新刊読書日記2000年下半期
12月31日(日) C
「来てみて四国 ものづくり」 監修・四国通商産業局 愛媛新聞社 1400円
産業観光施設88ヶ所めぐり。四国全土の工場、銀行、新聞社、放送局、資料館、博物館の紹介本。
しかし、行ってみたいと思うところは少ない。古い建物や、町並みならすぐにでも行ってみたいのに。
さあ明日は21世紀。20世紀よ、さらば!今世紀最大の発明はなにか?寝ながら考えることにする。
12月30日(土) B
平凡社ライブラリー「増補 花押を読む」 佐藤進一 平凡社 1200円
1988年刊を増補したもの。「花押」である。前々から興味をもってはいたが、その全容を解説する本
にめぐりあった。それは芸能人のサインを、一字にまとめたようなもので、中世以来、権力者の自署と
して用いられてきた。現在は内閣大臣も、使っているらしい。それらを解読する試みである。なるほど。
12月29日(金) C
「日本の名景ー橋」 平野暉雄 光村推古書院 1600円
日本の名景シリーズに橋が登場。39都道府県125橋145景を掲載。瀬戸大橋の長さ1723メートル
の吊り橋から、短いのでは、わずか50センチの、島原武家屋敷の水路にかかる石橋も。鉄橋、木橋、
有名無名とりまぜて紹介している。写真もそれなりにキレいなんだが、ちょっと詰め込みすぎの感も。
12月28日(木) C
「戦略戦術兵器事典 中国編」 (株)学研 1500円
中国4千年に及ぶ戦いの歴史のなかでの兵器、用兵をまとめた歴史群像グラフィックシリーズである。
ゲーム世代にとっては、肯ける事柄でも、こちらとしては歴史の全体像から、理解しなくてはならない。
興味の対象がズレていることに加え、ペダルを踏みながら読むには苦手の横書きときて、ご苦労さま。
12月27日(水) D
「『みだら』の構造」 林 秀彦 草思社 1500円
オーストラリアに移住して12年の脚本家が、××××文化こそ真の日本文化と主張する。それは単
なるホームシックではないのか。言わんとすることは、わからんでもないが、あまりにも構成がなって
いない。範とする九鬼周造の「『いき』の構造」(昭和5年刊)には、遠く及ばないのではないだろうか。
12月26日(火) B
「僕はアメリカに幻滅した」 小林 至 太陽企画出版 1700円
著者をよくみれば、東大出のロッテに行った投手、至クンではないか。その後、コロンビア大学のMBA
をとり、現地での就職、そして解雇。今まで報道されなかったアメリカの陰。現在の日本が、アメリカの
政策を全く後追いしているだけに、将来の、貧富の差の拡大、と社会の2極分化を予言しているのか?
12月25日(月) A
「松永 真、デザインの話し。」 松永 真 (株)アゴスト 2500円
CG関係誌「アゴスト」への3年前からの連載。グラフィックデザイナー松永真の、いままでの仕事は確
かに見事だ。1940年生まれだから、興味があるのは、今後の方向。すでにこういう文章を書くことすら
老成した証拠。最近の作品にはそんな匂いがチラリとみえる。希望に燃えるデザイン学生は、また大多
数の市井のデザイナーはどう読むか。人間の「生かされ方」を考えさせられた、午後のひとときだった。
12月24日(日) C
「世界の軍用4WDカタログ」 日本兵器研究会・編 アリアドネ企画 1800円
軍事オタクのためのミリタリーシリーズ第5弾。冷戦の終結と各地の民族紛争へのPKO活動での必要
性から、軽装甲の4WDが人気らしい。さすがに定評のある、南アフリカには1章を割り当て。イタリアの
8輪装甲戦車で「センタウロ」というのを発見した。名前の由来は不明、調べてみてチョ「仙太郎」さん。
12月23日(土) D
「子どもに伝える父のワザ52」 グループ・子どもと向き合う父親 編 講談社文庫 781円
こういう本を読んで実践する父親がいるのだろうか?いるのだろう。それにしても、その遊びの分け方
が思い付きなのはどうしてか。複数の人がそれぞれ持ちよるのはいいが、リーダー不在の印象。なん
だかよくわからないが、こんな本が必要とされているのは事実。そんなことよりもっと自信をもちたい。
12月22日(金) B
「『定番・ロングセラー商品』つくり方育て方」 たかはたけいこ 双葉社 1400円
アップルハウスという企画、製造から販売までやっている婦人アパレルのオーナー。天然素材の定番
商品にささえられ現在10店舗を展開中、そこでの経営のノウハウを、惜しみなく披露している。平易な
文章で、専門知識がなくとも読めるのだが、では逆に誰に読ませたいのか、よくわからない感じもする。
12月21日(木) B
「お笑い研究所」 西条 昇 風塵社 1700円
毎日新聞夕刊に週1回の連載、いかつい風貌のお笑いプロデューサー。好き嫌いのない、それぞれの
芸人評は、的確かつ優しい。そこにはお笑いへの「愛」があるのだ。しかも、月日どおりに並べる自信。
もっとスゴイのは第2部「笑いの博士課程」と題した、雑誌掲載の収録4本。文章の巧さに加えての博
識、昭和20、30年代のラジオ、モノクロテレビに登場の芸人多数。当時の声色、姿が脳裏に浮かぶ。
12月20日(水) C
「サイファ 覚醒せよ !」 宮台真司・速水由紀子 筑摩書房 1600円
世界の新解読バイブル。難しくなってしまった。ところどころ、なんとなく理解できるものの、ただ読ん
だというだけ。サイファとは何か?「今、こうして生存していること」そのことではないのか。そう考えれ
ばわからないこともない。もう少し、世の中を簡単に説明しないと、教祖にはなれないのではないか。
12月19日(火) B
「徳利・盃図鑑」 浦野惠司 里文出版 2200円
昼間からトックリをながめてどうする、と思いながらパラパラと。前橋在住の趣味人の徳利人生につ
きあってしまった。画家と称してはいるが、文章もサラリと書いているから自信があるのだろう。家族
にとっては、困ったオヤジの雰囲気濃厚。古伊万里から、明治の雑器にいたるまで、その幅は広い。
12月18日(月) A
「未知なる地底高熱生物圏」 トーマス・ゴールド 大月書房 3800円
電気から聴覚生理学関係の老学者が、石油石炭は生物の死骸からできたのではなく、地底の炭化水
素から生成されたと主張する。そこにみられる生物の死骸は、地底深く生息している、生物そのものだ
という。前半は訳の悪さもあって退屈だが、後半は、地震は地下の炭化水素の動きによるとか、生命の
起源の話し、さらには地球外生物の存在にいたるまで、とスケールは大きい。それにしても高い本だ。
12月17日(日) B
初級人間学講座1 時事問題講義「偽善の爆発」 ビートたけし 新潮社 1100円
昨日の四方田某とは大違い。自分のスタンスが確固としているということか。雑誌「新潮45」の連載で
新聞、テレビじゃいえない本音ばかりだ。しかも、その奔放な想像力の発展は、思いもよらないところま
で広がって行く。しかしながら、最後に、悲観的になりすぎてしまっていて、いささかがっかりの、減点。
12月16日(土) D
「けだものと私」 四方田犬彦 淡交社 1600円
大仰な書名だが、たんに「週間SPA」の連載コラムほかをまとめたもの。最後まで、現実感を覚えな
かった。名前だけは知っていても、映画評論家とは失礼しました。こんな文章が、3年にもわたって連
載されたとは、なんといったらいいのか。フワフワとした芯のなさを、読んでいるあいだ感じてしまった。
12月15日(金) C
「アウトドア用具のメンテナンス」 鶴田康男 地球丸 1000円
素材の基礎知識から、ウェア、ザック&バック、テント&タープ、スリーピング・バック、マット、シューズ
ストーブ&ランタン、ライト、ナイフ、クーラー&ウォーターボトル、テーブル&チェア、オイル・ライター
スポーツグラス、工具まで、メンテナンスを写真で紹介。しかし、アウトドアショップを見るのは楽しみだ。
12月14日(木) C
「アジア包(パオ) 上巻」 遠藤ケイ 山と渓谷社 1700円
月刊「Outdoor」の3年にわたる連載とか。だれの金で行って、なにをしたかったのか?疑問符がつく
ほど、前半のタイ、韓国編は情けない。住民とコミュニケートできない分、社会派的言動が多くなる。
旅行記には社会派は不要。ようやく後半のモンゴル編で、彼らしさがでてくるのだ。下巻ではどうか。
12月13日(水) C
「恋する石膏像」 視覚デザイン研究所 編 1700円
美大受験でおなじみの石膏デッサン、その石膏像の集成。アポロから、マルス、カラカラ、アグリッパ
ほかほか。その由来や、デッサン制作過程も。しかしマンガ風イラストは邪魔。格調が感じられない。
12月12日(火) A
「日本民家の造形」 川村善之 淡交社 3400円
京都芸大名誉教授が、民家の細部をすべて写真で説明。総アート紙323頁で、ずっしりと重い本だ。
建築史というよりも、美術造形からの見方で、いつもと角度が変わっていて、面白い。屋根、棟、破風、
軒、外壁、玄関、窓、建具、土間、床、天井といった部分から、生活の場としての各部屋の意匠と、蔵、
門、庭までも。さらに民家の種類から建造物群、町並みと、抜かりなく紹介している。事典というべき。
12月11日(月) B
「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん」 北尾トロ 風塵社 1300円
なかなか面白かったよ、トロさん。いっぱいになった本棚を見上げて古本屋になろうと思った、というラ
イター。1958年生まれは、そんなに若いとは言えないか。とうぜんマニア向けの本、雑誌が売り物の
わけだが、古本屋立ち上げから、毎月の会計状況報告。半分は、そんなダラダラした日常の日記だ。
12月10日(日) B
「ああ勲章」 佐藤清彦 青弓社 1600円
手錬れである。文章も構成も、深さも十分、著者は様々な方向の本を出しているらしい。器用なのだ。
ところが読む方は、その手慣れた書き口に、物足りなさを感じてしまうのだ。勝手なもんである。もう少
し装丁に金をかけて、書名も考えれば、印象はちがったものになるのではないだろうか。惜しいと思う。
12月9日(土) C
「建築家と建てる理想の家」 竹島 清・笹 敦 筑摩書房 1700円
「ペ」みたいにどうでもいい本。でも一般の人にはこれくらいでいいのかも。なにしろ、カッコいい建築家
たち二人だ。読んでるこっちが、赤くなるほど。家をつくるのが、なんでこう難しくなっちゃうのか。高額な
だけに、いろいろ考えすぎてしまう傾向にあるのか。信頼できる人にまかせれば、それでいいはずだ。
12月8日(金) C
保存版「古写真で見る 失われた城」 監修 平井 聖・小沢健志 世界文化社 3800円
焼失直前の熊本城の古写真は迫力十分。歴史ファン、城ファンにとっては、保存版にはちがいない。
しかし素人は天守だ。戦災で失われた7天守、あるいは明治になって取り壊された天守の、古写真は
意外と少ない。図書館でみつけて、早速借りてはきたが、書店でみかけた時ほどの興奮はなかった。
12月7日(木) C
「林丈二的考現学」 屁と富士山 (株)INAX 1500円
INAX BOOKLETに林 丈二が登場。前回よりも面白い。この人の場合、あまり読ませなくていいから、
その収集品を写真で紹介するだけで十分ではないか。なまじ文章が入ってくると、興味が失せてくる。
だから路上観察学会の座談会や奥さんのコメントなどは不要。もっと数多くのモノだけを見たいのだ。
12月6日(水) C
「決定版!大相撲観戦道場」 「相撲」編集部編 ベースボール・マガジン社 1400円
もっとも素朴で、それだけに古い格闘技「大相撲」の楽しみ方入門書。当時、関脇の初代若ノ花を巡業
の間近に見てから入れ込んだ。横綱になってからは、どうでもよくなって、例の栃錦との全勝対決も記
憶にない。一時の二子山全盛から凋落、そして今度は武蔵川部屋の隆盛へ。栄枯盛衰あるもんだね。
12月5日(火) B
「未来の学校建築」 上野 淳 岩波書店 1700円
「教育の挑戦」シリーズ、教育改革をささえる空間づくり。学校建築の計画では有名な、都立大長倉研
究室の後継者が、新しい学校像を模索する。オープン化から、一歩進んでの地域の中での複合施設
化。あるいは、中高一貫教育に対応する、施設のありかたなど。また抜かりなくエコスクールにも言及。
12月4日(月) C
「日本陸軍航空隊のエース 1937−1945」 ヘンリー・サカイダ (株)大日本絵画 1800円
5機以上撃墜した戦闘機乗りをエースというらしい。これは「世界の戦闘機エース」シリーズ第6巻目。
さらに5冊以上の出版を予定。確かに大戦末期の首都防衛戦でのB-29との闘いは、読んでいて興奮
するものがある。とくに10門もの機銃の嵐の中を1対1でチキンレースをして、距離80メートルで37ミ
リ砲弾を1発だけ発射する、樫出大尉の対進戦法は、オトコのコだと思う。しかも彼は生き残っている。
12月3日(日) B
「グループホームは老いをつつむ心の縁側」 西村美智代 近代出版 2000円
そこで与野と浦和で、2軒の痴呆老人のための、グループホームをたちあげた、ネットワークの代表の
登場。試行錯誤を、つづけながらの体験記は、文集のようで読みにくいが、内容は濃い。空いた一軒家
を借り上げて、一人月18万円であずかるシステム。小規模であることが、必要条件のような気がする。
12月2日(土) C
「女一人の終の棲み家さがし」 大沢久子 主婦の友社 1300円
2つの問題がある。文字通り一人暮らしをどこでするか、と動けなくなった時どうするかの2点。この本
はどちらかというと前者、女一人の生き方についての、報告が主である。後者についていえば、家族に
頼ることのできない現在、誰でもぶちあたる問題で身につまされる話。その時、誰の世話になるかだ。
12月1日(金) D
わずかな時間の対談をもとに、あたかも共著のような体裁をつくりあげる。こんな本の作り方をするか
ら出版不況となるのだ。内容は、中国、北朝鮮に対する不信感と、クリントンの弱腰非難に終始する。
台湾侵攻と同時に中国が日本に核をぶちこむという想定から、日本に核武装を求めるタカ派の発想。
11月30日(木) B
「私のガラクタ美術館」 多田富雄 朝日新聞社 2400円
ガラクタと謙遜するが、そこにあるのは古代をほうふつとさせる発掘品や、高名な作り手の「おもて」で
あり、小鼓の胴である。白州正子を継承する眼と手を持つ文章家と腰巻きでは絶賛するが、著者は免
疫学者らしい。たしかに読みやすく、また格調のある文章。夜、これらの前で夢見る姿が眼に浮かぶ。
11月29日(水) C
「絶景 秋列車の旅」 櫻井 寛 東京書籍 2200円
絶景列車シリーズも冬から始まり、春列車、夏列車と続きいよいよ最後の秋列車。そのわりに紅葉風
景の写真が少なかった。冬で見せた夜景撮影のうまさも今回はなし。鉄道マニアの色を薄めているの
で、素人でも楽しめる。4巻出たんだから、評判もよかったのだろう。たしかに一度、乗ってみたくなる。
11月28日(火) B
「都心活性化地図」 成戸寿彦・青山ヤスシ かんき出版 1800円
計画地図シリーズ、首都圏、東京、関西、東海につぐ第5弾。内容はそのほとんどが超高層再開発計
画の紹介。こんなにつくって大丈夫か。これだけ見ていれば、バブル後遺症もすっかり全快で、逆にイ
ンフレの予感も。東京都副知事青山さん、名前が第2水準にもない漢字、本人も廻りも苦労するなあ。
11月27日(月) C
「買ってから泣かないマンション選び」 根来冬二 築地書館 1800円
マンションの資産価値をどうみるか。将来の周辺状況の変化と、老朽化にたいする管理の問題。周辺
の変化は、目の前に同じようなマンションや迷惑施設が出現することへの読みだが、自分が周辺へ迷
惑をかけていることは、無視という態度。買い手が高齢化したとき、住み続けられるのか、問題は多い。
11月26日(日) C
「プラモデル進化論」 今 柊二 イースト・プレス 1500円
模型を、盆栽と「からくり」にそのルーツを求め、日本最初のプラモ原潜ノーチラス号(その昔、オモチャ
屋をやっていて廃業後に、発売の広告が舞い込んだ記憶がある)から、現在までの模型史を語る。後半
分は、ガンダムをはじめとするキャラクター物の解説で、飛行機の1/72スケール専門にとっては辛い。
11月25日(土) C
「最新 世界の名刺コレクション1」 ピエ・ブックス 3700円
世界各国から900作品、さまざまのスタイルの名刺、カードが集合。むかしから名刺には興味があり、
パラパラとめくってみた。それぞれデザイナーが趣向をこらしている様子。個人的には、大学の恩師が
使っていた旧い字体の、なにげない名刺をつくりたいのだが、いまや活字がなくなってしまったようだ。
11月24日(金) B
「お受験」 片山かおる 文藝春秋 1333円
1998年初版、これは第3刷。娘の小学校受験に失敗したフリーのライターが、まさに「お受験地獄」と
もいうべき、恐ろしい世界をあぶりだす。最終的には「学歴」という、新しい「身分」に収斂していくのだが
学歴のある人ほど、ハマりやすいらしい。結局ヒマだからいけないんだ。まあ東京でなくてよかったワ。
11月23日(木) C
懐旧都市「失われた日本の風景」 写真・薗部 澄 文・神崎宣武 河出書房新社 1300円
1921年生まれ1996年に亡くなった写真家の終戦後の都市風景写真。昭和20年代から30年中頃
高度経済成長直前までだから、懐かしくはあるけれど、写真の羅列にそれだけという感じ。フォークロア
・ライターの神崎さんが、解説をかいているが、似たような企画にくらべて、中身はそれほど濃くはない。
11月22日(水) B
「人はなぜ学歴にこだわるのか」 小田嶋 隆 メディアワークス 1500円
早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒の著者が、「学歴」というものを、社会学的に考察する。
まあよく書いたよなあ、このタブーを。あとがきでも書いているが、筆が進まず、そうとう苦労したらしい。
でも、だいたい本音をしっかり書いている。ただ、やっぱり新聞の書評欄では無視されるにちがいない。
11月21日(火) C
「アジアン・リゾート」“女殺し”のホテルたち 村瀬千文 三笠書房 1500円
ホテル・ジャンキーと自称、アジアの高級リゾートホテルを評価する。なんというキザな文章だ。しかし、
それなりに雰囲気はでている、半分がつくり話にしてもね。こういう世界もある。久米某あたりは長い休
みをとって、ここらにいるわけだ。写真を提供している、森拓之事務所というのがダンナだな。おそらく。
11月20日(月) D
「絶対 幸福主義」 浅田次郎 徳間書店 1100円
前から、好きじゃなかったので、本は1冊も読んでいない。それでもと借りてきた。語り下ろしエッセイだ
そうだ。知人が彼の日頃の言動を記し、それを「週間アサヒ芸能」に連載、それをまとめたという、前の
渡辺和博以上に、人をコケにした話。苦労人だから、面白いという人もいるだろうが、つまらなかった。
11月19日(日) C
「それでも真っ当な料理店」 田中康夫 ぴあ 1500円
「なんとなく…」は読んだような、読まないような。まともに読むのは初めて。都会派なんだな。自分の
感性だけを信じる生き方もわかる。しかし困っちゃうよなあ、田舎の役人は。「じゃどうすりゃいいのよ」
といいたくなるのも当然。東京とはなんの縁もない地方の感情を、どう理解していくか、興味ある問題。
11月18日(土) C
「 I T パワー」 中谷 巌・竹中平蔵 PHP研究所 1000円
日本経済主役の交代ですと。そうらしいですなあ。中谷先生をみていると、評判ほどにはスゴイことを
言っているとは、思えないが。アメリカの I T革命を持ち上げ、今後、日本の株価は、さらに上がるとの
対談(1月の時点)での御宣託だ。でもこの11月には、1万5千円を割り込んじゃった。どうしてくれる。
11月17日(金) B
「墜落か生還か」 スタンリー・スチュワート 訳・十亀 洋 講談社 2200円
墜落事故一歩手前から、どうやって生還したか、クルーの立場からみた劇的なドキュメント。著者は元
英国航空の機長、訳者は全日空の安全担当。さまざまな不運と、不注意が重なって事故が発生し、幾
多の幸運と努力が相乗して、地上に戻ることができた感動的なケースを淡々と紹介。「運命」を思った。
11月16日(木) C
「偽造鑑定人 マル秘 調査ファイル」 松村喜秀 講談社 1700円
一時期、偽ドル鑑別機を開発して、話題になった人物。その後の様々な経験を語る。しかしアブない
商売だ。本来の技術者としての生活も、偽物を求めるために、だんだんと、その社会の深みにはまら
ざるをえないし、そうなったら元には戻れない。著者をモデルにした、もっともらしいマンガは目障りだ。
11月15日(水) A
「目で見る仏像」 完全普及版 田中義恭・星山晋也 東京美術 3000円
みうらじゅんの感化で借りてきた。完全普及版とはどういう意味かはわからないが、 如来、菩薩、観音
菩薩、大日・明王、天、羅漢・祖師にわけての全776頁の解説は充実の一言。世相と経典の解釈を受
けて、新しい仏像がうまれる様は、仏教のダイナミックな一面を見るようだ。他の宗教の厳格さにくらべ
ての、この柔軟性が、どこからくるのか興味深い。もしかしたら、日本人の本来もっている特性なのか。
11月14日(火) C
「華麗なるヨーロピアン リゾートホテル」 写真・岸田惠俊 文・松里みゆき 旺文社 1714円
旺文社ムック、世界のホテルシリーズVol.2。イタイア、スペイン、オーストリア、スイス、フランス、モナ
コの9軒の格式あるホテルを紹介。しかし、華麗さの伝わり方が不十分だ。写真や構成が、今ひとつの
感じがする。それとリゾートを語るんだから、もうすこしキチンとした地図をつけ、想像力を沸かせてよ。
11月13日(月) B
「ジャッジをくだす瞬間」 岡田正義 講談社 1500円
ご存知、サッカー国際審判のレフェリー人生。ワールドカップ、フランス大会でのイングランド対チュニジ
ア戦の記述は感動的。いい試合をつくることができた時の満足感は想像がつく。しかしミスター・オカダ
の顔の大きさはどうだ。記念写真でも他を圧倒。歌舞伎役者と同じで、存在感を示すには有利だよな。
11月12日(日) C
「毎日は笑わない工学博士たち」 森 博嗣 幻冬社 1600円
ダラダラとつづく18ページものまえがきに不機嫌になってしまった。1996〜1997年にかけてのHP上
の日記の公開。著者は名古屋大学工学部助教授でミステリー作家らしい。正体を知りたくて最後まで
読んだけど、やはり建築の先生だった。趣味の広さといい仕事のスピードといい、恐ろしく器用な人だ。
11月11日(土) C
「和庭の美と景」 ニューハウス出版 2476円
ホームメイクシリーズ。趣向をこらした庭が、前庭、主庭、中庭、茶庭、側庭、坪庭と並ぶ。さらに「現代
の和の庭を考える」として、曹洞宗の副住職でありながら庭園デザイナー枡野俊明が語る。けっこうだ
けど、近所で松の剪定だけで、年50万かかるなどと聞くと、こうやって本を見ているだけがお利口か。
11月10日(金) C
「東京アンダーワールド」 ロバート・ホワイティング 角川書店 1900円
いつものことだが、この本もアメリカ向けに書かれたものだ。戦後の裏社会を語るのだが、書名は「六
本木アンダーグランド」の方が、ふさわしい。訳者があとがきで書いているように、この著者は“語り手”
を選ぶのがうまい。でも、その「ニコラ」はマフィアのボスでは、けっしてない。第一、手下がいないもの。
11月9日(木) C
「航空自衛隊パーフェクトガイド」 監修・執筆 山岡靖義 学習研究社 2100円
「自衛隊パーフェクトシリーズ」第2弾。海上自衛隊編も詳細なデータをイラスト入りで紹介していたが、
今回も各飛行部隊の所有機については、全機の写真が。これがマニアが喜ぶんだよね。こういうのを
参考にして全機を撮影したと、自慢するヤツが実際にいる。8年前の岐阜基地の航空祭、楽しかった。
11月8日(水) C
図説「役行者」修験道と役行者絵巻 石田知彦・小澤弘 編 河出書房新社 1800円
名前だけは知っている「役の行者」について知識を得るべく借りてきました。修験道の開祖の「役小角」
だが内容は、むしろ絵巻物中心の美術的研究を主にしていて退屈。江戸中期に神変大菩薩の諡号が
授けられたという。神社で見かける石に彫られた「神変大菩薩」が役行者のこととは初めて知りました。
11月7日(火) C
図解でわかる「建築法規」 高木任之 日本実業出版社 2200円
建築士試験の参考書、あるいは建築関係者向けの入門書だそうだ。建築基準法が、50年ぶりの大改
正だそうだ。あわてて借りてきた。法律は一般的に、だんだんと複雑になり、面倒。今回の目玉は建築
確認審査業務を、民間に解放するというが、実際は役人の退職後の仕事を、確保するだけじゃないの。
11月6日(月) C
「ITで世の中が変わる」 牧野昇・石井威望 PHP研究所 1000円
iモードが創る新世紀なんだそうだ。そこからITの将来、21世紀の主役を語る対談集。世界の中での日
本の位置付け、とくにケータイの普及と iモードの意義を強調。しかしこうしているうちにも、予想もしない
モノが今も生まれている。それを話すお二方がそれぞれ80歳と70歳だから、なんとも言いようがない。
11月5日(日) C
「タイタニックから戦艦大和へ」 江野夏平 工作舎 1600円
テレビ朝日の特番「悲劇のタイタニック引き揚げ大作戦」「今よみがえる戦艦大和」のディレクターが語
る番組秘話。両番組とも結局見ていない。本人がのめりこむほどの興味は湧かなかった。それにして
も下手な文章、というか構成が悪い。わかりにくいのだ。これじゃ番組だって冴えないにちがいないぜ。
11月4日(土) B
図説 満鉄「満州」の巨人 西澤泰彦 河出書房新社 1800円
著者は名古屋大学大学院の建築史の先生。名前だけは知っている満州における満州鉄道のはたした
役割。まさにシムシティのごとく、鉄道建設とともに都市を築いていく。建築も列強に対抗して、さまざま
なスタイルでつくられた。しかも戦後、中国の資産となり、今も、そのまま使われているところがスゴい。
11月3日(金) D
「プライド 処生術2」 藤原和博 新潮社 1300円
第1章の義父の死についての感傷的な文章はなんだ。リクルートの社員で客員社員制度を提案し自ら
その第1号になったとか。ちなみに第3号が有森裕子で第5号、斎藤裕だとか。しかし面白くない本だ。
10歳も若いあんたに、生き方を指南される必要はない。 もう二度とこいつの本は読まないぞ、絶対に。
11月2日(木) C
「鳥人間の本」 読売テレビ編 東京書籍 2000円
毎年7月末琵琶湖でおこなわれる鳥人間コンテストへの讃歌。つい見ちゃうんだよね。それにしても2年
前の人力飛行機での琵琶湖横断はすごかった。だけど玄人はむしろ滑空機部門のほうがおもしろいん
だそうだ。10mの高さから飛び出しての364mは、世界的にもすごいらしいよ。知らなかったでしょう。
11月1日(水) C
「長野県の渓流釣り場・南信編」 山と渓谷社企画開発部・編 山と渓谷社 1600円
東京起点日帰り1泊渓流釣り場ガイドその5。長野県を長野・飯山など北信、上田・佐久を東信、松本を
中信とし諏訪以南を南信と呼ぶ。飯田も当然、南信だ。釣りはやらないが、いつも見る川をどう紹介して
いるか興味がある。漁協が良く管理している、ということは定期的に魚を放流している「半釣り堀状態」
10月31日(火)
「輝く季節への旅 プリンス エドワード アイランド」 吉村和敏 KKベストセラーズ 1500円
しかし写真家の書く文章はなぜ、こうも感傷的なのか。プリンス エドワード島といえば「赤毛のアン」の
舞台、カントリーブームにのって写真家の道へ。たしかにキレイな写真で、その明るさと色彩は、メルヘ
ンそのもの。でもいつまで、それをやっていられるのか、ひと事ながら心配する。まあどうでもいいけど。
10月30日(月)
「Clieパーフェクトガイド」 GLG補完機構 イースト・プレス 1380円
今日から使える、最強のSONY製 Palmを速攻理解。VAIO・サイバーショットとの組み合わせで、楽し
みも倍増!だとさ。いわゆるPDAの必要性をどうみるか。いまのところ能率手帳に勝るとは思わない。
10月29日(日)
「ザ・90年代ああ、そうだったのか。」 渡辺和博 ギャップ出版 1800円
雑誌ポパイの連載をまとめたという例によってズルイ本。しかも90年代前半のものとはアキれるぜ。こ
こまで古いものを、90年代はとてもよかったとはフザケた話。読者を愚弄している。まあ飛行機イラスト
の小繁夫先生の話や、NYのイントレピット航空博物館がでているので今回は許してあげることにする。
10月28日(土)
「明治がらくた博覧会」 林丈二 晶文社 2000円
路上観察学会会員、藤森照信や南伸坊のお友達にして、がらくたコレクターが明治モノを語る。絵葉書
や当時の新聞から、世相を眺めてのエッセイ。やっぱり伸坊や原平さんのほうがおもしろい。なぜか?
10月27日(金)
「自動車百年の最終戦争」 上杉治郎 双葉社 1500円
最終戦争といえばハルマゲドンではないか。来るべき世界で生き残れる自動車メーカーは 5、6社と言
われている。そこで今行われている開発競争と、世界的規模での合掌連衡を、克明に報告する自動車
ジャーナリスト。まさに資本主義の代表選手達の厳しい競争は、別の世界のことであってほしいと思う。
10月26日(木)
目をみはる伊藤若冲の「動植綵絵」 狩野博幸 小学館 1900円
伊藤若冲といえば鶏で有名だ。その絢爛豪華な色彩と、画面をびっしりと埋めつくす、独特の描写は
どちらかと言えば「異端」と称されてきたが、近年その評価は高まってきてはいる。商家の四代目にし
て生涯独身という、遅れてきた絵師は、やはり器用じゃなかったのだろう。しかし、疲れる絵ではある。
10月25日(水)
「今こそ終身雇用だ!」〜横河電気の挑戦〜 大谷昭宏+取材班 テレビ朝日 1200円
毎週日曜朝のテレビ朝日「サンデープロジェクト」の放送取材記。リストラ全盛のこの時代に終身雇
用を叫ぶとは。つまりは経営者の、資質の問題でもある。これを築きあげた、故・美川社長の能力に
つきる。しかしこの社長あまりにもいろいろやりすぎた。だから早すぎた人生。65歳ならまあいいか。
10月24日(火)
荒俣 宏の「イーベイ」お宝コレクション術 平凡社 1300円
前作で少しふれていたイーベイについての本。「eBay」はアメリカのインターネット・オークションの
サイト。先生は、そこでのオークションは知的なゲームだといい、けっこう入れ込んでいる様子。地
方のフリー・マーケットを丹念に歩き、こういうサイトで出品する。いい商売になるかも知れないな。
10月23日(月)
「提督と参謀」 奥宮正武 PHP研究所 1600円
著者は1909年生まれの海軍の航空参謀。太平洋戦争の25人の提督と参謀に、つきあった経験か
ら個人的な評価を。航空出身だけに、大艦巨砲主義の人には辛くなる傾向。真珠湾での景気の良さ
から、半年後のミッドウェイでの大敗、あとは誰がやっても同じ。器量を問うても仕方がない気がする。
10月22日(日)
「この時代小説が面白い!」 「この時代小説が面白い!」を研究する会 扶桑社 1333円
5人のライターが時代小説を、ジャンル、作家、キャラクター、歴史、マルチメディアと、それぞれの切口
から熱弁をふるう。マルチメディアとは、映画、テレビ、コミックでの、時代物のこと。今後の方向にも言
及しているが、コミックやゲームの世界から、小説へ向かう流れが、ほんとにあるのかは疑問だと思う。
10月21日(土)
「テーマ・内容」で探す本のガイド 東京書籍出版編集部・編 東京書籍 1500円
全447ページ。最初に手にした時は「ほーっ、なるほど」という感想。見ていくうちに失望感、けっこう片
寄っていて、同じ著者の続編や、似た内容のものがある一方で、これはというものが抜け落ちていたり
する。最初だから、仕方ないか。そのうち基礎知識の様に、各出版社で競うようになれば、使えるかも。
10月20日(金)
「よくわかる I T ソリューション」 日本総研ソリューション研究会 日本実業出版社 1600円
ぜんぜん、よくわからない。そもそもソリューションとはなんじゃ。でてくる言葉は、英単語の略ばかり。
日本総合研究所の、8人が担当しているんだが、本人たちがわかっているのかどうか。読むことなし。
10月19日(木)
「顔の学校」 小出裕一 NTT出版 1300円
ちょっと古いか1998年刊。「人間の顔」に対して異常に興味をもつ、書籍プロデューサー。例の事故後
の「たけし」の、ひきつった顔の記者会見をみて、顔学を志したそうだ。顔についての、きわめて個人的
かつ社会学的考察を、気楽に読めればいいのだ。今後の「顔学」のさらなる発展に、期待するとしよう。
10月18日(水)
KIDS IN BOOKS 自由国民社 1905円
「子ども読書年」の2000年を記念して、イラストレーター130人が「物語のなかの子ども」を、それぞれ
のイメージで、描き下ろした。日本と世界、古典から現代まで、物語の紹介文までついて2度楽しめる。
どうやってドレを描くか決めたのか?早いもん順できめたんだろうな。なかには取り合いになったりして。
10月17日(火)
完全図説「キャリア官僚大研究」 官僚研究会・著 事務出版 1400円
省庁再編を前に実名入り組織図。さらに各ポストの格付けと次期次官候補、上層部の人物評価まで。
各省庁に採用された数十人の官僚が、最後にひとりだけ残る、出世レース、はたで見てれば面白い。
本人はどうか、運だとあきらめるのか。自分の力がわかってくる年齢だけに納得するのか。訊きたい。
10月16日(月)
「占星学V.S.科学」 上田享矢 国書刊行会 2300円
芸術的美意識を科学では解明できないが、その秩序を西洋占星学で誰にもわかるように分析する、
との前書き。とくに古今の音楽家を各サイン(星座)ごとに、大陽・月・星の位置関係から、その芸術
性を論ずる。そこにあるのは、いかようにでも、解釈できる勝手な講釈。本人が大真面目で笑えた。
10月15日(日)
「県民性やっぱり!大事典」 ハイパープレス著 青春出版社 1100円
この出版社も、どうでもいい本ばかり出すところ。「裏ワザ大事典」や「世紀の大疑問」とか。まあそれを読んだ
わけだから、おおきなことは言えない。血液型とおなじように、県民性も信じているひとは多い。しかし、県という
より、もっと細かく江戸時代の国名によるほうが的確ではないか。つまりその頃から、言われていたということ。
10月14日(土)
「パラドックス!」 林 晋 編・著 日本評論社 1600円
読んでみたら数学の話ばっかりではないか。オムニバス形式に哲学、数学、物理学、確率論、経済学など11
人の学者がパラドックスを語る。まいったなあ、と思いながら終盤へ、社会学の大澤真幸の政治におけるパラ
ドックスで一息ついた。最後の林先生の形式化の限界、というところでの「真の形式化のパラドックス」に納得。
10月13日(金)
「知られざる特殊特許の世界」 稲森謙太郎 太田出版 1600円
科学技術ジャーナリストが特許の世界のあれこれを、フツーなひとにもわかるように書いたもの。意外な人が
意外な特許をとっていたり、またいわゆるトンデモ特許の紹介で笑いをとる。あの民主党の管直人氏の本職、
特許の専門家「弁理士」が軒並み、高収入とは初めて知った。ただ試験は難しいらしい。合格率3%だそうだ。
10月12日(木)
アウトドア選書3「快適登山入門」 (株)地球丸 1600円
はじめての山登りを楽しく安全に実践するために、と副題にある。これを見て、ほんじゃオレも、というオジさん、
わたしも、というオバさんが大勢いるんだろうな。それにここでも百名山だ。その快適度チェック&ガイドだとさ。
そもそも「快適登山」という言葉がいけない。登山に快適性を求めてどうする。この風潮には、断固反対したい。
10月11日(水)
「成川式 小論文の書き方」 成川豊彦 PHP研究所 1143円
合格するにはコツがある! 日頃の心得から、具体的な勉強の方法、さらに試験中の心得まで、いたれりつく
せり。とくに文法と表現、正しい表記、用紙の使い方は、勉強になった。ただ「読書日記」をこういう書き方で
かいたら、誰も読んではくれんわなあ。といって、その場で論文用にキチンと書き分けるなんてできません。
10月10日(火)
「魅力発見!P&B住宅」 【ログハウスプラン】特別編集 婦人生活社 1800円
P&Bとはポスト・アンド・ビームだと。ポストは柱、ビームは梁だ。つまり太い丸太をつかった、野趣あふれる
住宅の紹介。憧れのログ・ハウスも元気なときはいいが、年をとってくると、その迫力あるインテリアがわづら
わしくなる、というのは定説。そこでちょっと、おとなしいP&Bか。住宅産業もつぎからつぎへと考えるものだ。
10月9日(月)
コロナ・ブックス85 明治・大正・昭和「ノスタルジック・ホテル物語」 冨田昭次 平凡社 1524円
万延元年から戦前まで、外国人と上流階級のためのものだったホテルを、当時の絵葉書とパンフレットで尋ね
ていく。イラストやロゴもなつかしいが、建物デザインも和風あり、ルネッサンス風、モダン・スタイル、はたまた
アール・デコと、百花繚乱。しかも巻末には、今も営業を続けるホテルを紹介している。行ってみたいもんだね。
10月8日(日)
「生活様式学入門」 現代生活様式学会 扶桑社 1143円
雑誌「フロム・エーmonday」に連載されたものとか。「吊り革のつかみ方」から「一人きりな夜の睡眠ポーズ」まで
どうでもいいこと32項目のスタイルを分類し探求した研究書とまえがきにある。確かに、いい観察眼、想像力も
十分、文章もうまい、さらにそれぞれのイラストも雰囲気満点だ。けっこう笑えるが、立ち読み30分でOKの本。
10月7日(土)
「プチ哲学」 佐藤雅彦 マガジンハウス 1200円
雑誌「オリーブ」の連載とか。おとなの絵本といったらいいのか。しかし感想は非常にむずかしい。T大でて
電通でメガヒットをとばし、K大の教授に、近年はダンゴ3兄弟で大人気。となればどうしても期待してしまう。
しかし、さまざまのジャンルのものを読んでも思考は枠の中。意外と器用そうで、不器用なのかも知れない。
10月6日(金)
「キャバクラの言語学」 山本信幸 オーエス出版 1300円
「キャバクラの経済学」「キャバクラの心理学」につづく3冊目。そんなに読む人がいるのか。内容的にはそんな
もんかなって感じだから、読んでからやっと、そういえば前作も読んだなと、記憶がよみがえる。まあ他人の趣
味を、とやかく言うことはできないから、なんも言えない。著者によれば、キャバクラのウリは会話だそうである。
10月5日(木)
「破約の世界史」 清水馨八郎 祥伝社 1600円
前々から怪しいとおもっていたが、これほどまでに壊れているとは。それでも最後まで読んではみた。年をと
ると保守的になる傾向はあちこちで見かけるが、ここまで神国日本を臆面もなく言出せるとは、あきれてもの
がいえない。しかも千葉大名誉教授だと。矛盾だらけの文章に年をとるのが恐ろしくなるほど。困ったものだ。
10月4日(水)
ホームページを作ったあとの「トラブル脱出術」 田口美帆 (株)ディー・アート 2000円
さいわいにも大きなトラブルはないが、より見やすく、美しいホームページをつねに追求する必要がある。
のはわかっているんだけど、とりあえずの毎日の更新に神経を使う日々。もうすこし張りきらにゃいかん。
10月3日(火)
「エコロジー時代のRVの選び方・使い方」 安藤 眞 山と渓谷社 950円
1年ほど前、サンケイ新聞に「スピードのでないクルマ」という投書を、載っけてもらった。心理的にスピードの
でないクルマを、普及させるべきである、というわけだがRV車にしても同じ。安全とスピードのいたちごっこは
もういい。できるだけ車重の軽い、シンプルなクルマが結局エコというわけ。まあ乗らないのが一番だけどね。
10月2日(月)
「空撮・日本百名山」 撮影 内田 修・瀬尾 央 解説 佐古清隆 山と渓谷社 1942円
1996年第1刷、これは第4冊目だから、けっこうな人気。「山岳展望」の佐古さんの本職はこちらだったのか。
深田久弥選定の「日本百名山」もすっかり定着し、早登り記録がでるほど。今、山に登り、そして新聞をにぎわ
す遭難も大半が中年以降の人達。そんな山ジジ・山ババにとっては、目標をさがし、夢をかきたてるいい絵本。
10月1日(日)
「インターナショナルスクールガイド」 (株)ザ・イースト・パブリケイション 1800円
大学の同級生の二人の女の子が、カナディアン・アカデミーというインターナショナルスクールに行っていたと
か、そんなことから借りてきました。学費の高さにまずびっくり。私立大学の芸術系なみ。体験記が4編ほど。
子供をバイリンガルに育てることの難しさなど、あっちもこっちも教育は大変。選択肢の少ない田舎は気が楽。
9月30日(土)
「山岳展望ハンドブック1」 佐古清隆 980円
8月17日の「山岳展望ハンドブック2」の前編。山が首都圏中心で馴染みがうすい。となると山岳展望マニアで
ない身にとっては、まるで面白くない。この本、売れるのだろうか?無人島にもっていくにはいいのかも知れん。
9月29日(金)
「ねがい・うらない・おまじないー欲望の造形」 監修 近藤雅樹 淡交社 1905円
茨城県立歴史館での同名企画展のムック。小絵馬、厄除け、供養、お告げ、占い、チャネリング、縁起物など
の集大成。古くからのものはもちろんだが、現代人のヴァーチャルな神様にも言及。かつての民俗社会以上
にアニミズムが実感される現在の世界を指摘する。まあ欲望にはちがいないが、ちょっと大げさではないか。
9月28日(木)
「日本数寄」 松岡正剛 春秋社 2500円
嫌みなくらいの博識の日本文化論。そこでの連想つまり想像力の跳躍を編集と称し、編集工学研究所を主宰と
ある。いずれも美術関係など、ハイブロウな雑誌に掲載したものをまとめたもの。こうした、わかったような、わか
らないようなことも必要なのだろう。ただし文章の間の取りかたが上手なので読みやすい。さすがは編集工学。
9月27日(水)
「とんまつりJAPAN」 みうら じゅん 集英社 1500円
どんどんと発展する男、こんどは和にむかう。「小説すばる」への連載をまとめたもの。日本の奇祭を観に全国
をあるく。とんまな祭りを、例によって「とんまつり」とネーミング。スピードのある文章、臨場感あふれるタッチは、
今後の方向を予感させる。カメラとビデオで記録、さらにインターネットで通販するという。なかなかの商売人だ。
9月26日(火)
「息子を犯罪者にしない11の方法」 和田秀樹・河上亮一・小浜逸郎ほか 草思社 1500円
他に、中山 治・春日武彦・斎藤 環・森口 朗・川島幸希・蔵谷浩司・飯塚真紀子・高山文彦の11人が、いつもの
「子供自慢」のN山氏をはじめ、それぞれ好きなように、昨今の事件の背景を論ずる。読んでしばらくたってから
ジワジワと内容を思い出す。多くもなく、また少なくもない、雑多な論文の集合も、これでいいのかな、と思った。
9月25日(月)
「TOKYO NOBODY」 MASATAKA NAKANO Little More Co.,Ltd 2500円
写真家・中野正貴。人っ子ひとり、いない東京、クルマさえ走っていない繁華街あるいは首都高速、おそらくは
休日の早朝を、8×10のカメラでフィルムに焼き付けていく。たぶん「死」のイメージを感じさせたいのであろう。
見ているうちに現在の東京風景が、もう数十年前のもののように見えてくるのも事実。狙いにハマってしまった。
9月24日(日)
「沖縄ポップカルチャー」 天空企画・編 東京書籍 2300円
沖縄から沖縄の現在を発信、「沖縄カルチャー・ブック ウチナー・ポップ」の続編か。ところどころに散りばめた、
いわゆる有名人のインタビューは賛否両論あり。民芸、公設市場、映画、コミック、泡盛、植生など多様、しかし
けっこうディープな現状報告も。ただ「沖縄」をどう考えるか、アジアの楽園というコンセプトを追求したらどうか。
9月23日(土)
図説「密教入門」 大栗道榮 すずき出版 1600円
弘法大師空海が伝えたという密教を、日本ペンクラブ会員という、高野山真言宗傳燈大阿闍梨がわかりやすく
解説。とあるがなんだかよくわからない。古いだけあって儀式、作法がややこしい。なんか神道のモデルのよう
な感じ。それはそれとして四国八十八ヶ所巡りはやってみたいもの。そうすればすこしは現実感がでてくるかも。
9月22日(金)
ちひろ美術館コレクション「ちひろと世界の絵本画家たち」 講談社 2286円
このところ絵本づいてる。世界の絵本画家64人を紹介。これだけの個性をみるだけでもアイム・タイアドでした。
安曇野ちひろ美術館の、こどものプレイルームにおかれている、名作椅子のこども版にはおもわずニヤリ。岡谷
の「小さな絵本美術館」もいい。職業柄、絵本収集趣味の家内と「絵本とイスのプチ・ミュゼエ」をつくるのが夢。
9月21日(木)
「福田繁雄のトリックアート・トリップ」 毎日新聞社 1900円
毎日新聞日曜版に連載のトリックアートをまとめたもの。意図はよくわかるし、図版も適切でおもしろいんだけど
いまひとつ乗りきれないところがある。芸術作品として、あるいはキッチュな広告として、また仮設物なら、いい
けど、ビルの壁面に細工をするのは好きじゃない。都市景観として、そんなにいいもんじゃないような気がする。
9月20日(水)
自分で建てる週末の隠れ家「キットハウスカタログ2000〜2001」 成美堂出版 1400円
キットで作ろう憧れの「自分空間」。アウトドアへの憧れ、別荘への憧れには根強いものがある。12年前そん
な仲間が集まって、12坪ロフト付きの小屋をつくった。3日間だけ2人の本職を頼んでの手作りで、かかった
費用は220万だった。その後、浴室増築に100万ほど。自分でやるなら、やっぱり2×4だ。おひとつ、どう?
9月19(火)
「都市のエコロジカルネットワーク」 (財)都市緑化技術開発機構・編 (株)ぎょうせい 3333円
人と自然が共生する次世代都市づくりガイド。緑と水は都市計画において人間の居住環境を確保する意味で今
後さらに重要度を増すにちがいない。ここでは、もう一歩すすめ自然環境、とくに生物の棲息を担保するものとし
て、緑と水をとらえている。そのための技術論ではあるが、定量的な目標をどう定めるか、今後の課題だと思う。
9月18日(月)
「幻想に生きる親子たち」 岸田 秀 文藝春秋 1524円
しばらくぶりで読んでみたら、最初のうちは40年前に他界した母への憎しみが未だ解けないというのにあきれ
また、右翼的言動の年寄り硬直思考に驚いていたのだが、途中からなぜか面白くなってきた。これはひとえに
著者の社会現象、あるいは歴史をすべて心理学的にとらえるという、ユニークな発想によるものにちがいない。
9月17日(日)
「彼女たちのちょっと変な気晴らし」 森 響子 双葉社 1300円
音楽による心理療法・アートセラピーにたずさわる著者が、日々の生活の上での55のストレス解消法を伝授
する実用書。しかも心理学的解説もわすれない。彼女でなくて彼であってもいい。まあいろいろやってみるさ。
9月16日(土)
「最後の国境への旅」 リービ英雄 中央公論新社 1900円
なかなかうまい書名だ。外交官の家庭に生まれ、台湾、香港で少年時代を過ごした著者は日本文学研究から
ついに日本語で書く小説家となる。辺境への旅は、日本の東北やドイツから東欧へよりも、中国のそれが最も
印象的。独り旅の本質が 「幼いころの記憶のなかの風景、人々を追い求めること」 だとすれば、それも当然。
9月15日(金)
「明日を想う」 堺屋太一 朝日新聞社 1500円
長男が誕生したとき「小太郎」と名前をつけるつもりでいた。結局、そのすこし前他界した、祖父仙吉から1字を
もらって「仙太郎」となった。そんなことはどうでもいい。本名、池口小太郎の随想集ではあるが、あいかわらず
多面的なものの見方で、あきさせない。未来をどう読むか。それこそ読書する人間のおおきな楽しみだと思う。
9月14日(木)
自然とともに生きる絵本作家「ターシャ・テューダーの世界」 ブック・グローブ社 1900円
アメリカの伝説的な絵本画家の、日本展覧会にあわせてのムック。1915年生まれの、細いおばあさん。古い
ニューイングランドを描く画風も懐かしい。女手ひとつで4人の子供を育て上げ、シェーカー・スタイルそのまま
ガーデニングを楽しみ、自給自足を続ける、現役の画家。そんな生き方に、鳥肌がたつような感動さえ覚えた。
9月13日(水)
「新世代ビジネス知っておきたい60くらいの心得」 成毛 真 文春ネスコ 1500円
ご存知マイクロソフト日本法人の前社長。昼食前30分で読めるほどの軽い本だ。日本企業の行く末をアメリカ
モデルと対比し、示唆するが、この人、根っからの坊ちゃんなんだな。だから発言に重みがないのだ。それより
マイクロソフト株のストックオプションでいくら儲けたの、そんで国税当局からいくら追徴をうけたの、教えてチョ。
9月12日(火)
その道のプロが教える「裏ワザ大事典」 知的生活追跡班 青春出版社 1300円
なぜにこう裏ワザがはやるの?なんというか大変な世の中。話のタネにはいいんだけど、あんまりこういうことに
神経使いたくないんだよね。だけど時として役に立つ場合があるんだわ。でそうそうバカにできないことも事実。
9月11日(月)
「激震!建設業界」 週刊ダイヤモンド特別取材班 前原利行・田中久夫 ダイヤモンド社 1500円
最新データで読む業界の危機分析から主要企業の経営健全度まで。上場建設業があっけなく倒産する昨今の
業界事情。あたらしい経営健全度指標「Y評点」によりランクづけする。かつて勤めた地元某建設業は意外に評
点が高いが、シビアな建築部門にくらべ、土木はまだまだ意識がひくい。公共工事の見直しにどう対処するか。
9月10日(日)
「図書館読本」 別冊・本の雑誌13 1500円
小学校以来のつきあいの、市立飯田図書館は、追手町小の道をはさんで向かい側にある。ほとんど毎日、借り
に通っている。本の中身は、予算が少ないというのと、体力勝負という内輪話。これからは瀧本さんに「このごろ
新刊が少ないじゃないの」と嫌味をいうのはやめよう。これだけの新刊が読めるんだから、飯田図書館に謝々。
9月9日(土)
「朗働の時代」雇用革命が人と企業を変える 玄間千映子 太陽企画出版 1600円
日本企業が自信をうしなって、そのあたらしいモデルをアメリカに求める人も多いのだろう。それに答えるべくアメ
リカ留学した女性コンサルタントが鏤々のべるのだが、いまひとつ現実感が感じられない。多民族社会とニッポ
ン・ムラ社会とでは、職業認識、労働意識に違いがありすぎる。はたして「朗働」となりうるのか、道は遠そうだ。
9月8日(金)
「和紙のある暮らし」 太陽編集部・コロナブックス編集部 編 平凡社 1524円
表紙と冒頭にイサム・ノグチのAKARIシリーズ。ジャパネスク・スタイルのインテリアとして和紙はかかせない。
そこから越前の手漉き和紙の里へ、さらに京都の和紙専門店へ、ついで古筆の求めかたまで。あるいは和紙
をつかったインテリアから、小物、雑貨、アートも。しかし全編に流れるジジイ趣味を肯定するか、否定するか。
9月7日(木)
「あれば買いたい!」 全国ホンネ公募委員会・西川りゅうじん・中本繁実 かんき出版 1500円
なぜないの?つくらないの?・まだない商品 欲しいサービス・厳選!200アイデア・ちょっとの工夫でヒット商品
がうまれる。とキャッチフレーズだらけの賑やかな表紙。なるほどと思うものはほんのひとにぎり。あとは商品化
しても、最初はいいがそのうち不要品として、納戸の片隅にほったらかしになる運命。これ以上ゴミを増やすな。
9月6日(水)
「悪臭学・人体篇」 鈴木 隆 イースト・プレス 1500円
書名からして強烈。香料会社に勤務する著者が人体各部からの臭いを文化人類学的に語る。目次を書くのも
遠慮したいほど。しかし仏文出身、文章は格調高い。たとえば精子はなぜ前進するのか、匂いを感じているん
じゃないか、などの仮説も。いわゆる悪臭の研究は、生物学の新しい地平を開くものとして確信しているらしい。
9月5日(火)
「これがヴァイオリンの銘器だ!」 佐藤輝彦 奥田佳道・文 音楽之友社 2000円
華麗なるイタリアン・オールド・ヴァイオリンの世界。ニコロ・アマティから始まるヴァイオリンの聖地クレモナの職
人の系譜。ストラディヴァリを筆頭に銘器を写真で紹介。素人にはその違いはわからず。さらに楽器商への聞き
書き形式をとっているのためか、文章にいまひとつ明快さがない。高校の剣道の先輩がクレモナの工房にいる。
9月4日(月)
「妖精辞典」異世界からの来訪者 篠崎砂美監修 ソニー・マガジンズ 1980円
コンピューターゲームのキャラクターとして、妖精や怪物が必要とされた。世界各地の伝説伝承が原料とされ
適当に加工されてきた。次第にそれはゲームやファンタジーによって別のイメージがつくられ、本来の姿から
かわることもしばしばある。この本は原点に立ち戻る、それら妖精、怪物の解説書。でもちょっとマユツバ的。
9月3日(日)
「ミュージアムショップへ行こう!」 山下治子 (株)ミュゼ 1600円
1月21日の「ミュージアム・グッズ」というムックはけっこう楽しめたが、これはなんだか空気みたいにうすい本。
副題に「そのジャーナスティック紀行」とあるが、なんのことやら意味不明。つまり、視点が定まっていないのだ。
9月2日(土)
「アジアの楽園ビーチ&ホテル」 増島 実 PARCO出版 1900円
全編ブルーシー・アンド・ホワイトビーチ。楽園写真家という結構な職業。本人に訊けば、「ひとが優雅に遊んで
いる眼の前で働く因果な商売」というはず。そんなことはない。10日ビーチでのんびりして、飽きてきたころ残り
4日を仕事すればいいんだから。貧乏性の日本人にはちょうどいい生活じゃないのか。それにしても羨ましい。
9月1日(金)
よく解る「ニッポン崩壊地図入門」 高田明典 夏目書房 1700円
文系の修士をから理系の博士課程を終えたという守備範囲の広さを誇る著者が、日本の崩壊相関図を提示。
しかしそれがどうしたというのだ。悲観論に読んでいて気が滅入るばかり。とうとう最後までいって「崩壊を食い
止めるために」と、わけのわからない結論に、ついに怒りが爆発。本人が利口と思っているだけに始末が悪い。
8月31日(木)
「お寺の事情」アメリカ人民俗学者が見たニッポンの寺 リチャード・アンダーソン 毎日新聞社 2000円
昭和21年生まれの著者は航空技師から変転の後、博士号を取得、都内某本山に美術館建設の助っ人とし
て4年間暮らす。そのあまりにも、日本的ムラ社会の典型として、さらに権謀うずまく組織のなかでの外国人
にとって貴重な経験を、淡々とおもいで語りする。米国では民俗学自体が退潮ムードらしい。がんばってね。
8月30日(水)
自分で造る「家造りマニュアル」もう工務店は要らない!! 秋山修二 (株)データハウス 1400円
住宅のつくりかたは以前にくらべ多様にはなった。ところが施主はかならずしも満足されてはいないようだ。だ
から、こういう本がでる。著者は経験25年の設計屋。住宅の設計から工事完成まで、各種データをみせなが
ら素人むけ指南。でも無理じゃないかな現実には。それより、信頼できる設計屋をどうしてみつけるかが問題。
8月29日(火)
「新世紀デジタル講義」 立花 隆・南谷 崇・橋本毅彦・児玉文雄・安田 浩 新潮社 1600円
東大での立花ゼミ講義録。第1章の立花先生の情報原論はじゅうぶん読ませたが、それ以降は期待したほど
でもなかった。コンピューターの歴史ではBASICとのつきあい、そしてMZ-2000で子供とあそんだ日々を思い
出した。しかし、いまもってCADソフトのOSにMS−DOS 3.30Bを使用しているのはどう判断したらいいのか?
8月28日(月)
「中国民家探訪事典」 鈴木喜一 東京堂出版 2900円
武蔵美の建築の先生による、事典というにはあまりにも情緒的な文章のつづく探訪記である。じっくり時間がか
けられると思ったのに、1時間ほどで読書終了。バックパッカーの沈没の聖地として名高い「大理」や「麗江」が
この先生の眼には「観光地化した」と惜しむ対象となる。全般的にそういう、なくなりつつある民家への嘆き節。
8月27日(日)
川上 完の「もうフツーのクルマは愛せない」 二玄社 1200円
おおげさなタイトルは新潟出身のカメラマン。現在、湯沢のログハウスに在住だと、優雅なモンダ。戦後混乱期
に出会った車への思い出を軸に、自動車の歴史のなかで、埋もれていく珍車へのオマージュ。3000台のミニ
カーの蒐集者でもあるという、とことんクルマが好きな人。たしかに現在のクルマ、みんな同じかたちではある。
8月26日(土)
「東京私生活」 冨田 均 作品社 2800円
散歩者を自称する下町出身の著者の消えゆく東京風景への鎮魂歌。しかし、ここまでこだわるのか、同世代な
がら地方出には理解不能。喫茶店の項で、最初にお茶の水、とちのき通りの今はなき「マロニエ」を紹介。当時
店内に電話がなく待ち合わせの時、苦労した。この本によれば店の前に赤電話があったというが記憶はない。
8月25日(金)
「礼儀覚え書」 草柳大蔵 グラフ社 1400円
グラフ社の社員が著者のいままでの著作のなかからマナーとルールに関する文章をピックアップし、まとめたと
いうズルい本だ。内容はたしかに肯けることばかりであるが、著者と現代の若者をつなげる立場の年代としては
「うーんここまではなあ」と思えるところも少なくはなかった。結局いかにひとの気持ちを想像できるかということ。
8月24日(木)
奇想天外武器「アクション映画大全」 渓 由葵夫 小学館 1500円
奇想天外シリーズだが、内容は拳銃・ライフル類をはじめとする武器のリサーチをアクション映画への思い入れ
とともに語る。しかし大全とはとてもいえないし奇想天外でもない。大藪春彦に心酔するだけに知識は豊富だが
それだけに解説が長々と続く傾向。あるていど、知っているひとは「OK早く次へ進んでくれよ」ということになる。
8月23日(水)
「日本の旅」文化事典 辻原康夫 トラベルジャーナル 1800円
地理、地誌に強い雑学ライターが国内旅行の案内書として書き下ろしたもの。信仰、祭り芸能、美術建築、食
生活、工芸品から街道、民謡、文学さらに温泉、遺跡、地域性まで網羅している。ヒマのある、お年寄り向け。
全般にどうということはないが、最後にでてくる、県民性あるいは、東日本と西日本との対比が興味をひいた。
8月22日(火)
「人は見かけによるのです」 池田ゆう 銀河出版 1300円
メンズデザイナーが大人の男のオシャレについて語る。女性じゃあるまいし年齢くらい紹介すべきではないか。
石津謙介を師と仰ぐというから、同年代ではあるのだろう。東京へでたのが、アイビーの全盛期、それ以来スタ
イルはかわりません。オシャレは自分自身のためという本質があるためか、一歩まちがえば滑稽という事態も。
8月21日(月)
「こころの時代」解体新書 香山リカ 創出版 1500円
月刊誌「創」への連載をまとめたもの。例の神戸の事件から、大相撲大阪場所の女人禁制問題まで、テレビの
ワイドショー的なネタをまじめに考察している。精神医学の学会内部の話などがでてきて、なかなか興味深い。
社会全体が、心理学者になってしまったかのような御時世に、精神医学者として真剣に悩む、あとがきが重い。
8月20日(日)
Jin Satoの「LEGO MindStorms鉄人テクニック」 オーム社 1900円
プラスチックの組み立てブロックLEGOをつかったロボットの製作指南書。個々のブロックの説明、組み立て方
各種センサーと駆動モーターの制御のプログラム。さらには組立図を作成するためのソフトとその使い方までと
至れり尽くせりだが、素人にはちょっと難しい。世界中に愛好者がいるらしく、工学部の機械屋さん向け教科書。
8月19日(土)
「1プードの塩」ロシアで出会った人々 小林和男 NHK出版 1400円
元NHKのモスクワ支局長のロシアでの交遊録。家政婦からゴルバチョフまで、エリツィン嫌いの著者がその
おもいでを語る。ときはまさにソ連の崩壊という時期、実名入りでの文章は、なるほどこんなことがあったのか
とうなずける。プリセツカヤはたまたロストロポーヴィッチと派手な登場人物、だいたいこの人カッコ良すぎる。
8月18日(金)
「新世紀の美徳 ヴァーチャス・リアリティ」 宮崎哲弥 朝日新聞社 1700円
前半は週刊文春の連載、後半は新聞の論壇時評をまとめたもの。守備範囲の広いひとだ。それにスピーディ
な文章といったら誉めすぎか。新聞や放送などメジャーなメディアだけでなく、いろんな意見があるということ
は知っておく必要がある。小林Y某とケンカ中らしいが右も左も取り込むのがうまいから皆さん気をつけてね。
8月17日(木)
「山岳展望ハンドブック2」 佐古清隆 980円
山に登れば、だれでもその展望を楽しみ、見える山の名前を知りたいと思う。そこで山岳展望というマニアが出
現。足場もあるし天候もある、360度のパノラマは写真では不可能で作図が必要。著者はパソコンなどの展望
図より実際に足で見たいという、自己満足派。飯田市のシンボル「風越山」が、ときどき出てきてうれしくなった。
8月16日(水)
「世界の公共広告」差別虐待暴力エイズ麻薬セクハラ地雷環境飢餓 金子秀之 研究社出版 2400円
公共広告というジャンルがある。商品を買ってもらう必要はないわけだから、いきおい表現はキツくインパクトの
あるものが主流となる。まさにベネトンのキャンペーンはこの手法なのだ。しかし最近はソフィスティケートされた
作品が多いという。そこのところをもっと突きつめてもらいたい。時代じゃない、デザインそのものの問題として。
8月15日(火)
「たのしい不便」大量消費社会を超える 福岡賢正 南方新社 1800円
毎日新聞の福岡総局の社員が、自ら不便な生活を設定、2年にわたる体験記。10数年前なら、諸手をあげて
賛成しただろう。その後、バブルが終わり、男子2人が大学に、デフレの恐さを身にしみて感じる。結果としての
経済環境の縮小には、ひとつ覚えのワークシェアリングで対処できると著者はいう。夫婦2人なら、どうでもなる
が教育費が一番のネック。それを新聞社という安定した立場、子供も小さいいまの発言に説得力は感じない。
8月14日(月)
「RE DESIGN 日常の21世紀」 (株)竹尾 編 原 研哉/構成 朝日新聞社 3000円
20世紀は戦争の世紀であるとよくいわれるがデザインの世紀でもあった。この世紀末の身近な物品を、斯界の
建築家、デザイナー、写真家、プランナー、物書きにあらためて考えていただこうという趣向。しかも紙屋の主催
だからすべてが紙製品として美しく製作されている。皆がデザインする中で、D.助川の日めくりが笑いを誘った。
8月13日(日)
岩波科学ライブラリー「魔球をつくる」究極の変化球を求めて 姫野龍太郎 岩波書店 1000円
ピッチャーの投球をスーパーコンピューターで解析する。そこでは硬球の縫い目のわずか1ミリの高さが、複
雑な変化を生むという。さらに新魔球、ジャイロボール(進行方向に直角に回転する、ライフルの弾のような)を
披露。球速が高い上に落ちるというタマ。西武、松坂のいわゆる落ちるスライダーというのがそれに近いという。
8月12日(土)
「歌舞伎ことばの辞典」 服部幸雄監修 赤坂治績執筆 講談社 1200円
講談社ことばの新書NO.18。江戸時代を代表する藝能としての歌舞伎、そこでの用語の辞典ではあるが、いま
さらながら一般化したことばの多さに驚かされる。飯田下伊那周辺での、農村歌舞伎の舞台の数の多さからも
江戸後期の大衆の娯楽として、人形浄瑠璃とともに、親しまれてきた様子がうかがえる。現在でみればTVか。
8月11日(金)
「ブックオフと出版業界」 小田光雄 ぱる出版 1800円
構造不況の出版・書店業界を尻目に高成長を続けるブックオフ。出版界に身をおくだけにブックオフの揚げ足と
りに終始する。再販制度に問題ありとふれるものの抜本的な対策は示されない。つまり、しばらくはこのままと
いうこと。ただしずっとそうかはわからない。本は買わない主義、図書館から借りる主義、だから関係ないねえ。
8月10日(木)
ショトル・ミュージアム「琺瑯(ホーロー)看板」 オオタ・マサオ 小学館 1500円
寒い駄ジャレを全編に連発、困ったオヤジだ。懐かしき昭和30年代を訪ねて、と副題にあるが、昭和24年生ま
れの著者にとっては、たしかに心の原風景の一つでもあるのだろう。本業は写真家。そこにでてくるのは、まさ
に日本の田舎の光景で、戦後の時間にタイムスリップする。素朴な風景だよ。社会も、人も素朴だったよなあ。
8月9日(水)
講談社+α新書「風水の家相方位学 買い方・建て方・住み方」 小林祥晃 840円
Dr.コバの風水インテリアの解説。家相学の必須のポイントはおさえているようだ。ただここでの風水の考え方
はいわゆる風水術として、そうとうフレキシブルなほうだ。さらに凶相も、インテリアで吉相にできるという、ポジ
ティブ思考が人気の所以なのだろう。常識的な平面計画をたててさえいけば、ほぼ条件はクリアできるようだ。
8月8日(火)
「経済ってそういうことだったのか会議」 佐藤雅彦・竹中平蔵 日本経済新聞社 1500円
この本は第7刷目。あの雅彦さんと平蔵さんの本となれば、読まないわけにはいかない。まあ図書館の新刊
コーナーに並んでいたからだけれども、平日の昼間一気に読んだ。経済学というよりも世界文化論あるいは
社会論というべき。それほどまでに、経済が現代社会を支配しているということ。そのなかで、経済学の目的
は貧困をなくすということ、さらに人間が生きていくためには達成感が必要、という両端の問題が気になった。
8月7日(月)
「杜氏になるには」 石田信夫 ぺりかん社 1270円
[なるにはBOOKS]シリーズ弟99巻目。杜氏を希望するひとがそんなに多いとは思えないが、非常にわかりや
すい、高校生のための進路アドバイスの本。大企業の社員としての通年雇用のほかに、小規模の蔵元の季節
蔵人として、夏の半年を別のことをするという、生き方もまた魅力だ。いずれにしても、ものづくりは楽しいはず。
8月6日(日)
別冊宝島・自衛隊の「戦争」 武器はあるけど弾はない!?ニッポンの防衛 857円
軍事評論家、軍事ライターが10人集合、ニッポン自衛隊をあらゆる角度から分析、その実力をさぐる。旧ソ連
から、北朝鮮、中国へとシフトした仮想敵国との軍事対応シミュレーションは迫力不足だが、巨大なシステムと
しての防衛を考えれば、少しこころもとない状況をあぶりだす。右でも左でもない冷静な軍事への対応が必要。
8月5日(土)
「学ばず教えずの大学はもういらない」 大宮知信 草思社 1700円
内容は東大、慶応、早稲田の悪口ばかり。ウチは幸いにも関係ないからいいけれど、本人や子弟が行って
いればさぞやアタマにくるだろうな。少子化の時代を向かえ、大学教育がどうあるべきか、議論の的である。
たしかにここに書かれていることはあたっているとは思う。しかし文章に品がないというか、後味がよくない。
8月4日(金)
「草のちから藁の家」 INAXギャラリー INAX出版 1500円
ストロー・ベイル・ハウスつまり藁を圧縮し長さ1m、厚さ50cm、高さ35cmのブロックにし、それを積み上げてつく
る家である。土壁を塗るとサンタフェ・スタイルの住宅になる。こういう作り方もある。断熱性の良さは抜群、エコ
ロジカルな材料でもある。あの「わら1本の革命」の福岡正信御大も一筆。後ろ1/3は茅葺屋根の現状報告だ。
8月3日(木)
クラシックカメラMiniBooks5「使うキャノン」 竹中隆義 双葉社 1700円
数寄物だけのものだったクラシックカメラが人気となり、デパートで定期的にひらかれるカメラ市も毎回盛況だ
という。ニコンとならびキャノン派というファンも健在。当時からニコンしか眼中になかったのでF-1の存在くらい
しか意識がなかった。高校のころは7(セブン)のF0.95のレンズの出現におどろいたものだ。あれなら欲しいよ。
8月2日(水)
「作家の値うち」 福田和也 飛鳥新社 1300円
そのうち図書館にも入るだろうと、本屋で立ち読みをしていたが、手垢にまみれて返却コーナーにあった。エン
ターテイメントと純文学それぞれ50人の作品にたいし、きわめて独善的な点数批評。しかし豊富な語彙と難解
ではない長いセンテンスはさすが。作家も大変だが同感するところも大。小説を読むのは面倒になったこの頃。
8月1日(火)
「荒俣宏のデジタル新世界探検」 日本経済新聞社 1600円
期待して借りてきたにしては意外とおもしろくなかった。どうも最近のアラマタ先生はさえんなあ。インターネット
が世界を変えるという話はすでに、あちこちで語られてはいる。アラマタ流のマニア度がどこにでてくるかという
期待はちょっとだけの満足。あちこちへのインタビューはいいから、もっとマニアックにつきすすんでほしいのだ。
7月31日(日)
「召喚師」陰陽師からデビルサマナーまで 高平鳴海監修 不動館・大林憲司・糸井賢一 新紀元社 1800円
怪しげなシリーズの24巻目。ゲーム人口がふえて、こういう本来ならマイナーな知識を売り物にする本をみか
ける。しかし内容にはなにか薄っぺらな感じをうける。それにしても、ちかごろの安部晴明の人気には驚くのみ。
7月30日(日)
ニュートン別冊 血液型・海流で探る「日本人のルーツ」 竹内 均 ニュートンプレス 2040円
竹内御大がいままで科学雑誌ニュートンに執筆した9編をまとめたもの。ただ集めただけだから同じ内容が何
度もでてくる。図版もひどいのは4度同じ物を使用。ちょっとこれはないんじゃないの。たしかに日本人の起源
としていままでの研究成果をまとめ定説としたことは認めるが、内容をキチンと確認し編集すべきではないか。
7月29日(土)
「野垂れ死に人間図鑑」 山本隆司 同朋社・角川書店 1500円
ターザン山本って人は浅学にして知らなんだ。ようは男の美学を言いたいらしいんだが、死のイメージの捉え
方が通俗的。古今の有名人を題材にしているんだが、史実も見方も一面的。おいおいほんとかよ、という感じ。
歳もあまり違わないのに、つねに違和感をおぼえた。ちょっとちがうんじゃないの。つまり田舎者なんだよなあ。
7月28日(金)
「戦後日本の大衆文化」 鵜飼正樹・永井良和・藤本憲一編 昭和堂 2400円
学校給食・冷蔵庫・ファミリーレストラン・結婚式と披露宴・子ども部屋・ゴールデンウィーク・ペット・健康法・化粧
野球・海外旅行・大道芸・写真・子どもの遊び。大阪万博で戦後は終わりと考えているものにとって、なぜ戦後
で、大衆文化なのか、博士課程院生の論文の集合からは見えない。大上段に構えたにしてはつまらなかった。
7月27日(木)
夢と遊びの仕掛け人になる!「絶対!ゲーム」 日経事業出版社 1300円
日経あこがれの業界SERIES。最初の2択チャート「あなたはアーティスト系かプロデューサー系か」で御宣託。
答えは「どちらにも向いていません。あきらめましょう」ですと。麻雀ゲームだけやってる程度ではそりゃ無理や。
7月26日(水)
「21世紀 日本のデザイン」 三菱総合研究所・編 日本経済新聞社 1600円
副題に「豊かで創造的な社会をつくる」としているが、三菱総研が、総力をあげてとりくんだ意欲作。全体的には
楽観論が主だが、各論とくに政治、財政についてはそうとうに厳しいみかた。とくに未来を述べるためには、しか
たないとは思うけど、あまりにも外来語が多すぎて、ついていけないところも、あちこちに。なんとかならないか。
7月25日(火)
「悩ましき買物」 赤瀬川原平 フレーベル館 1500円
今回はゲンペイ先生の買物日記。カメラ、ナイフ、万年筆、腕時計はわかるにしてもバッグ類が好きとは意外。
DCカードの会員誌への連載をまとめたものだが、それぞれの鉛筆スケッチだけに価値あり。一時、洋画家の
野田弘志の鉛筆細密画にあこがれ「My FavoriteThings」として描きたいと思っていたのに先をこされた感じ。
7月24日(月)
商業界5月号別冊「ユニクロ&しまむら完全解剖」 月泉 博著 販売革新編集部編 1600円
この不況下に高成長をつづける、あまりにも対称的な衣料2社の構造にメスを入れる。旬の素材に加え、まこと
に活きのいい文章。W大出の柳井、K大出の藤原の2社長も、結局は運がよく、決断力が冴えていたということ
最初からいまの経営形態を目指していたわけではないのだ。問題はこれから。どこまで成長をつづけられるか。
7月23日(日)
言われてみればミョーに気になる「世紀の大疑問」 雑学博士協会・編 青春出版社 1200円
おおげさだっちゅうの。ひまつぶしにはちょうどいい雑学本だが、それにしてもどうでもいいことばかり。
7月22日(土)
「日本人の言い伝え ものしり辞典」 谷沢永一・監修 大和出版 1680円
ほぼ全てが民俗学の世界。季節であり、行事であっても、そこには必ず信仰がある。つまり生きるということと、
子孫を残すということが、人間としての最大で、最後の願いであるわけだ。それは現在においても、いささかも
変わっていないはず。ただ喰える余裕がでてくると、余計なことを考えることになる。原点に戻ってみたいもの。
7月21日(金)
「日本銘酒紀行」全国のこだわりの酒を求めて マガジン・トップ編 山海社 1600円
山海社こんな本も出してるのか。私の創る旅シリーズとして48の蔵元を紹介する。いつも杜氏の仕込み風景を
見て思うんだけど、あの汗が日本酒の旨みになってるのかな。「つぎは日本酒ヨ」 昨年の中学同級会で医者の
奥さんになった、ワイン通の弁。そういうものかいな。湯上がりのビールのうまさだけで、いいような気がするが。
7月20日(木)
レスター・ブラウンの「環境革命」 朔北社 1600円
1974年のワールドウォッチ研究所の設立以来の、環境と人間の総合的な研究と提言は、まさしく世界をリード
し続けてきた。それはノーベル平和賞にも値すると思われる、レスター・R・ブラウン博士の功績だ。10数年ぶり
に著作を読んでみたが、当時よりも数量的に把握が進んでいて環境研究の成果を感じた。今後も期待したい。
7月19日(水)
「建築のかたち百科」多角形から超曲面まで 宮崎興二 彰国社 3000円
ちょっと超えた感じのする京大大学院の建築の先生が、数学的空間図形から建築形態を論ずる。皮肉たっぷり
の語り口でこの先生の講義はさぞや面白いと思われる。モニュメンタルな建物ほど、数学的な形態をとるのは、
著者にいわせれば当然、そこから3次元立体を超える4次元立体を想像させることが、建築の姿であるという。
7月18日(火)
「役所の経営改革」 武田安正・後藤 浩・吉竹正樹 日本経済新聞社 1600円
ハイパフォーマンス・ガバメントを実現するためのアンダーセン・コンサルティングのチームによる提案。ここでい
われていることすら実現していない企業のほうが、現在は多いだろう。しかし、すでに進行させている自治体も
あるようだ。社会全体が変わらざるをえないのだ。それが、日本人のムラ意識をかえさせるものと期待したい。
7月17日(月)
「HUJIKAKE METAL OBJETS」 藤掛正邦 (株)ARTBOXインターナショナル 2600円
現代美術、藤掛正邦の作品集。真鍮をハンダで接合し、フォルムをつくりあげていく。まさに工作大好き少年が
飛行機を、汽車を、クルマを、船を感性のままにつくりあげる。電通でコマーシャルを、つくっていた経歴からか
なんとなくわかりやすいし、グラフィック的だ。真鍮線でかたちづくったジャック・ダニエルのボトルがいいと思う。
7月16日(日)
「器物語」知っておきたい食器の話 ノリタケ食文化研究会 中日新聞社 2000円
新聞連載を元にまとめたもの。たいへんわかりやすい食器論。陶器、磁器、漆器、ガラス、カトラリーほかの
小物まで。洋食器のみならず和食器から、テーブルコーディネイト、ブランド食器まであますところなく説明。
食器の話は好き嫌いで片寄りがちなだけに貴重だ。事典とまではいかないが、入門書としてはまことに秀逸。
7月15日(土)
「海上自衛隊パーフェクトガイド」 GAKKEN 2000円
海上自衛隊の全艦艇をはじめとして主要装備をカラー写真で紹介する。艦隊や地方隊の編成・配置も網羅
さすがパーフェクトを自称するだけのことはある。軍艦好きにはたまらないが、ここでも旧帝国海軍派と現在
の海上自衛隊派とにわかれるんだろうな。飛行機好きとしてはやっぱり航空母艦がほしいところだが無理か。
7月14日(金)
2000年版「おもしろ科学モノ情報200選」 後藤富治・村上 聡 日本書籍 1600円
理科好き少年のための、科学グッズに関する情報。化学、物理、地学、生物の実験用品や材料の専門商社、
小売り店、工場での入手方法など足で集めた資料がずらり。ただしそのほとんどが首都圏で、地方の人には
あきらめてもらうしかない。ただ、こういう理科物をたのしむ余裕が、いまの小学生、中学生にもほしいものだ。
7月13日(木)
「ART SHOP」Get art for your life. 新紀元社 1600円
アートとクラフトの作家と作品とオーダーのしかた、連絡先を53人紹介している。オリジナルのアート雑貨、個性
的なラインアップと自賛しているんだけど、いつものとおり「ちょっとね」という抵抗感。つまり売れない設計屋とし
ての感情がでてしまう。おそらく注文はふえるわさ。でもそのあとどうなるんだろう。そんなことは余計なことか。
7月12日(水)
「オタク・ジャポニカ」仮想現実人間の誕生 エチエンヌ・パラール 河出書房新社 2200円
仏ジャーナリストに よる日本社会論。消費社会が、行きつくところまでいったなかでの集団国民性、母親との
密着性と、もう一方の画一的な勉強ストレスがオタクをうむという。岡目八目的に明快に分析し、カルトの出現
と関連させている。世紀末の徒花かどうかは不明だが、いくらか現代若者の苦悩がわかったような気がした。
7月11日(火)
「赤瀬川原平の今月のタイトルマッチ」 ギャップ出版 1600円
いろいろ考えつくひとだ。今回は本のタイトルだけで書評するという。最初のうちはギクシャクしていたが途中か
ら「書名論」とわりきって、おもしろくなった。たしかにうまいタイトルのつけかたってのはあるけど、やっぱり読ん
でみて、もう一度、タイトルー書名を、あじわってみるというのが、筋じゃないかと思うのだが。まだまだ続くとか。
7月10日(月)
「電磁場からどう身を守るか」 エレン・シュガーマン 緑風出版 2200円
県内あちこちで送電線新設問題が起こっている。そこからの電磁場が発ガン要因になってはいないかという
心配。飯田市環境審議会委員としては、景観論からの意見を述べたが。住宅内にもその危険があるという。
これはシックハウスの次のテーマになりうる。てごろなガウスメーターを開発すれば、いい商売になりそうだ。
7月9日(日)
株・不動産「知識ゼロからの金儲け」 島田紳助 幻冬社 1200円
金儲けには興味はないが、というより日々の生活で余裕なしということで、あまりタメにはならないようだ。むしろ
紳助の人生哲学あるいは金儲けの心理の開陳といったほうが、内容的には適切。彼のアタマの回転の速さに
は、ひごろから敬服するばかりだが、わざわざ買って読むほどのことはないだろう。本屋での立ち読みで十分。
7月8日(土)
「ひとり勝ち社会」を生き抜く勉強法 中山 治 洋泉社 1500円
怪しげな書名と著者。でも今回、意外にいいこと言っている。とくに日本論、日本人論としては、新鮮な見方で
共感を覚えた。その中で本は買わなきゃいけない、図書館の本を借りて読んでも知識にはならない、という点
については大きく反論しておきたい。実用書としてよりも、生き方、哲学書として読んだほうがいいとも思った。
7月7日(金)
定年夫婦の生き方・暮らし方「夫とふたりきり!」これはもう恐怖です 中村メイコ 青春出版社 1400円
図書館でチラッとみたらウチと同じようなことがかいてあるので借りてきました。ウチらよりも10年年上になるん
だけど、子どもの結婚、孫はべつとして、ずいぶん身につまされる話ばかり。年代的には、戦後のくらしを経験し
ていて、言い分もよくわかる。けっこう泣かせるほどにウマイ文章だし、家内にも勧めたいものだ。売れると思う。
7月6日(木)
「鬼瓦 ルーツを尋ねて」 玉田芳蔵 東京書籍 3000円
定年退職した山形の元校長のライフワーク。丹念に寺院の鬼瓦を撮影し、その変遷をたどる。さらに韓国、
中国とその起源をもとめる。一方でギリシャ、ローマそしてトルコまで団体旅行に加わりながらも自分の目
での屋根の棟飾りの確認を進める。そんなに売れる本じゃないから、しっかりと退職金をつぎこんだ様子。
7月5日(水)
「人間住宅」 環境装置の未来像 INAXギャラリー INAX出版 1800円
このタイトルはないだろう。パロディとしてならわかるけど、住宅は生活の器なんだから。ここではそれを快適
健康、エネルギーの環境装置として考え、実験住宅での成果を紹介している。著者の一人、鎌田さんは先輩
で、当時の住宅公団とのおつきあいでも、お世話になった。ずっと調査から設計の本道をあるいてきたようだ。
7月4日(火)
女の子に愛された「ファッションドール大図鑑」 純子セラフィーナ 同文書院 1500円
1950年代中頃よりあらわれたバービーをはじめとするファッションドールの世界。そのころ男の子は西部劇に
夢中で、家庭をもってからは男子2人、したがって縁がなかった。日本におけるリカちゃんもくわえ、その資料は
カラーで貴重。もはや完全に、コレクターズアイテムになってしまった。世相を思いだしながらページをめくった。
7月3日(月)
「戦国合戦の虚実」 鈴木眞哉 講談社 1500円
このアマチュア歴史家は、本がなぜ読まれるのかを理解していないようだ。通説、定説のたぐいは面白いから
そうなったのであって、それを事実と違うと声高に言っても、何の面白味もないのだ。自慢げな文章はテンポも
悪く、終始フラストレーションを感じながら読んだ。おそらく、2度とこの著者の本を、手にすることはないだろう。
7月2日(日)
「モーション・タイポグラフィ」 ジェフ・ベラントーニ マット・ウールマン グラフィック社 4500円
有名なソウル・バスの映画タイトル「黄金の腕」から、広告、アニメーションそしてデジタルテクノロジーと、文字
が踊りだす。しかし後半は色の氾濫で意識が埋没。その中で文学などの大量の文字情報を紙面を傾けること
によりパースをあたえて表示する提案に興味をもった。著者はいずれも大学コミニュケーション学科の助教授。
7月1日(土)
[SUPERFLAT」 村上 隆 マドラ出版(株) 2300円
芸大ドクターのアーティストが「super flat」という概念から日本の芸術、美術、ARTを集め、解説。現代美術は
なんでもありの社会学だが、それ以上に未来を描きだすもの。しかしながら、感性が低いのか、それを感ずるこ
とはできなかった。ただヒロミックスの写真が意外にいいと思った。いままでの彼女の写真のなかではじめて。