がはじめてのものが多く、閉口。


1月24日(水) C

「日本の正しい調味料」 陸田幸枝 小学館 1500円

ショトル・ライブラリーだから雑誌「サライ」の連載もの。調味料に正しいもヘチマもあるかい。そこら

ジジイ趣味なのよ。醤油、塩、味噌、ソース、酢、みりん、砂糖、油など、日本古来の製法をまもって

くられる調味料だ。テレビ番組「どっちの料理ショー」にも出ていたものも。あんまりこだわるのもねえ。


1月23日(火) C

こんなに凄いのか!「韓国の徴兵制」 康煕奉(カン・ヒボン) スリーエーネットワーク 1500円

在日の韓国ものライターの徴兵制についてのルポだが、ちょっと底が浅い印象。インタビューの対象が

少なすぎる。兵役前の少年や、実際に入隊している人の話がぜひほしい。「日本は徴兵制がないから

が発展したんだ」といわれると、なんともいえない。貴重な立場だから、もっとがんばってほしいな。


1月22日(月) C

「教養論ノート」 浅羽通明 幻冬社 1400円

知への欲求なんてものがあるのか。読書はたんなる「ひきこもり」であり、幻影の城主を生産するもの

ではないか。など耳の痛い言葉がつづく。しかし、だからどうしたというのか。教養の何たるかを探って

の堂々巡りの思考が延々と流れ、最後はもう、ギブアップ寸前の意識も朦朧の状態。たすけてくれー。


1月21日(日) B

「回転スシ世界一周」 玉村豊男 TaKaRa酒文化研究所 世界文化社 1500円

「SUSHI」が世界中に普及しているらしい。とくにロンドン、パリを中心にするヨーロッパでの、回転スシの

流行。それから NYと LAのスシ事情を食通が考察する。もはや人肌にこだわらず、マシンはもとより

人も国籍自由、ワールドワイドな食べ物であるという。おもっている以上に地球は狭くなっているらしい。


1月20日(土) C

華麗な夢の世界「万華鏡」 照木公子・編 文化出版局 1800円

カレイドスコープである。そこには、いま流行の癒しの効果があるという。全国に3つも万華鏡の美術館

博物館があるという。内部の鏡も2枚、3枚、4枚から丸い鏡、角錐形のシステムなどのバリエーション

があって、しかも有名作家がいてインテリア・グッズにもなっているとか。ここにもこんな世界があった。


1月19日(金) C

大人のための「素敵な良品生活のすすめ」 石黒智子 PHP研究所 1100円

内容はどうということないので著者の生活像を想像してみる。イラストが自筆のものとすれば、デザ

インの実務にかかわった経験あり。どっかの美大出と推測。ダンナは建築家、大学生の男子ひ

の母親、50歳くらい。住宅のインテリアデザインをなりわいにしているのか。女性誌では売れっ子?


1月18日(木) C

「9坪の家」 sumire-aoi-hause 萩原 修 廣済堂出版 1400円

1950年に竣工した建築家、増沢洵の自邸。建坪9坪の一部2階建て、最小限住居の傑作といわれ

いる。リビングセンターOZONEの社員が、企画展でつくった、その骨格のレプリカを譲り受け、土地を

三鷹にさがして、ほぼ同じ形で復元する話。「如何に割り切るか」というのが、住宅設計における真理で

もある。それをとことんまで追求する最小限住宅は、建築家の憧れだ。しかし、夏の暑さは大丈夫か。


1月17日(水) A

「健康不安の社会学」 健康社会のパラドックス 上杉正幸 世界思想社 1900円

宇宙と同じように健康には果てがないそうだ。それを追求することは、最終的には自己排除につながり

「いじめ」やアイデンティティの問題にまで。本来、覚える快感というミクロな健康が、マクロな社会的健

圧力に歪められているとか。死をみつめて、「手後れの幸せ」を提唱する、香川大学教授は喫煙者。


1月16日(火)

「面接官の本音2002」 辻 太一朗 日経BP社 1400円

昨年印象に残った本の2002年版。前2/3は同じ、後ろに人気110社の昨年の面接質問内容がつく。

同様に次は2003年版を出す予定らしく就職体験談のアンケート募集をしている。いわゆる一流の企業

入ることの大変さを感ずると同時に、昨日読んだ辞める間際の心境を想像していささか複雑な気分。


1月15日(月) D

団塊世代の現在「嵐の群像」 森 哲志 河出書房新社 1800円

正確には昭和22年から24年生まれを団塊の世代というらしい。その前後をふくめたサラリーマン世代

の様子を描いた、朝日新聞東京版の「仕事の風景」を、中心にしたドキュメント。好評だったというが、面

白くない本だ。ひとの生活、生き方なんぞに興味はない。しかもリストラになるの、ならんの。ツマラン。


1月14日(日) A

「サイコ・タフネス」 不安をパワーに変える心理術 伊東 明・小林信也 TBSブリタニカ 1500円

「千葉すずは無意識的に五輪に行くのが恐かったのではないか」という鋭い指摘。心理学者とスポーツ

ライターが、いかにしてスポーツマンの「こころ」を鍛えるか、について書いた技術書。内容がむしろ豊富

すぎて、実用に困るケースがありそうに思える。武道では「心と身体は一体」という考えかたが印象的。


1月13日(土) C

「アジア包(パオ) 下巻」 遠藤ケイ 山と渓谷社 1700円

それで下巻だ。今回は、ネパールのヒマラヤト・トレッキングと、チベットのカイラス巡礼にラサのポタ

探索だ。50歳も半ばを越え、さすがのケイさんも悲鳴をあげながら、ヒマラヤやチベットの山道を昇

降りする。そのわりには、ビール漬けの毎日。ところどころの駄ジャレが寒いが、自筆イラストは秀逸。


1月12日(金) C

「おもい入れのお墓づくり」 吉田 剛 編著 言叢社 1143円

ニューデザインお墓読本。全優石(全国優良石材店の会)公募の「ニューデザインお墓コンテスト」の

入賞作を中心にユニークな墓が並ぶ。ひとのクルマをとやかく言うことができないように、ひとのお墓

にも何も言えない。ただその思い入れの強さに驚くばかりである。個人的には普通がいいと思うけど。


1月11日(木) C

「ローテクの最先端は実はハイテクよりずっとスゴイんです。」 赤池 学 (株)ウェッジ 1800円

なんて長い書名なんだ。コンピューターに取って代わられたと思われた手仕事が、実は最先端の精密

部品作製のためには欠かせないという話。高度な熟練職人としての生き方は、モノづくりの楽しさもさる

ことながら「いくつになっても現業で生きられるという確かな生活」を保証してくれるもの、でもあるのだ。


1月10日(水) C

「そばの細道」信州そば面白美味街道 宮下武久 川辺書林 1600円

信州伊那在住のそばに詳しい1967年生まれのライターの処女出版。妙にひっかかる文章はなぜか。

駒ヶ根の「まる富」も、飯田の千州庵(正しくは千秋庵)も登場。近頃のお高くとまったソバ屋には反対。

種もの、丼ものがあったっていいじゃないか。しかも値段だけは、高いのだ。たかがソバ屋ではないか。


1月9日(火) B

「超のび太症候群」 影山任佐 河出書房新社 1500円

多発する17歳の異常な犯罪を、犯罪精神医学の立場から解き明かして行く、東工大人間環境システ

ムの先生。宮台氏とちがって、現象面からの解説は明快である。書名よりも中身は学術的。大学院ゼ

ミの経験から「生活ソフト」つまり生活技術そのものを教えることを、ゼミ合宿などを通して実践中とか。


1月8日(月) B

図説「海賊大全」 デイヴィッド・コーディングリ 編 東洋書林 4500円

世界最古の職業のひとつ、海賊の全史である。500頁の大作。もちろん、マラッカ海峡の現代海賊に

ついても1章がある。大航海時代の国家のはざ間での跳梁や、今も名を残す派手な海賊たちの末路

などなど。ディズニーランドの「カリブの海賊」に代表される、ロマンチックなイメージは、今世紀初めの

ハワード・パイルやその弟子フランク・スノーヴァの、詩情豊かな絵によって増幅されたにちがいない。


1月7日(日) C

「登山者のための観天望気」 城所邦夫 山と渓谷社 950円

気象庁の元山岳部員が、天気俚諺(ことわざ)を収集、「山の天気をズバリ当てる」と副題に。前半は

本的な風と天候について、また雲の形と天候についての解説。後半では、北海道、東北、中部など

全国の山岳地方を地域ごとにとりあげ、ことわざと実際の天候とを関連させている。少々退屈だった。


1月6日(土) C

「パチンコ名機コレクション」 監修 鍬形和紀 編・著 岡部正人 グリーンアロー出版社 1524円

マニアのためのミニムック−グリーンアロー・グラフィティシリーズ52はパチンココレクター。わずか数

で玉を打ち終わるほどの、未熟者にとっては、思い入れはなにもない。残念ながら、その歴史にも、

機構にも、また盤面にも、美的な興味も湧いてこない。ただ「こんなん、ありますヱ」と聞いておくだけ。


1月5日(金) B

「スカをつかむな!情報家電」 藤井耕一郎 草思社 1400円

スピーディな文章で氾濫気味の情報機器の現在、将来を展望。立ち読みがきかないほどの情報量で、

刊行と同時に2刷目。しかし、これとて数ヶ月で利用価値がなくなってしまうのだろう。面白いが、

しい世界でもある。ところどころの、「しりあがり寿」による、オヤジ1コマまんがが、いい味を出している。


1月4日(木) D

「ぼくの伯父さんの東京案内」 沼田元気 (株)求龍堂 1800円

またまた中年男の東京生活記。全編、宋朝体の小さな活字と森山大道的街角写真。売れないと自称

するアーティストの屈折した生活嗜好を、伯父さん(叔父さんでもなく、オジさんでもない)の眼を借り、

小出しにするのだが、その趣味は「如何にも」という感じ。第1回モノンクル賞受賞だと、何だいそれは。


1月3日(水) B

時代考証「日本合戦図典」 笹間良彦 雄山閣 3500円

この著者もいろんな方面の時代ものを書くひとだ。面白いのは140頁におよぶ、旗指物の解説。こん

なのが、合戦場を走り廻る姿を想像し、声を出して笑ってしまった。造形的にもなんでもあり、色につ

ても百花繚乱って感じ。それぞれが、目立つことだけを考えてつくったわけだ。おそれいりましたワ。


1月2日(火) B

「身体感覚を取り戻す」 斎藤 孝 NHKブックス 970円

著者は明治大学文学部助教授、教育学・身体論を教えているとか。腰・ハラ文化の再生を提唱する。

日本古来からの身体感覚と、そこから生まれた身体文化こそ、現代社会が失った大きなものであり、

武道、芸術での型の重要性と、反復練習の必要性を力説し、さらに呼吸法、息づかいまで言及する。


2001年1月1日(月) B

「重力ゼロの世界へ」 ピーター・ボンド Newton Press 2800円

21世紀初めての元旦にふさわしい宇宙もの。小5の時にスプートニクが飛んだ。12年後、アポロ11

月へ降りたった。そしてミールでの生活とペース・シャトル。当然、そこにはいろんなことがあった

けだ。そんな宇宙での生活の進歩をに説明。有人火星探査が今世紀中に実現するのかどうか?


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