景観演習/阿南町・御供リバイバル

 

飯田歴史研究所・樋口ゼミにおけるテーマとして「我が町の空家物語」がとりあげられ 二つの班に分かれて現地調査をおこなった

長野県南部・阿南町の御供(おども)地区グループに所属 巻末の景観構造分析手法を用いて 個人的にまとめケーススタディとした

なお阿南町の地域おこし協力隊・尾崎さんが御供地区においてカフェ開設を目指しており そのための事前調査にもなっている

改良された国道151号を南下 下条村の仁王関からトンネルを抜けて阿南町へ

長野県下伊那郡阿南町は県南部いわゆる南信州のほぼ南端に位置していて

北に下条村 西は浪合村・平谷村・売木村に接しており 南は新野峠を介して愛知県東栄町

東は天竜川を挟んで泰阜村 東南部に天龍村と接する山間の町である

 

  1) 等高線色分け・河川・道路   1/50,000地形図

等高線の色分けについて ここでは5色を使用している

地理学の常識からいえば 色の選択は緑から標高が高くなるにしたがい茶色に変えることが多い

ただ土地利用(森林地帯・畑作地・稲作地)および標高と気温との関係から考えると

飯田周辺の場合 逆に下がるにつれ緑から黄色・オレンジに変わる方がわかりやすい気がする

阿南町は いわゆる遠州街道が南北に貫いていて 北から富草村・大下条村・西に和合村

南の旦開(あさげ)村が合併したもので やはり現在も 大きくはその4地区から構成されている

 

  2) 土地傾斜色分け・河川・道路  1/25,000地形図

その中心部の大下条から東北に下った天竜川の川港として発達した御供(おども)地区と国道とは200mの高低差がある

 トンネルと大橋による国道の改良以前は 山間部をクネクネと結んだ旧遠州街道(金刺街道ともいう)を利用していた

 

2 周辺景観要素

当然各集落を結ぶ道が屈曲上下を繰り返し集落自体の結びつきも希薄にならざるをえない

明治8年の旧大下条村は14村から合併したものだといい さらに一度分割され また合併という

歴史をたどったのも そのあたりの地形的な要因が大きく影響しているようだ

 

そこで図中の地域を4つに分けてみていきたい それぞれの地区は距離的には それほど離れてはいない

年配者ならば その昔 徒歩で歩いた経験があるにちがいない しかしクルマに馴れた現在では

意識上では距離を感ずるのではないか とくに御供地区は その高低差から他地域とは隔絶感が大きそうだ

 

1)国道151号沿い

右に縦に伸びる151号 左集落が早稲田地区 遠く右上が国道中心部 (早稲田公園上・大時計附近から俯瞰)

富草から門原大橋へ この下に温泉施設・かじかの湯がある(右)

さらにJA虹のホールと阿南消防署を見ての下り

GSとコンビニやスーパーの集中する中心地区

注目したいのは葬祭場が2つも存在するということで 新野地区を除いた阿南町での国道の役割をうかがうことができる

 

2)旧遠州街道早稲田周辺

国道早稲田の信号から旧街道に入ると早稲田の集落

早稲田車庫が公共バスの中継点になっている

早稲田神社は早稲田人形の舞台を併設

旧道を南に行き早稲田公園からトンネル上部の高台に公共施設が集積している グランドや体育館

町民センター その東に少年自然の家とキャンプ場

 

2)県道244号役場周辺

早稲田の信号で右折して大廻りし東の大下条へ下る 左 保育園 右 阿南町役場と道を挟んで対面に農協

その辻から深見池方面に上ると 右に大下条小学校 左に大下条郵便局

さらに深見池を見渡す 7月中旬の祇園花火大会で有名

 

3)県道1号温田周辺

巨大な橋脚から左上の山道が県道1号(弁当山展望台から)

左下が国道中心部

御供集落の左から阿南病院裏を通り南宮大橋を渡り 対岸の泰阜村へ

JR温田駅から温田郵便局を過ぎて 泰阜村中心部に向かう

北側より見た温田駅舎 阿南警察署も住所は泰阜村

 

4)御供地区周辺

御供地区全景 撮影・阿南町「森の熊さん」

 

天竜川原より下流方面 静かな水面

天竜川対岸から見た御供集落と南宮大橋

鬼渡川を西側よりの空撮 鬼渡川沿いに大下条への旧道 橋は新しい県道1号

県立阿南病院

同病棟から見た御供地区 右上が阿南高校

唯一の食料品店・お酒と本屋 その向いが北條会館 右は飯田信金阿南支店

高台の天伯神社 右はラーメンめんくろう附近からメインストリート

 

4 御供地区の成り立ち

聞き書き地図 (作成 尾崎真理子・阿南町)

明治期の南宮峡 天竜川通船の川港であり 天竜峡に対抗しての川遊び場所だったようだ

(阿南町教育委員会)

左は明治20年ころの屋並地図 中は大正5年ころ 右は昭和38年ころ

なんといっても飯田線が昭和10年に開通し 温田駅からの下伊那山間部へのバス交通により御供の繁栄があったようだ

しかし昭和50年代の国道改良で クルマ社会に対応しての高速化が可能となり 現在はやや取り残された感がある

(阿南町教育委員会)

 

赤で囲った住宅が現在空き家となっている

(作成 清藤奈津子・山里文化研究所)

 

5 現地調査

街歩きサーベイ

上記景観要素検討に基づいてグループ全員による街歩きを行った

 

街歩きから得られた情報を地図上にプロット

 

県道1号から高台に登った展望台からの街景観 正面に お酒と本屋 左に阿南病院

御供メインストリートから天竜川原に下りて行く

途中見かけた不思議な場所 平らな部分と1段高くなった 広場 チラッと見えるのは阿南高校体育館

前に阿南高校にはボート部があり 諏訪湖勢と対抗した という話は聞いていたので 艇庫の跡と直感した

後日当時のOGに聞いたところ やはり艇庫があったとのこと

なかなか面白い場所で BBQやキャンプ さまざまのイベント会場としても活用できそうだ

川原は静かな水面と相まって 川遊びに使えそうだ

対岸から見た御供地区 川面左端に石段があり 船着き場の雰囲気

 

空き家実測調査

旧三浦歯科

阿南病院の南側 木造2階建て

昭和30年代の和風建物

この建物については前述のように尾崎さんがカフェ開設を目指している

WC・UBについては現状ではなく計画案をしめしている

 

旧大丸屋

旧三浦歯科のほか 旧大丸屋についても実測調査することができた

木造2階建て崖屋造 右が2階和室

 

ゲストハウス・モデル

前述のカフェ開設の計画については アルコール類の提供も視野にいれているようだ

ただ周辺地域との距離感などからすると 安価な宿泊場所が必要とされそうだ

将来的には現在休業中の南宮ホテルの再開が待たれるが それまでの繋ぎとして

下には大丸屋をモデルにゲストハウスの方向をさぐってみた

方針としてはできるだけハードルの低いものを目指すことを第一義としたい

2階和室はそのままで床をコンパネ仕上げとし2段ベッド程度の装備とし

室内仕上げ関係は手をつけない 水廻りについても WCは最新のものするが

浴室については簡単なユニット・シャワールームの設置にとどめておきたい

 

6 御供の将来への期待

南宮大橋からの御供景観

 

現在御供地区の商業集積は数えるほどであるが その中で大きな役割をはたしているのが

食料スーパーの「お酒と本屋」であり ラーメンの「めんくろう」で とくに後者は阿南高校生や

地域の食堂として繁盛している 休日には浜松方面あるいは遠山郷など 県道1号から

国道に抜けるドライバーや熟年ライダーに支持されていることが見受けられる

同じような役割を「カフェ」にも期待し さらに川遊びをメインにした行楽地としての復活を望みたい

 

おどもカフェ開店

さまざまな人の協力をえて ついに完成 

内外ともに極力手をいれるのを避け そのまま古民家風カフェに

カフェだけでなく 色々な催しを時に応じて おこなっているようだ

とりあえずランチはサンドウィッチ めずらしいザクロジュース

まだ厨房が馴れていないが そのうちメニューを増やして地区の拠点にしてほしい

2016・9・6

 

都市計画・建築・商業・観光のための景観分析

以上の景観演習は下に述べる順序に基づいて行った

*

1 景観基本図の作成

  1) 等高線色分け・河川・道路・主要施設   1/50,000地形図 →jump

大まかな地形を把握…5万分の1地形図を用いて100m毎の等高線を色分け

河川状況とともに主要道(国道・県道・市町村道) 距離同心円

主要施設(公共施設・教育施設・商店街あるいは商業施設など)

 

  2) 土地傾斜色分け・河川・道路・主要施設  1/25,000地形図 →jump

上記にくわえて土地の傾斜を把握…等高線の混み具合をケバ表示

結果的にには土地利用状況が反映される

 

2 景観要素の共有…ブレーンストーミング

道路(国道・県道・市町村道・旧街道・古道・登山道) 交通機関(鉄道・バス・タクシー)

河川(1級河川・2級河川・用水路・湖沼・湧水) 官公庁(役場・支所・警察・消防・公民館)

医療施設(病院・診療所・接骨院・歯科) 教育施設(保育園・幼稚園・小中学校・高校)

宗教施設(神社・寺院・教会・墓地) 民間施設(ホテル・旅館・結婚式場・葬祭場)

商業施設(コンビニ・大型店・中型チェーン店・飲食店・商店街) 利便施設(郵便局・銀行・GS)

福祉施設(高齢者関連・養育関連) 文化財(名勝・史跡・芸能・祭り)

行楽地(公園・展望地・道の駅・温泉・ハイキング・キャンプ・BBQ・釣り・ボート・もぎとり)

 

3 資料収集・文献調査

 地図(都市図 1/2,500〜1/10,000 ・住宅地図・家並帳・公図)

写真(古写真・航空写真・郷土写真集・郷土新聞・個人写真) 聞き書き

  地誌(町村史・地区記念誌)  観光案内…パンフレット

 

4 現地調査…徒歩・自転車…季節・時間・天候・方位

  河川(水量・流れ・堤防・橋) 道路(幅員・傾斜・交通量)

  景観重要ポイント 主要施設・交通施設

 

5 景観構造図の作成

 

6 景観ストーリーの展開…景観計画の提案

 

7 公表…ネット・発表会・報告書

 

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