秋葉街道小川路峠越え

中央の窪みの左側 三つ峰の真ん中あたりが飯田市街から見る小川路峠

 

アーネスト・サトウの足跡

(2017・7・2)

幕末から明治中期まで英の外交官として活躍したアーネスト・サトウの日本旅行記の中にも

小川路峠越えの日記が残されている 飯田から愛宕坂(?)を下り牛草坂(?)から八幡の神社へ

ここまでは遠州街道 神社前の道標から左折して秋葉街道へ入って行く

さらに天竜川を渡しで越えて 知久平から越久保まで村人とのエピソードを交え 峠道へ

そこからの記述は下記 該当ヶ所に補足

 上村に下り 木沢を通過して 和田宿で1泊したのち青崩峠を越え

水窪へ出て秋葉神社にいたり 大井川を下って帰京したという

 

  遠山郷は飯田市から山ひとつ隔てた いわゆる遠山谷といわれるところ

  古くは秋葉街道(現在は国道152号)と呼ばれた浜松の秋葉神社への参詣道が貫いている

  昭和12年の飯田線全通により 平岡駅廻りで結ばれる以前は

  これも秋葉街道と呼ばれた 飯田の町からの一日がかりの唯一の交通路であった

  その一番の難所は小川路峠で越久保から上町まで約20km

  標高差1000m近くで その距離により五里峠とも呼ばれていた

  前から一度越えてみたいものだ と思って同行を呼びかけていたが みな怖気づくばかり

  仕方なく独りでの峠行を決意し 天候の様子をうかがっていたが

  平成22年5月16日朝8時クルマにて まずは下久堅へ向かった

 

下久堅北原のキノコ生産農家の(株)太陽農場 この敷地にクルマを置かせてもらった

下久堅の有名人でもある社長の吉岡昌則氏は20年来の友人

軽トラに乗せてもらって行けるところまで 送ってもらう目論見

上久堅の越久保を過ぎて 右は観世音堂 ここが一番観音

クネクネと上るとゲートがあって ここから歩きはじめた

しばらく行くと古道との合流点 さっきの観世音堂から

急坂の古い道があったようだ ここで大阪から来たという団塊3人組を追い抜く

観世音堂まではタクシーで来たという

このあたりは無理すればクルマも通れそう 右は唯一の水場

南方向の眺め ここを過ぎたあたりから本格的な山道

十五番観音 旅人には励みになる石仏

人が通れるだけ右は谷底という難所を通過 冬なんかどうしたんだろうね

火ぶり場 ちょっとした鞍部 茶屋があったという 右の大木は天然の唐松 いわゆるテンカラ

蛭居場(火ぶり場?)の茶屋では女主人に執拗に勧誘されたという(サトウ日記)

地図上の現在地を見失ってあせったが 見事な眺望

サトウ日記には 途中 眺望の良さを述べた部分もある 天竜川が見えたとあるから ここのことかもしれない

またも ロープにつかまる危険箇所 こういったところが数ヶ所

そして三十番観音 もう少しだ このあと尾根を進んで

峠に到着 木の鳥居と三十三番観音 歩き始めて約2時間の行程

平らな部分には茶屋「花菱屋」があったという 水なんかどうしていたんだろうね

峠頂上の茶屋(花菱屋?)については名前は未記入だが かなり大きいと記している(サトウ日記)

そこから高台に登ると電波反射板と鉄塔の基礎跡

鉄道無線用という話だが定かではない

自宅から双眼鏡ではっきり見える 肉眼でも それとはなしに確認できる

写真は大瀬木在住・中井俊一さんが風越山の前山「虚空蔵山」の頂上展望台から

撮影されたものを部分拡大したもの(11月初旬) 電波反射板がバッチリ

霞んではいるが 中央やや左が飯田市中心部 緑の帯が段丘端部の林

上村側の眺望 大沢岳あたりか ここで昼食

さきほどの鳥居をくぐって上村側への下りを開始

少し下がった上村側の眺望ポイント

望遠だとこんな感じ

上村側にも同じような観音 こんどは番数が減っていくわけだ

ただ番数の表示板は上久堅側とは異なる このちょっとした平にも茶屋の雰囲気

足音に鹿2頭が白い尻毛をなびかせ逃げていった

右写真はその近くの墓石群で少々不気味

同じような難所もあって

また少し開けた鞍部 ここにも「松田屋」という茶屋があったという

水は200m下の沢から汲み上げたとか

松田屋らしき茶屋もしっかり記載されている(サトウ日記)

左の鞍部で斜面が逆となり いよいよ先が見えてきた

最後のここは猛烈な下り 白く見えるは建設中の林道

林道は大廻りに下っていく 旧道は途中から山道を下るのだが

その探索はあきらめ 右が赤石林道への出口

遠山谷は新緑真っ最中

赤石林道から ようやく上町が見えてきた これももっと近く急峻な旧道があるはず

峠から下りもやはり2時間ほど 帰路は1日2便のバスでの予定だったが

午後の便までの2時間のつぶしようがなく 結局 程野まで8km弱を歩いた

午後4時半の小型バスに乗車 矢筈トンネルを抜けて 下久堅北原バス停で下車 700円

5分ほどで太陽農場に辿りついた 念願の小川路峠越えで 達成感の余韻はしばらく続いた

現在はネットをみるとMTBを担いで登った人もいるようだが

その昔赴任した警察官・郵便配達員・教師などから「辞職峠」と

揶揄されたのも当然のような気がした

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2010・6・9

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