オール読書日記 2001年下半期
12月31日(月) C
「バタフライ・エコノミクス」 ポール・オームロッド 早川書房 2300円
〈複雑系で読み解く社会と経済の動き)というわりには、良くわからない。監修の大阪市大
の経済学教授はともかく、訳者もわかっているとは思えない。1994年の前作「経済学は
死んだ」で評判になったというが、つまりは経済予測のモデルはできないということらしい。
さて大晦日、2001年も暮れていく。明日からどんな年が始まるか、元気でいきたいもの。
12月30日(日) B
「私が、答えます」 竹内久美子 文藝春秋 1333円
週間文春への連載だ。例によって、動物生態学から、読者の疑問に答えていく。飲み屋
の話題にはうってつけの質問と回答が並ぶ。とうぜん男と女に関するものが多くなる。い
ちおう、なるほどと思わせるが、それより寄籐文平によるイラストがとぼけつつ笑いを誘う。
12月29日(土) C
「地図で知る世界の大都市」 正井泰夫・監修 平凡社 2600円
中学生向けの、世界の大都市94の都市地図。13万分の1くらいの全体図と4万あるいは
2万5千分の1の詳細図にくわえ、ルビを振った都市の解説、みどころなど。東京をいれる
べきではなかったか。それと小さくてもいいから、代表的なアングルの写真が欲しかった。
12月28日(金) C
「大江戸番付づくし」 石川英輔 実業之日本社 1700円
江戸時代の後半、相撲の番付の形体を借りて、さまざまなものをランキングする、見立番
付というものが流行ったらしい。江戸の商売・衣食住、人情・常識、物見遊山など、いまに
残るそれらを、江戸文化にくわしい1933年生まれの趣味人が解説する。江戸好き向け。
12月27日(木) C
「町工場職人群像」 松本俊次 写真集 大月書店 2300円
定年退職後写真家を志した元民主商工会事務局長。90年以降の大田区の町工場の職
人たちのモノクロ写真。鎌田、大森周辺の糀谷、六郷、羽田あたりに密集する小さな町工
場が高度成長を支えたのは周知。産業の空洞化の中で後継者とがんばってほしいもの。
12月26日(水) C
「文科系学生のインターネット検索術」 大串夏身 青弓社 1600円
東京都の図書館司書として長年つとめた著者らしい。情報・文献、図書、雑誌、新聞記事、
翻訳書、政府刊行物、学位論文などの調べ方を解説。なにゆえに、わざわざ文科系とこと
わる必要があるのか。もしかしたら「初歩の検索術」という、婉曲な謙遜なのかもしれない。
12月25日(火) C
「ザ・マン盆栽2」 パラダイス山元 芸文社 1700円
あのNHK「趣味悠々」にも登場のマン盆栽。これも癒し系なのか。盆栽に点景フィギュア
を置いて情景を想像させるお遊び。それなりに面白いが、それだけ。しかしこの程度の接
写なら、もっと絞りをしぼっての深い焦点深度で、前後の人形にピントをあわせてほしい。
12月24日(月) C
「ナンパ最強の法則」 鍵 英之 衆芸社 1400円
ここでも度量の大きいところを見せる飯田図書館だ。1966年生まれ、ワセダ出のナンパ
師がそのテクニックを伝授する。「数がすべてだ」といい、デキそうな女のコだけに声をか
けるってのは、ちょっと違うような気がするけどね。まあ人それぞれだから勝手にやって。
12月23日(日) B
比企理恵の「神社でヒーリング」 実業之日本社 1300円
ゴーストライターだろうが、いいたいことはわかる。癒しではなく、新鮮な感動体験をどこ
で味わうか、この女優の場合、神社への参拝ということなのだろう。フレッシュな感情が、
免疫力を高め前向き思考を生み、表情あかるく周囲からも期待され、集中力は増し良い
アイデアも浮かぶ。次々といい方に廻っていく、それが運がいいということなのだ、多分。
12月22日(土) C
「日本刀精神と抜刀道」 中村泰三郎 BABジャパン 1800円
なんと懐かしい中村泰三郎先生ではないか。真剣による試し斬りの「居合剣道」刊行から
30年、すでに90の御歳、今なお現役で古武士の風格。当時の「なるほど」と感心した記
憶がよみがえる。しかし、内容は30年前のものとほぼ同じ、賛辞が増えただけのようだ。
12月21日(金) C
「立花隆先生、かなりヘンですよ」 谷田和一郎 洋泉社 1500円
「教養のない東大生」からの挑戦状、が副題。卒業には間に合わず。立花隆の著作の中の
矛盾点を探る。90年代からのニューサイエンスへの著しい傾斜を、色弱のために理系を断
念した、理系コンプレックスといいたげ。この著者は、理1へ入学しながらも文転したらしい。
理系はこんなことしないもんねえ。理系文系の色分けはまことに便利、文理融合は幻かな。
12月20日(木) A
「世界宗教建築事典」 中川 武・監修 東京堂出版 13000円
早稲田の建築史研究室が、総力を結集した総アート紙380頁。世界各地の宗教建築249
点を写真あるいは図版で解説。まあ長かったわ。初めて知る建築も多かった。地理、歴史、
宗教、社会を建築という軸から眺めることだから幅は広い。しっかり勉強して疲れちゃった。
12月19日(水) D
「就職でトクする大学・損する大学」 島野清志 エール出版社 1500円
副題に上場企業に入社して出世できる大学ほか。つまりは会社四季報などで役員の出身
大学をしらべた大学のランク付け。それだけの本。「危ない大学・消える大学」という本を毎
年出している著者。ホンネの大学ランクと自負しているが、こんな発想しかできないのか。
12月18日(火) C
「ヒットの秘密」 知覧俊郎 タスク IT新書編集部 1200円
「ヒット商品とITの不思議な関係」というのが副題。アサヒ本生、フローズン弁当、キリン生茶
家電のコジマ、AIBO、ターボリナックス、ドトールコーヒー、日航e割、日本マクドナルド、松
井証券ネットストック、フジFinePix、ライオン植物物語、ワコール キメブラ。突っ込み不足。
12月17日(月) B
「市町村名語源辞典」改訂版 溝手理太郎・編 東京堂出版 3000円
編者は1980年に大学を卒業した都立高教諭とか。全国の市町村の、名前の由来を解説。
「さいたま市」や「西東京市」が、つまらない名前だという人がいるけれど、こうしてみれば市
町村の名前なんて、合成地名や瑞祥地名など、けっこういいかげんにつけられたみたい。
12月16日(日) D
「ストックホルムからの手紙」 川上麻衣子 同朋社・発行 角川書店・発売 1800円
なんとも言いようのない本だ。留学中のインテリアデザイナーの両親のもと、スウェーデン
で生まれ育ったという女優のストックホルム便り。半分以上を占める写真は現地在住の写
真家によるとか。これでは女性誌の読者でも満足はしまい。いったい誰が読むのだろうか。
12月15日(土) B
「バックステージヒーローズ」映像産業の裏方たち 長野辰次 朝日ソノラマ 1600円
1998年6月から2001年3月までの大分合同新聞への連載を加筆。週間「ザテレビジョン」
の元編集者の、はじめての著書だというが、141人へのインタビューですごいボリューム。ま
あ、いろんな商売があることよ。しかし字が細かすぎて自転車こぎながら読むには辛かった。
12月14日(金) C
ビジュアル版「世界お守り大全」 デズモンド・モリス 東洋書林 3800円
数十年にわたるマン・ウォッチングの折々に蒐集した、世界各地のお守り・魔除けの類をフ
ルカラーで紹介。原題は「BODY GAUARDS」だ。邪悪なものから、いかにして身を守るか
の切実な願いが、いまや癒しのグッズになっているようだ。それにしても訳がよろしくない。
12月13日(木) C
ブルーバックス「図解 ヘリコプター」 鈴木英夫 講談社 820円
ライト兄弟から36年、やっと1939年に量産化されたヘリコプター。その複雑なメカニズム
と操縦法を解説。ページのうち半分がカタカナという状態で読むだけでも一苦労。ましてや
操縦なんてとても。読み進むほどに、パイロットや整備士の能力に尊敬の念をいだくのみ。
12月12日(水) C
増補版「世界帝王系図集」 下川清太郎・編 東京堂出版 15000円
454頁の総アート紙に世界各国の王の系図が最後まで並ぶだけ。誰のための蔵書なのか
飯田図書館のスケールの大きさを見せてくれた。初版は1982年で編者は在野の研究者で
あるが、すでに平成8年、88才で没。こうして新装版がでるくらいだから、買う人はいるのだ。
12月11日(火) D
「ゴルゴ13の仕事術」 漆田公一&デューク東郷研究所 祥伝社 1500円
1968年末から連載がはじまり、すでに増刊とあわせて460編という「ゴルゴ」。その昔よく
読んだなあ。この熱心なファンは、日常のビジネスシーンに「秀才」「凡才」「バカ」「ゴルゴ」
と4つのカテゴリーで、その有り様を俎上にのせる。それがなんだ。どうした。つまらんぜ。
12月10日(月) C
「日本の都市景観100選」 〈都市景観の日〉実行委員会編 建築資料研究社 2400円
1990年から毎年の都市景観大賞を受けた100地区をまとめたもの。たしかに、伝統的
景観地区は文句ないし、再開発地区の都市景観もわかる。しかしニュータウン計画の多
くはどうかな、という感じ。どうも政治的に選ばれているような気がして、シラけてしまった。
12月9日(日) C
「3000万円のムダ遣い」 スタパ斎藤 アスキー 1400円
買ったパソコン90台。ケイタイ63台、デジカメ36台、フィルムカメラ48台、ビデオカメラは
12台という巨漢の物欲論、消費論。マンガ風文体を、いやいやナナメ読み。買い物とは「能
力の拡張」であり、「個人のスペック」である、という結論に、かろうじて評点Dをまぬがれた。
12月8日(土) B
ブルーバックス「方向オンチの科学」 新垣紀子・野島久雄 講談社 900円
方向オンチに該当する外国語はないそうだ。認知科学の分野から、その謎にいどむNTT
の研究者二人。空間認知は個人本来の才能なのか、あるいはうまく使える能力なのか、
様々の実験から、後者らしいことを推測。オリエンテーリングの静岡大村越先生も登場。
12月7日(金) A
「やがて中国の崩壊がはじまる」 ゴードン・チャン 草思社 1700円
後半がぜん面白く、午後に大きくくいこんだ。嫌中派の感情的な中国崩壊論と違い説得
力十分。国有企業と銀行の破綻は日本以上で、共産党体制では改革不能。問題はその
破局がどのようにして起こるかだ。WTO加盟で加速される、2つの想定をしているが、無
謀な台湾侵攻と、その敗北による現体制の崩壊っていうシナリオがありそうな気がする。
12月6日(木) C
行きつけにしたい「旨い店 2」 Men'sEx特別編集 世界文化社 1200円
東京・大阪・京都・神戸の旨い店シリーズ第2弾。前回のイタリアン・フレンチ・バーに続く
割烹・和食・居酒屋、ということになっている。したがって酒は日本酒か、焼酎専門である。
もちろんインテリアも和風が主だが、田舎住まいの、下戸にとってはどうでもいいことか。
12月5日(水) C
「87%の日本人がキャラクターを好きな理由」 学習研究社 1400円
香山リカ+バンダイキャラクター研究所が、キャラクターテラピーの時代、ストレス社会で
の癒しとしてのキャラクターの報告。しかしまあ、なんと不健康な社会になってしまったこと
か。癒しを求める前に、小春日和の陽の中で背にうっすら汗をかくまで歩こうではないか。
12月4日(火) B
「飛行機N0.1図鑑」 鴨下示佳 グランプリ出版 1800円
プラモデルのボックスアートを描く飛行機マニアが「戦闘機メカニズム図鑑」「爆撃機メカ
ニズム図鑑」に続く。速度、高度、航続距離ほかの記録にかかわった飛行機の四方山話
で著者による図解付。さすがに大部分がはじめての知識。がマニアしか読まないわなあ。
12月3日(月) C
「スターリングエンジン製作マニュアル」 松尾政弘・編 誠文堂新光社 1800円
スターリングエンジンは外燃機関の一種で、温度差を利用しての夢のエンジンといわれて
いる。松尾教授は埼玉大教育学部で、むしろ科学教育の一環として考えているようだ。エ
ンジンは、2本のガラス注射器を利用する。中学生向けの模型などの製作マニュアルだ。
12月2日(日) C
日本の名景「洋館」 高井 潔 光村推古書院 1600円
スイコ・ブックス日本の名景シリーズ。定年まで大成建設で建築写真を担当した写真家。
とりためた全国各地の洋館のほとんどが重要文化財である。さすがに出身の、日大写真
学科の講師だけに見事な写真だが本のサイズが小さいせいか、あまり迫力は感じない。
12月1日(土) D
「うそっ ほんと ヨーロッパの一流ブランド」 タカコ・H・メロジー 祥伝社 1300円
フランス人と結婚しイタリアはペルガモに暮らす日本女性。学生時代は体育会系だとか。
いわゆるブランド品の話から、高級ホテル、レストランまで雑多で、よくわからない印象。
文章もわりと乱雑。ここにも、女性誌という夢を売る世界で、優雅に生きている人がいる。
11月30日(金) C
「伝統的工芸品の本」 (財)伝統的工芸品産業振興協会・編 同友館 2200円
〈平成13年版〉陶磁器・漆器・木工竹工品・金工品・仏壇仏具・和紙・文具・諸工芸品・織
物染色繊維製品・伝統的工芸用具材料の、全195品目の伝統工芸品。見事なものだ。
問題は値段だ。いいものを永く使うということの大切さ。それはわかっているんだけどね。
11月29日(木) C
「ムリなく住めるエコ住宅」 OMソーラー協会 泰文館・発行 農文協・発売 1714円
屋根面で熱せられた空気を床下に送り、吹き出し口から暖房する「OMソーラー」である。
気に入らないのはオープンでなく、会員制だということ。それと、これだけの設備を住宅の
基本システムにはしたくないな。動くものは故障する。これだけに頼るのは危険だと思う。
11月28日(水) C
涼と美の歴史「日本のうちわ」 岐阜市歴史博物館・編著 岐阜新聞社 1905円
なんでまた岐阜市の博物館が、と思ったら江戸から明治、大正まで岐阜団扇というのが
全国を席捲したことがあるそうな。岐阜提灯と兼業していたらしい。博物館の収集品は浮
世絵ものを中心に、古代のものから、全国各地の産地もの。いまや丸亀が主産地だと。
11月27日(火) B
「世界の『空港』物語」 谷川一巳 主婦の友社 1600円
飛行機マニアの世界の空港の詳細な報告。さすがに精しい。マニアなら離着陸する飛行
機をあかず眺めていたい。その点、成田ができる前の羽田は国際線で華やかだった。著
者は日大出身の乗り物ライター。W・L・ライトの研究者、日大教授谷川正巳の息子か?
11月26日(月) C
「ザ・フィリピンパブ」 福沢 諭 情報センター出版局 1600円
この399頁の本はいったい何なのか?フリージャズのドラマーが、関東近県のフィリピン
パブの雇われ店長として過ごした、世紀末の1年間。そこでのフィリピーナの生態と給与
システムの詳細な報告だ。ただただ、なりゆきで読んでしまったが、毒にも薬にもならず。
11月25日(日) C
「菊水丸の芸能交遊録」 河内家菊水丸 人間・社 1800円
東の「やくみつる」に対抗する西の雑物コレクター「菊水丸」が、夕刊紙「名古屋タイムズ」
に連載する同名コラムも400回だと。名古屋の三劇場、名鉄ホール、中日劇場、御園座
の楽屋ネタが多し。小1からつけている日記といい、マメな人なんだな。行動力には好感。
11月24日(土) C
「おひとりさま」 岩下久美子 中央公論新社 1400円
1999年2月1日、「おひとりさま向上委員会」をつくったというライター。ホテルを、バーを
温泉旅館を、女性独りで楽しむというライフスタイルを提唱。さらには恋愛、結婚でも個の
確立を力説。まあ男、女を問わず、孤独に耐える力は必要。月並みだが自信をもつこと。
11月23日(金) B
「日本を知る105章」 コロナ・ブックス編集部 平凡社 2000円
まえがきも、あとがきもない。総アート紙にイロハ順に事柄を説明、英文と対照させ、さら
に写真を配する。執筆陣の豪華なことに驚く。コロナ・ブックスといえば、趣味人の今はな
き雑誌「太陽」の別冊か。6年前の「日本を知る101章」に4章を書き加えた新版だという。
11月22日(木) A
「図書館逍遥」 小田光雄 編書房・発行 星雲社・発売 1900円
前に読んだ、「ブックオフと出版業界」は感心しなかったが、今回は書名もいいじゃないか。
丹念に描いていく、50編の図書館にまつわる、内外の著名人のエピソード。切り口も多様
で初めて知ることも多かった。最後に5才で亡くした盲目の母の思い出で泣かせてくれた。
11月21日(水) C
「世界最強の男たち グリーンベレー」 アシュレー・ブラウン 東洋書林 1600円
特殊部隊のアフガン侵入、この本が出たのは2001年7月だ。興味の対象がズレている
というか面白くない。訳者は防衛大卒業の防大教授というが、訳も冴えないし、部隊創設
あたりが本論、しかも失敗の歴史ばかりなのだ。もしかしたら、防大の教科書なのかも。
11月20日(火) B
「アウトドア道具考」 バックパッキングの世界 村上宣寛 春秋社 1700円
たしか前作はサイクリングの本だと思ったが。心理学が専門の富山大教育学部の先生だ。
野宿歴30年の経験から、辛口の道具についてのあれこれ。すべて実費で購入し、実際に
使ってきただけに、説得力がある。けっこう個性的な、バックパッキング・スタイルでもある。
11月19日(月) C
産地別「すぐわかる ガラスの見分け方」 井上暁子・監修 東京美術 1800円
陶器よりも、漆器やガラスが好き。海外の有名メーカーと、日本のメーカー、工房を写真で
紹介。しかし、どこにも値段がないのは不親切ではないか。もっとも卒倒しないように、配慮
したのかも知れない。そういえば新婚旅行で買ったベネチアの器、落して、接着剤で修復。
11月18日(日) C
「旅先通信スーパーガイドブック」 林 ひろ子・傍島恵子 (株)ローカス 1500円
旅行先でいかにしてインターネットを使うか、という話である。携帯電話あるいはPDAなどの
方法から、パソコンを本格的に使うにため実用手段だ。インターネットカフェの利用、電気の
プラグ、電話のジャック、モデムの対応、接続ソフトのセットアップまで、こりゃ大変だわい。
11月17日(土) B
「光る泥だんご」 加用文男 ひとなる出版 1000円
日本泥だんご科学協会、略称ANDS(アンズ)というのがあるらしい。そこで開発された光る
泥だんごの作り方。NHKクローズアップ現代でも紹介された、京都教育大教授による保育
教育論でもある。この妖しく光る球が、まさか泥から出来ているとは思うまい。ほんに愉快。
11月16日(金) C
「古民家再生住宅のすすめ」 宇井 洋・著 石川純夫・監修 晶文社 2000円
むしろ廃棄物削減の環境問題として、注目されつつある古民家再生住宅。移築、古材利用、
再生いろんな方法があるが、ここでもいいことしか言わない傾向。コスト、居住性、耐久性そ
れにインテリアの圧迫感などの問題あり。施主にはキチンと説明し、じっくりと取り組もうよ。
11月15日(木) C
「自分の子供をスターにする法」 大島竜一 全日出版 1300円
歌手になりたい、モデルになりたい、役者になりたい、あなたの子供のそんな願いをかなえる
本。ホントカ!芸能界、モデル業界事情、キッズスター密着取材、プロダクション・エージェン
シー・スクール・養成所・劇団の紹介。所属費用やらレッスン費用やら、けっこうかかるらしい。
11月14日(水) C
「本棚からボタ餅」 岸本葉子 中央公論新社 1400円
文章講座で教えているだけに、読みやすい。カラッとした男性的な文章で、ほとんどが雑誌、
週刊誌に掲載された書評。しかし、ここまで真面目に本と接する姿勢に疲れるところもある。
それにしても、古書の「こ」の字も出てこない。そういえば女性の古書好きもあまり聞かない。
11月13日(火) B
「ミリダス」軍事・世界情勢キーワード事典 大波篤司 新紀元社 2200円
もともとゲームのための武器などの事典を出している出版社。9月4日発行で全470頁
各項目は的確かつ、わかりやすい。アフガン関係で各TV局の記者が毎日登場するが、
一般的に軍事関係の知識が乏しく、あれっと思う点が多い。この本で勉強してほしいぜ。
11月12日(月) D
「美」 日本美女選別家協会 小学館 1500円
なんとも正体不明な連中。リリー・フランキーほか30代の独身男たちが、美女について、それ
ぞれの思いを延々と語るのだ。「ダ・カーポ」「ダ・ヴィンチ」などの雑誌の連載らしいが、共感を
覚えない文章が続く。都会をはなれて汗をながし、感動体験を重ねた方がいいんじゃないか。
11月11日(日) C
「日本の敵」 中西輝政 文藝春秋 1429円
京都大学政治史の本流。産経新聞御用達の右翼的言動で、戦後民主主義の悪しき結果
としての現代社会を嘆く。ここへきてのテロ問題を、どこかで予想しているかとさがしたが、
どこにもなかった。ただグローバルゼーションが、あと20年ほどして終焉するという見方が
最後の方にあった。たしかに、上記問題は世界経済システムの変化の兆しかもしれない。
10月10日(土) B
「日本史モノ事典」 平凡社・編 平凡社 2500円
日本の歴史上存在したモノの形と名前を明らかにすることを目的に、平凡社発行の世界百科
事典、ほかの事典から、4000余点の挿図を収録した、とまえがきにある。生活、文化、道具
それぞれの絵の描き方が一定しているので、みているだけでも楽しくなる。手元に置きたい。
11月9日(金) C
「あなたの大学が潰れる」 中村忠一 エール出版社 1700円
毎年「危ない大学」という本を出している茅野在住。地名から察するに別荘地か。大学経営に
かかわった経験からの他機関の発表する資料の裏読みは相変わらず。ただ流行のAO入試
には反対で、むしろ国立有名校が低所得者選抜としておこなうべき、という意見には賛成だ。
11月8日(木) C
「日本の香り」 二部治身 撮影・小林庸治 文化出版局 1800円
八王子の丘陵に在住するナチュラリストが四季折々の草花、料理ほか身のまわりの香りを
愛でる。しかし「日本の…」とは大きすぎないか。「ぷっくり」「ほっこり」「こっくり」という表現は
気に入らない。女性誌向け。写真の説明文の活字が、6ポイントほどの小ささ、これは辛い。
11月7日(水) C
「刑務所(ムショ)のすべて」 坂本敏夫 日本文芸社 1300円
元刑務官が明かす、衣・食・住から塀の中の犯罪まで、「実録・獄中生活マニュアル」だとさ。
うーんけっこう勉強になるな、これは。うちの町内にも拘置支所があるが、それとは大違いの
刑務所への移送から、釈放にいたる日常生活の一から十まで、しっかり解説してくれている。
11月6日(火) C
別冊太陽 「ヴェネツィアンビーズ」 小瀧千佐子・編著 平凡社 2600円
骨董をたのしむシリーズ39。古代・中世・近世のトンボ玉から、アフリカとの交易のための原
色のビーズ、そして近代の洗練されたユーロピアン・スタイル。北鎌倉に美術館をつくった元
スッチーのコレクションを中心に展開。1950年頃のもののモダンデザインに興味をもった。
11月5日(月) C
「玄奘三蔵 祈りの旅」 シルクロード巡礼 平山郁夫 NHK出版
NHKスペシャルをもとに書き下ろした自伝。薬師寺玄奘院の壁画を25年描きつづけ、ついに
昨年末完成させたのは知っていたが、正直この大画伯の絵はまともに見たことがない。だから
何も言えないのだが、なぜ仏教なのか、玄奘なのか、最後までストンとこないで来てしまった。
11月4日(日) B
「家相を斬る!」 小池康壽 現代家相研究会 1000円
現代家相学で快適な住まいづくり、だそうだ。年齢不詳だがプレハブ住宅メーカーの営業マンか
ら独立したインターネットでの家相診断の人気者らしい。ここにあるのは家相というよりも「家づく
り」のヒント集とも言うべきものだが、ちょっと違った視点もあり勉強になった。したがって評点B。
11月3日(土) C
「大阪人の思惑 東京人の都合」 遠森 慶 三交社 1300円
韓国ものを得意とする、東京出身大阪在住のライターの描く大阪論。読みにくい文章で、東京と
対比する大阪人の微妙な心理を語るのだが、けっきょく大阪の悪口ばかりといった構図。しかし
終盤に近づいた一部分、誰もかけない今に残る「部落差別」の実態の報告は評価しておきたい。
11月2日(金) D
「エルメスを甘くみると痛い目にあう」 鈴木ルミ子 講談社 1600円
まさに女性週刊誌のような悪趣味。足利の成金の娘という出自はタナにあげ、ハイ‐ソサイア
ティのエルメス礼賛を臆面もなく語る。還暦をすぎたデザイン・アトリエの代表らしいが小さな
写真のインテリアからは、とてもセンスの良さは感じられない。不愉快、読むんじゃなかった。
11月1日(木) B
「日本人の神と仏」日光山の信仰と歴史 菅原信海 法藏館 2400円
早稲田の教授を定年退官した、日光山輪王寺照尊院住職の論文、講演集。とくに専門の
神仏習合思想については面白かった。とくに天台系はあやしいと思っていたが、やっぱり
神道とルーツは同じ。すでに平安のころから神仏習合は始まっていたんだ。まえに「眼で
みる仏像」という本でも感じたんだけど、やっぱり仏教というのは不思議な宗教だよなあ。
10月31日(水) C
「知識資本主義」 アラン・バートン 野中郁次郎・監訳 日本経済新聞社 2200円
ビジネス、就労、学習の意味が根本から変わるナリッジ・キャピタリズム。数年まえ、堺屋太一の
「知価革命」というのが流行ったが、こちらは純粋に経営学の論文。資本家と労働者の関係にお
いて、知識という要素がさらに重要度を増し、その形態もそうとうに変わっていくだろうという予測。
10月30日(火) D
「自分の力で 月の癒しU」 ヨハンナ・パウンガー トーマス・ポッペ 飛鳥新社 1400円
ドイツで評判になった「月の癒し」の続編。あらゆる生物の生の営みについて、月が関係している、
というのはわかる。しかし話しはどんどん進んで、月の動きと12宮の星座とを、関連づけはじめる
と、もう止まらない。さらには食と月のカレンダーまで持ち出して、もう月の彼方に行ってしまった。
10月29日(月) C
「やく みつるの大珍宝」 日刊スポーツ新聞社 1300円
つとにガラクタ蒐集で有名な先生が、そのお宝を大公開。オールカラーで夫婦二人で集めた苦労
をコメント。プロ野球、大相撲、芸能人、テレビモノほか何でもありを、これでもかと紹介。しかしこ
の人、いいジャンルのマンガを選択したよなあ。さして苦労なく、いくつになっても描けるんだもの。
10月28日(日) C
「クラブ マガ入門」 イミ・スデ・オー エヤル・ヤニロブ共著 原書房 1800円
イスラエル軍式護身術のクラブマガ。この出版社の守備範囲は格闘技、武術関係で国際武術文
化研究会の代表、横山雅始が日本語版監修という、といってこの人知らないが。写真入りの護身
術指南だがシロートの実用性については、はなはだ疑問。自衛隊の好き者が研究するのかもよ。
10月27日(土) B
「悪魔の鍋」 ハンス‐ウルリッヒ・グリム 監訳・佐々木 建 家の光協会 1600円
[食]のグローバル化が、世界を脅かす。食の安全性−大腸菌汚染、食中毒病原菌、耐性菌汚染
スナックによる肥満と糖尿病、残留農薬、遺伝子操作、残留ホルモン剤、放射線照射、機能性食
品の現状報告。何を食ったらいいんだ。「安全な食」は自給自足の中でしか達成されえないのだ。
10月26日(金) C
「忘我のためいき」 私の好きな俳優たち 小池真理子 講談社 1600円
女性誌「With」への連載、映画の中の女優論、男優論。映画はあまり観ないので、見知らぬ俳
優が多くなんともいえないのだが、その俳優像の描写力、表現力は的確かつ多彩で、さすがと
いうべきか。しかし、その一方で「どう、うまいでしょ」といわんばかりの嫌味さを感じてしまった。
10月25日(木) B
「東京 わが街わが友」 東京新聞編集局編 東京新聞出版局 1500円
東京生まれも、そうじゃない人も。30半ばから戦前生まれまでの芸能人、物書きの有名20人の
東京によせる想いをつづる個人史。それぞれの、東京新聞の10日分の連載。泣かせるものから
どうということもないもの、東京の地方紙を自認するだけに、いい企画だ。今も続いているらしい。
10月24日(水) C
料理と調理技術がよくわかる「和食の料理用語事典」 中村昌次 旭屋出版 1600円
調理師のための和食用語事典だ。調理道具から、下ごしらえ、刺し身、だし・汁物・煮物、焼き物
・揚げ物、蒸し物・鍋物、ご飯物そして最後に料理の名称。一般の人達のガイドブックにも、という
だけあってわかりやすい。とくに料理の名前の由来は、日本文化そのもの。お利口になりました。
10月23日(火) B
「祭りと宗教の現代社会学」 芦田徹郎 世界思想社 2300円
エミール・デュルケームの宗教社会学を専門とする甲南女子大教授の宗教論、祭り論は難しいが
前任地、熊本大学でのフィールドワークはおもしろい。熊本での祭り・イベントの調査、熊本アート
ポリスの報告、波野村のオウム騒動など。同年代ながら、まだまだ発展途上の雰囲気が濃厚だ。
10月22日(月) C
ムックY011「イカす!雑誌天国」 洋泉社 1200円
雑誌は世の中を映し出す鏡だ!そうである。本屋の店頭で見かける雑誌、あるいはまったく見か
けないコアな雑誌の内容を、有名無名のライターが批評。コラムも多く、情報量にクラクラするほ
ど。だからといって、知ってどうこうというものではなく「へーえ、こういうのもあるのか」と思うだけ。
10月21日(日) C
「歌舞伎町アンダーワールド」 安晃竜一 同朋舎・発行 角川書店・発売 1900円
例の雑居ビル火災があって期待して借りてきたのに、それほどでもない。自称リスク・コンサルタ
ントの初めての著作だという。まあ「裏をとれ」というのは無理にしても、もう少し入り込んでもらわ
ないと週刊誌やスポーツ新聞の守備範囲を超えることは不可能。まあいずれにしても危ない話。
10月20日(土) C
唐沢俊一の「裏モノ見聞録」 講談社 1300円
おなじみの雑学ライターが、インターネット上のユニークなサイトを訪れる話。「Web現代」に連
載されたものだそうだ。なんでもありのインターネットのホームページのカルトさに、さすがの唐
沢先生も口をあんぐり、という状態。笑えるけど30分ももたないぞ。続編が出そうな気がする。
10月19日(金) C
「日本縦断オフィシャルガイド 東日本編」 シェルパ・斉藤 小学館 1100円
八ヶ岳在住のバックパッカー、今度は耕運機で日本縦断を敢行。いままでの豊富な野宿体験と
あわせて、革命的な自由旅行ガイドをつくりました、と表紙に。中身は主としてテントを張れる場
所の案内。いかにして、安く快適に野宿を続けられるかである。もとはといえば松本出身らしい。
10月18日(木) C
プレイブックス「世界遺産が見えるホテル」 トラベル情報研究会・編 青春出版社 850円
一度は止まってみたかった厳選32のホテル。3部構成になっていて、第1章が世界遺産が見え
るホテル、第2章が神秘の遺跡をたどるホテル、第3章にいたっては記憶に残る極上のホテルだ
と。だんだん遺跡から遠ざかって、ついには1時間以上もかかるホテルだ。話が違うじゃないか。
10月17日(水) C
「テレビを面白くする人、つまらなくする人」 放送作家A 日経BP社 1000円
口外禁止のテレビの法則。「日経エンターテイメント」への4年間にわたる放送作家A氏の連載。
これでもかと書く、テレビ業界の内幕と、その中に蠢く人種達の生態。ほぼ想像どおりの虚業の
なかの虚業の実態だが、またそれを目指す若者も多い。親切にそんなテレビ業界就職読本付。
10月16日(火) D
「地図を見るのが10倍楽しくなる本」 国道の秘密編 中川文人 青春出版社 800円
プレイブックスと称する新書版、どうも内容が薄いシリーズだ。レニングラード大学に留学という
異色のライターだが、こんな程度の内容で「国道の秘密」とはとても言えないぞ。ただし表紙の
道路地図には国道153号線と我が飯田市が見えているので、この際許しておくことにするか。
10月15日(月) C
よろず古本「綱島探書堂」 綱島理友 実業之日本社 1400円
最近こういう古書についての本が多くなった。大型リサイクル古書店の増殖にたいし、旧来から
の古書店はどうなるか、この本もどちらかといえばそんな立場。あちこちの古書店に入る雑学ラ
イター。「週間小説」への連載をまとめたものだが、ほのぼのとした文章で好感。それゆえ軽い。
10月14日(日) A
「連戦連敗」 安藤忠雄 東京大学出版会 2400円
失礼ながら、この人の文章、発言にはいつも物足りなさを感ずる。ハッとするようなオリジナリ
ティをみつけだせないのだ。講義録のためか読みやすいが、評点はむしろ日曜の朝日をあび
NYチェアに座っての2時間を、至福の読書タイムにしてくれたことにたいしての感謝の気持。
10月13日(土) C
クラシックカメラ選書20「やさしいカメラ修理教室」 大関通夫 朝日ソノラマ 1714円
日本光学の元修理担当技術者が明らかにするカメラ修理のノウハウ。とうぜんニコン製品が主
体、手持のニコンFの1台の計数カウンターが不調のため、直せればと期待して借りてきた。と
んでもございません、とてもシロートの手に負えるようなものではありません。ただ眺めるだけ。
10月12日(金) C
ふくろうの本 図説「昭和レトロ商品博物館」 串間 努 河出書房新社 1600円
平成11年秋,青梅の商店街の空店舗に「昭和レトロ商品博物館」が開館した。「昭和B級文化」を
研究する、自称「日曜研究家」の筆者が、集めた昭和の商品パッケージ数千点を展示するもの。
昭和38年生まれというから、かなり若い。つまりは捨てるという習慣のない「物持ち」のいい人だ。
10月11日(木) B
「シアター・ドロップス」 小劇場の友 岡崎 香・編著 青山出版社 1500円
演劇専門ライターの小劇場に関する本。対談、インタビュー、裏方さん、役者名鑑の他、巻末に
は演劇団体、劇場を網羅。ペーパーバックスながら382ページの充実は、小劇場好きには手元
必携本か。その中でもコミニュケーション論としての、いわゆる「ワークショップ」に興味をもった。
10月10日(水) C
「風紀紊乱たる中国」 宮崎正弘 清流出版 1500円
親中国、反中国ともに疑ってかかる必要があるのが、中国についてのジャーナリズムだ。前半の
現代中国レポートは威勢がよくて面白いが、途中からの現地紀行はつまらない。さらに最後の現
代台湾政治事情にまでいたると論旨が急旋回。けっきょくは単なる嫌中国派というだけじゃない。
10月9日(火) B
「実測術」 陣内秀信・中山繁信 編著 学芸出版社 2400円
サーベイで都市を読む・建築を学ぶ。〈デザイン・サーベイ〉30数年前の法政大学宮脇檀ゼミ、当
時の流行ぶりはすごかったヨ。建築の意匠系の学術研究のテーマとして、アピールしやすかった
からか。その後も同じく陣内ゼミは海外での都市、集落のサーベイを続けているらしく、建築教育
の中でのフィールド調査の重要性を力説。またしても、土蔵の中で懐かしいものに出会った気分。
10月8日(月) D
「ナウの蟻地獄」 文・泉 麻人 イラスト・渡辺和博 ギャップ出版 1500円
トレンドはどこへ消えた?が副題。92年から4年間のPR誌への連載をまとめ、両者の現在の対
談で各章を振り返る、という例によってズルい本づくり。そんなにいうんなら読まなきゃいいのに、
といつも思いつつ、つい手にとってしまう。そうやって世間でも、そこそこに売れているんだろうな。
10月7日(日) C
「蚊遣り豚の謎 近代日本殺虫史考」 町田 忍 新潮社ラッコ・ブックス 950円
おもえば身の廻りから「虫」が少なくなったものだ。蚊、ハエ、ノミ、シラミ、ゴキブリなどの害虫を
退治する生活についてのルポ。しかし中身のウスい本。著者は油絵専攻で、警視庁警察官を経
ての、庶民生活における風俗意匠を研究するライター。銭湯研究では第一人者だというんだが。
10月6日(土) A
「たんぼ」 めぐる季節の物語 写真=ジョニー・ハイマス NTT出版 3786円
1994年初版、1997年第8刷、2001年9月図書館受入で、新刊あつかいで許して。1934年生
まれ、日本在住の英国人写真家が、各地の田圃風景を切りとる。もちろん1月から12月まで並べ
られた写真自体も美しく感動的。それに私自身の56年の心象風景あるいは想い出を重ねあわせ
ただでさえ涙もろいたちが年をくってさらに昂じてしまったのか、不覚にも涙を流してしまっていた。
10月5日(金) B
「出版動乱」 ルポルタージュ・本をつくる人々 清丸惠三郎 東洋経済新報社 1700円
「夕刊フジ」に9ヶ月間連載された「出版ウォーズ」の単行本化。「プレジデント」元編集長による業
界の内幕は、いままで読んだものの中では一番おもしろい。しかも週刊誌から、新書、マンガ、取
次ぎの問題など、出版業界のかかえる問題のほとんどをカバー。大変だけど面白そうな業界だ。
10月4日(木) C
「祭 民族 文化」 芳賀ライブラリー・編著 クレオ 2800円
1991年初版で、2000年にはついに第5刷のフォト・データ・ブックシリーズ。1921年生まれの
写真家・芳賀日出男のライフワーク。これも50万点の写真のなかから11枚づつ127頁を掲載。
半世紀にわたっての日本はもとより、世界各地の祭の撮影には「ご苦労さん」と言っておきたい。
10月3日(水) C
カラー版「世界版画史」 青木 茂・監修 美術出版社 2500円
美術出版社の美術史カラー版に版画が登場。監修者をはじめ執筆者のほとんどが、町田市立
国際版画美術館の学芸員。中国、日本、ヨーロッパという順序で、技法の発達とともに、社会と
の関わりを解説。このシリーズには、どんどんと新分野がくわわる。乞うご期待というところか。
10月2日(火) C
「大予測10年後の大学」 大学未来問題研究会 東洋経済新報社 1600円
少子化の流れのなかで、日本の大学がどう変わっていくのか。IPU、駿台予備校、東京三菱銀
行、三菱総合研究所の有志による共同研究。だいたいは現在の予想の範囲内、むしろ問題は
国立大学の独立法人化だ。授業料の高騰による、社会階層の固定化にどう対処していくかだ。
10月1日(月) C
「海 THE OCEAN」 ボルボックス・編著 クレオ 2800円
クレオ・フォト・データ・ブックシリーズ。海洋写真家、中村庸夫の主宰するフォト・エージェンシー
ボルボックスには20万点の海洋写真がストックされているという。1168点の海に関するシーン
は、小さな写真にならざるをえなくて残念。とくに「TOLL SHIP-帆船」の写真には迫力がある。
9月30日(日) C
「シャッターを切ってアジアを食す」 三留理男 講談社 1600円
アジア・アフリカを中心に取材をつづける1938年生まれの報道カメラマン。現在も連載中の毎日
新聞「アジア食紀行」からのまとめだ。 たしかに一般向けに軽い印象。ソファに寝転がって、1時
間と持たなかった。どうも食い物に執着しないせいか、食欲をそそられることにはなりそうにない。
9月29日(土) C
「ヨーロッパの街並と窓」 勝井規和 クレオ 2800円
1998年初版、クレオのフォト・データ・ブックシリーズ。別の写真家で「ヨーロッパの街並と屋根」
というのもある。絵画、俳句、短歌のアイデア・ソースというのが、このシリーズの狙いらしい。国
別に、主として都市の伝統的建物のファサードが並ぶ。いよいよ詰まったときにパラパラする本。
9月28日(金) C
「過客問答」 加藤周一対話集[別巻] 加藤周一 かもがわ出版 2800円
1919年生まれの医学博士でありながら、創作・評論活動をおこない、文学、思想、芸術を論ず
る。世界各地での生活、あるいは学術の経験からの視野はグローバルである。まあ「次元が違
うなあ」という思い。しかしながら、聞き書き形式の文章は読むのに疲れる。もういいって感じか。
9月27日(木) C
「松井の辞典」第1版 主幹・松井英樹 アスキー出版局 1300円
最近のPC用語がわかるかも!アスキーの元社員による「悪魔の辞典」PC版。「週間アスキー」
連載を収録。パソコンを使っていてのよくある笑えぬ話、笑える話。ところどころで同感するといっ
た程度のところだが、欄外のイラストはトボけていて存在価値あり。まだまだ、連載は続くらしい。
9月26日(水) C
「アイドル誕生」 プロデュース感覚の磨き方 酒井政利 河出文庫 680円
14年前、著者が52歳のときの単行本の文庫化。功なり名をとげた12月25日の松永真と同じ印
象をもった。能力はもちろんだが、それ以上に時代の波に乗れたということ。それは運命というか、
あるいは生かされ方というか、そこらあたりを勝ち組の人達はどう思っているのか知りたいものだ。
9月25日(火) A
シリーズ環境社会学[三] 「歴史的環境の社会学」 片桐新自・編 新曜社 2400円
歴史的環境の保存をキィワードに現況報告。テーマの選択がよい。明日香・京都・鞆の浦・小樽
などの「街」について、「トトロの森」のナショナルトラスト運動、塔や墓・霊園あるいは負の遺産に
ついてなど。とくに「郡上おどり」の保存についての報告では、まさに社会学の面白さを実感した。
9月24日(月) C
「完全 地ビール公式ガイド」 全国地ビール醸造者協議会・監修 出版文化社 1500円
今から9年前自家製ビールをつくったものだ。それから2年、酒造法の改正により解禁となり、全
国各地に地ビールが出現した。そんな109のブルーワリーの486の銘柄のビールを紹介。しか
し、これが皆似たようなものでつまらん。わずかに巻頭のラベルのコレクションが華やいでいる。
9月23日(日) C
「亡国の輩」 野坂昭如・村上玄一 発行・同朋舎 発売・角川書店 1500円
対談集は避けているんだが、野坂先生に敬意を表して借りてきた。「昭和ヒトケタと団塊の世代の
責任を問う」という副題で、50歳の村上が挑発しつつも、70歳の野坂は意外と謙虚でそれに乗っ
てこない。だから議題はとぶものの、消化不良の感じ。「結局、何が言いたいのよ」と質問したい。
9月22日(土) C
「THINK BLACK 黒の図鑑」 アスキームック 1180円
いま買いたい、漆黒の製品92アイテム。イームズの椅子からライカM2まで。今デザインは「黒」
なのだそうだ。一家言をもつ方々が製品以外にも黒談義、さらには東京黒色建築案内まで。不景
気の時代には黒が流行るというけれど、身の廻りが黒ばっかりってのもつまらないと思うけどね。
9月21日(金) C
「薪割り礼賛」 深澤 光 創森社 2381円
幼少から「火付け小僧」と呼ばれたという、東京生まれの東京育ちが林学を志し、岩手に I ターン
県庁に勤めながら、薪割りを楽しむ。木を伐り運び出し薪をつくり積み上げる技術。それを燃やす
仕掛け、料理さらにイベントまで盛りだくさん。内容が多すぎて、ものたりない入門編。次回期待。
9月20日(木) C
「MENSA IQ148にチャレンジ!」 ハロルド・ゲール キャロリン・スキット 青春出版社 700円
MENSAとは人口の2%をしめる IQ148の人達の世界的な団体だそうだ。頭の良さを計ることは
むずかしい。この本の中の「IQパズル」も数字を中心にしたもので、かなり一面的すぎるきらいが
ある。しかし、めんどくさくなって放棄した。これではいけない。ボケ防止には有効かもしれないぞ。
9月19日(水) C
「本屋なしではいられない」 斎藤一郎 遊友出版 1200円
書店の棚の本のならべ方にこだわる、同年代の出版社の営業マンの本屋談義。そのうち半分は
豊富な知識を生かしての、たとえば「旅」「ストレス」「日本語」「ラーメン」など、テーマをあげて本
の紹介だ。だから「書評」でもあるのだが、見方が非常に多面的で、これがなかなか面白かった。
9月18日(火) B
「事件からみた毒」 アンソニー・T・ツー(杜祖健)編・著 化学同人2200円
台湾生まれのコロラド州立大名誉教授による、トリカブトからサリンまでの毒の話。サリン以外に
ついては化学、薬学の専門家が執筆している。キノコ、薬物、ドーピング、麻薬、細菌など実際に
起こった事件などの、詳細な報告で臨場感がある。医学部の初歩の教科書を読んだ感じかな。
9月17日(月) B
「美術館にいこうよ!MUSEUM WATCHING」 エリオット・アーウィット クレオ 3800円
1998年2月初版の写真集。本来、撮影不可の美術館・博物館での展示品とそれを見る人の表
情をコンパクトカメラで写し撮る。総じてハイキーなモノクロ写真、そこには天性の明るさと、人に
たいする優しい眼差し。ロシア系らしいが、ちょうどノーマン・ロックウェルの絵をみるような感じ。
9月16日(日) C
「日本茶を一服どうぞ」 小川誠二 創森社 1333円
料理を中心とする[遊び尽くし]シリーズの日本茶指南。煎茶道の礼法から離れ、常茶を提唱した
故小川八重子さんの夫は1922年生まれ。東京から茶の産地に移住し、島田に小川八重子記念
館「茶夢の館」を開設。茶の種類別にいれ方味わい方を図解。とくに番茶の「日常茶」にこだわる。
9月15日(土) C
「ホテルオークラ〈橋本流〉 大人のマナー」 橋本保雄 大和出版 1400円
「感性」と「知恵」で器量を上げる37の方法だそうだ。元ホテルオークラ副社長の〈橋本流〉は接客
サービスの神髄としてすでに3冊も刊行。でよく買う読者は誰なのだろう。入社したてのサラリーマ
ンか、もう少し上の年代か。昔はうるさいジジイがいたけど、いまは誰も教えてくれないもんねえ。
9月14日(金) B
「世界の川を旅する」 野田知佑・文 藤門 弘・写真 世界文化社 2800円
ご存知1938年生まれのカヌーイスト、BE−PAL創刊以来のつきあいだが老眼鏡と丸くなった
背中に老いを感ずる。淡々とした土地の人との交流はあいかわらず。テレビを消して、酒を飲み
ながら読むことに。写真はいいがエディトリアルデザインがダサい。もっと素敵な本にしてくれヨ。
9月13日(木) C
アジアを歩く「カッパドキア」 大村幸弘・文 大村次郷・写真 集英社 1900円
トルコのほぼ中央部、タウルス山脈の北側のアナトリア高原に、奇岩のひろがる溶岩台地がある。
その荒野に、終末を予感したキリスト教徒が祈りの場所とした、洞窟修道院と聖堂と地下都市が深
く掘られている。名前だけは聞いてはいたが、またまた人類の歴史のひとつを考えてしまった午後。
9月12日(水) C
別冊宝島Real「図説・検証 自衛隊のハイテク戦!」 軍事ジャーナリスト会議 宝島社 1048円
こんなとき本を読んでいられるノ。真珠湾以来のアメリカ本土被害。これは戦争だ。そこで自衛隊
「IT」で変わるか?日本の軍事力、というのが副題。軍事問題研究グループが自衛隊の現在・未
来を検証。21世紀をむかえ軍事の面での情報化革命。しかし米でさえこの始末、大丈夫かな?
9月11日(火) C
「八ヶ岳あかげら日誌」 安部譲二 PHP研究所 1200円
この人も読むのは初めて。八ヶ岳の泉郷に別荘を建てる話。年をとったのか、根の小心さを垣間
見せるのに気取りはない。ただの個人的な体験の報告だが、読みやすい文章だし、盛り上げ方も
うまい。なんといっても後味がよろしいワ。でもあまり満足しちゃうと、早いとこお迎えが来ちまうぜ。
9月10日(月) B
性行動の謎を解く「精子戦争」 ロビン・ベイカー 河出書房新社 2200円
1997年初版2000年3月第5刷だから、すでに読んだ人も多いはず。すべての性行動を「子孫
繁栄」という一点のみで説明するイギリスの生物学者。膨大な調査と実験から、さまざまな事例
をあげて説得。ここでは子孫の数が多い人ほどエライのだ。でもちょっと無理があるんじゃない。
9月9日(日) B
「ガラクタをちゃぶ台にのせて」 さえきあすか 晶文社 2000円
1968年生まれのモノ、ガラクタ収集家を自称する。全国各地の骨董市を歩きつつ、昭和初期以
降の未だ骨董とは呼ばれない、名もなき生活用具たちへの愛情を問わず語り。しかし実用新案や
特許のウラをとるなど学究肌の一面も。はたして「なんでも鑑定団」の新メンバーになれるのか?
9月8日(土) E
「『日本書紀』暗号解読」 竹田日恵+文学考古会 徳間書店 1600円
飯田図書館が何を考えているか、わからなくなるほどのトンデモ本。「竹内文書」という元祖トンデ
モ本に基づき「日本書紀」の裏を読むというんだが、何を言いたいのか不明だ。超古代、天皇の祖
先 「スメラミコト」が,全世界を支配していたという。仏教を否定するが、某宗教団体の匂いもする。
9月7日(金) C
「からいはうまい」アジア突撃極辛紀行 韓国・チベット・遠野・信州編 椎名 誠 小学館 1524円
もうしばらく読むのは止めていたが、「トンガラシ」の話ならと思って借りてきた。が中身はやっぱり
どうということはない、辛い食い物をただひたすら食うだけの話。ああ、デビューのころのほろ苦い
文章はどこへ行ってしまったのか。最後の食文化研究家の小泉武夫教授の話がおもしろかった。
9月6日(木) C
「東京TOKYO写真集・都市の変貌の物語1948〜2000」 石井 實 KKベストセラーズ 2700円
地理の先生が撮り貯めた写真を現在と対比する。同じような企画が結構あるが、意外と面白くない。
あとがきで写真のならべ方について、編集者との意見の相違もチラリ。本人はもっと個人的な視点
でまとめたかったのではないか。売れる売れないは別として、そっちのほうが見てみたい気がする。
9月5日(水) B
塩野七生ルネサンス著作集1「ルネサンスとは何であったか」 塩野七生 新潮社 1600円
はずかしながら、この著者の本ははじめて。なんとなく敬遠していたけど、ルネッサンスのことならと
借りてきた。フィレンツェ、ローマ、ヴェネツィアと歴史の順の都市ごとに、政治、経済状況のなかで
いかにして芸術が花開いたかを詳述。これで多少はルネッサンス芸術が身近になったような気持ち。
9月4日(火) B
「方位読み解き事典」 山田安彦・編 柏書房 3200円
方位という視点から、ものをみるという企画。地名や地図、信仰や修験道あるいは風水、生活や民俗
建物や都市での歴史、世界各地の考え方、気候や風あるいは生物学や心理学での方位など。執筆
者41人での記述は幅広いが、大胆な推論は登場しない。事典という性格上しかたないことなのか。
9月3日(月) C
「みんなイタリア語で話していた」 岡本太郎 晶文社 1800円
中身も見ずに借りてきたら、例の御大とは人違い。写真家でイタリア文学者のイタリア便り。わざと
やってるんだが、ところどころに非常に長いセンテンスをはめ込む。最悪なのは14行、ほぼ1頁分
におよぶものもある。そのダラダラした長い文章に集中力を欠き、もうどうでもよくなってしまった。
9月2日(日) B
「新説・石油がなくなる日」 砂漠とバナナが人類を救う 西上泰子 燃焼社 1800円
石油以降のエネルギーをどうするか。ウランも先細り、話題の燃料電池も水素の供給をどうするか。
太陽光、風力でもまかないきれない。著者は40%を省エネで、30%を太陽光と風力で残り30%を
GBM(グローバルバイオメタノール)でと提唱。熱帯農園の廃材と砂漠の太陽光発電での水素から
の再生可能メタノールだそうだ。説得力のあるエネルギー論。それより冷房やめて汗をかかなきゃ。
9月1日(土) A
「カンガ・マジック 101」 ジャネット・ハンビー ポレポレオフィス・発行 連合出版・発売 1143円
1995年初版2001年5月改訂版。東アフリカの1枚の布「カンガ」タテ110cmヨコ150cm、身体
に巻きつける53の着方を紹介、さらに48の用途を著者の夫、デビット・バイゴットが図解。訳はカ
ンガ愛好研究会織本知英子さん。全104頁の薄い本だが実に愉快、さっそく発行元に1冊注文。
8月31日(金) C
「大正テレビ寄席の芸人たち」 山下 武 東京堂出版 1800円
書名のテレビ番組の記憶がない。ちょうど下宿生活をはじめたころで、テレビとは縁がなかったため
か。その番組ディレクター(柳家金語樓の息子だという)の想い出帖。しかし実際つきあっているから
か、西条昇とちがって、けっこうシンラツ。トニー谷なんてボロクソ。あまり後味はいいとはいえない。
8月30日(木) C
「日本の石仏200選」 中 淳志 東方出版 2800円
オールカラーで石仏200体。大分の磨崖仏が有名だが、屋外のものだけに風化がはげしいものも
多く、また石という素材のため素朴なものが中心となり、逆に庶民の信仰心の大きさ、重さを思わざ
るをえない。しかし岡本太郎が絶賛の、諏訪大社上社春宮「万治の石仏」が登場しないのはなぜ?
8月29日(水) C
「ラッピングバス2001」 ワンツーマガジン社 1800円
2000年4月より東京都営バスの「ラッピング広告」が解禁、さまざまなデザインのラッピングバスが
走るようになった。現在でもそうとうに話題になってるらしいが、地方在住にはわからない。御三家と
いわれる「キットカット」「ハーゲンダッツ」「リプトン」をはじめ、150台。「ネスカフェ」がいいと思った。
8月28日(火) C
「精解 サブカルチャー講義」 阿部嘉昭 河出書房新社 1900円
1999年立教大学文学部の後期の講義録らしい。著者の存在は知らなかったが、サブカルチャー評
論家だけあって、豊富な知識を、多彩な語彙で結びつけ、読者あるいは学生を煙に巻く。ロックギター
マンガAVなど、知らない世界を哲学的に語るが、ほとんど理解不能は当然。名前だけは覚えておく。
8月27日(月) C
「豊穣の神さま」 わかりやすい稲荷信仰 鎌倉新書 858円
もとはといえば五穀豊穣、さらに現代では開運、子孫繁栄、交通安全、海上安全、安産、学業成就
芸術向上、厄除け、商売繁盛、殖産興業、つまりなんでもありの万能薬、稲荷神社の解説書。伏見
笠間、豊川ほか、全国の稲荷神社の様子は詳しいが、とうぜん我が愛宕稲荷神社の記述はない。
8月26日(日) C
「ヴィンテージウォッチ 8th」 旅名人・編 日経BPムック 1800円
はなからあきらめているので、眺めてもなんの感動もない。勝ち組みの象徴としての機械式時計の
世界はちょっと想像できない。歯医者になった家内の実家の甥が300万のロレックスをさりげなく腕
に巻いている。羨ましくもないが、むしろ近頃流行の押し込みにやられはしないかと心配してしまう。
8月25日(土) C
「鎮守の森は泣いている」 山折哲雄 PHP研究所 1450円
京都造形大学大学院長の日本論。前半は神道論、後半は宗教からみた日本人論。しかしよくわから
ない。頭のいい人に多い、自分だけわかっているタイプか。だから話題はどんどん飛躍、ついていけ
ない事態。ただ流行の「癒し」を甘えと非難し、積極的に感動体験を求めるべき、との意見には賛成。
8月24日(金) C
「味覚表現辞典」 奥山益朗・編 東京堂出版 2400円
書名を見て期待しちゃったが、実際は食材別に、文学作品の断片の羅列。著者は新聞記者を全うした
大正7年生まれで、ほかにも日本語などについても、同じ出版社から同じようなスタイルで5、6冊出し
ている。しかしなんだか面白くない。むしろ料理別に並べたほうが味覚表現にはふさわしい気がする。
8月23日(木) C
「台風飛行」 武田一男 朝日ソノラマ 2800円
CD付きフライトシリーズ。メインは昭和56年10月1日、台風22号の接近中に鹿児島から奄美大島
を目指す、東亜国内航空のYS11、567便のコックピット、運行管理室のドキュメント。強風の一瞬の
隙をついて着陸する。表紙の雲海の上を旋回するYS11の写真が美しい。同機のファンは堪能か?
8月22日(水) B
「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術」 立花 隆 文藝春秋
1714円 自分で驚異ということはないだろう。序と題した書物論はくどいが、読書日記はそれなりに
読める。5年前からの「週間文春」への連載だが、やはり新しいものほど興味がわく。これは読書の
根源にかかわる問題。つまり知識欲として読むのか、また単にひまつぶしとして読むのかという話。
8月21日(火) C
図解「墨子のパワーを身に付ける」 岡本光生 中経出版 1600円
古典に学ぶ図解シリーズ「論語」「孫子の兵法」「韓非子」「クラウゼヴィッツの戦争論」「マキャヴェリ
の君主論」の最新版。ところがこれが良くわからない。最後まで、疑問符がいっぱい。しかし2000年
もまえの中国、春秋時代に孔子の後にあらわれ、孟子、筍子、韓非子とつづく思想の歴史はさすが。
8月20日(月) C
「わかる!建築材料」 森 長一郎 オーム社 2500円
大手建設会社設計部を定年退職した、神戸大学非常勤講師の建築材料学の講義ノートで建築材料
を再勉強する。先生もこのくらいの年齢になると、好きなことを言っていて面白いし、さすがに施工会
社出身だけあって、竣工後のメンテナンスで苦労した様子が、端々にうかがえる記述も多く、有用だ。
8月19日(日) B
「岡本太郎が撮った〈日本 〉」 岡本敏子・山下祐二 編 毎日新聞社 1400円
昭和32年「芸術風土記」の取材以降の写真集。それにしても写真が小さい。ところどころの文章では
なぜ高校の頃「今日の芸術」に夢中になったかを理解。迫力のある文体しかし十分な間と洗練された
語彙。それにしても日本を撮り歩いている岡本太郎と、同年代になってしまったんだなあ、と感傷的。
8月18日(土) C
「沖縄大衆食堂」 仲村清司+腹ぺこチャンプラーズ 双葉社 1200円
双葉社の沖縄シリーズ、オキナワ流儀のカルチャーショックなご飯たち。その独特な食堂文化、大衆
料理と食材を、愛をこめて報告するオキナワ・フリークたち。巻末にはそんな大衆食堂を厳選した41
軒のリストも。まあたしかにその面白さはみとめるけど、とくべつに食いに行きたいとは思わないなあ。
8月17日(金) B
「漆の器を知る」 灰野昭郎 新潮社 1800円
「美術館へ行こう」シリーズ全12巻のひとつ。著者は京都国立博物館の工芸室長で、なかなか格調
を感じさせる文章は○。現存する国宝や重文の写真と解説、まったく見事なものである。その意匠は
文学や料理と同じく連想を競う、日本文化の最たるもの。つい陶器と較べてしまうが、それは偏見か。
8月16日(木) D
「良いカメラ・ダメなカメラ採点」 宮崎洋司 エール出版社 1600円
たしかに巻頭に12ページにわたっての5つ星の採点表。ところがそれから終わりまではカタログの内
容をそのまま書き写したような記述が機種別につづく。いったい誰がこれを読むのか。著者は70近い
写真光学講師とか。田中チョートク先生のカメラ論にくらべるとまるで面白くない。愛が感じられない。
8月15日(水) B
「紙の大百科」 美術出版社 2500円
紙のデザインワーク、紙の文化誌、現代生活と紙、紙に関する情報・資料からなる、デザインガイド。
さすが大百科を標榜するだけに幅がひろい。とくに紙好きのひとにとっては、文献、資料館、HPなど
第3部の情報・資料編は有用だろう。しかし初心者には、紙の名前と見本くらいはほしいところでは。
8月14日(火) B
大図解「世界のミサイル・ロケット兵器」 坂本 明 グリーンアロー出版社 2190円
兵器の性能の向上で、矛と盾というよりも、矛と矛でやりあうことに。その代表、ミサイル兵器の図解。
ICBM、IRBM、潜水艦発射弾道ミサイル、巡航ミサイル、地対空、空対空、艦上発射ミサイルそれか
ら対戦車ミサイルまでの発達の歴史と現状。どこまでやれば気がすむか、永遠に続くその開発競争。
8月13日(月) C
「一冊で日本史と世界史をのみこむ」 山本博文・監修 東京書籍 1700円
平成9年に初版、この2月で第9刷というロングセラー。前にこの地理版は読んだが、あまりどうという
ことなかった。それで今度は歴史だ。たしかに日本史と世界史を対照させての説明は、初めのうちは
面白いのだが、時代が下がってくるにつれ、どうでもよくなる。けっきょく歴史に弱いということなのか。
8月12日(日) C
「のりもの倶楽部NO.7」 イカロス出版 952円
飛行機ものが得意な出版社の乗り物ムック。今回は「21世紀ののりもの」として陸、海、空の未来派
を特集。いつも思うことだが幅がひろい趣味の本だ。というか、好みがどんどん細分化して、なにか人
間の業みたいなものを感じてしまう、といえば大げさか。しかし天下泰平ではあるということは事実だ。
8月11日(土) C
「隠された神サルタヒコ」 鎌田東二・編著 大和書房 3000円
天孫降臨の一行を高千穂に道案内し、伊勢で貝に手を挟まれ溺れ死んだといわれる謎の土着の神
猿田彦大神。この天狗に似た神様に入れ込む短大教授のシンポジウムを中心に謎にいどむ。なんと
か沖縄と結びつけようとするが、ちょっと苦しい。しかし著者のプロデューサーとしての能力は認める。
8月10日(金) A
「アール・ヌーヴォーとアール・デコ 蘇る黄金時代」 千足伸行・監修 小学館 価格不明
値段はどこにもないが数万円はしそうな、A4判厚さ4センチの美術書。書名の内容よりも、産業革
命後の都市化社会の出現と、世紀末の雰囲気からアール・ヌーヴォーの生まれる背景について詳
説する。アール・デコなんて最後の数ページ。しかし美術論特有の難解さはあるものの、19世紀末
からどのようにしてデザインが生まれ、そしてモダンデザインが開花したかを、想像させるには十分。
8月9日(木) C
「パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!」 D・A・ノーマン 新曜社 3300円
複雑さに別れを告げ〈情報アプライアンス〉へ。パソコンという未完成な機械から、ユーザー本位の
使い易い機器をと主張。言わんとすることはわかるが、そのためにこんなに長々と書く必要がある
のか。それに原書は1998年発行、訳に2年かかってどうする。ケイタイの進歩を、どうみるのか?
8月8日(水) C
「カメラGOODSベストセレクション」 日本カメラ社 1380円
実際に使って選んだ定番カメラアクセサリーだそうだ。カメラバッグからはじまってストラップ、3脚
露出計と続く。デジカメの普及で、銀塩カメラはすたれるかと思いきや、ますますライカその他高級
機の人気は高い。そんな金のあるジジイが、アマチュアより頭ひとつ抜き出たいがための案内本。
8月7日(火) C
「巨石文明の謎を解き明かす」 桜井邦朋 PHP研究所 1250円
期待してなかったけど、やっぱりつまらない本。考古天文学という分野。ストーンヘンジ、カルナック
神殿、古代アステカ王国神殿、飛鳥の酒船石も太陽観測の天文台だったという。つまり夏至、冬至
春秋分を知るためというわけ。だからどうした、内容は反復が多く「新鮮」とは、とてもいえない内容。
8月6日(月) C
「海外お宝探しの超極意」 関根 進・洋子 マガジンハウス 1300円
副題に「熱中夫婦の世界アンティーク感情旅行」とある。1963年にともに大学卒業というから4つほ
ど上。なんと優雅な生活、ありあまるヒマとカネでアンティークを探しまわる日常。夫は「週間ポスト」
の元編集長でガンを食事療法で克服したとか。でもどうなのか、夫婦の趣味が共通というのはね。
8月5日(日) C
「あなたの想い出」 Memories of You 高平哲郎 晶文社 1900円
けっ、また医者の息子かよ。たしかに「Memories of You」は、「あなたの想い出」。ジャズのスタン
ダードナンバーの1曲ごとに、今は亡き人を偲ぶ。だけど、もっと泣かせてくれていいはず。なぜか文
のつなぎがしっくりこないのだ。あまりにも感傷的(センチ)になりすぎた、と好意的に解釈しておこう。
8月4日(土) B
「バカとの闘い」 勝谷誠彦 新潮社 1400円
元灘高生徒会長はたしかに優秀。前半「週間宝島」連載集はともかく後半のネット日記は長い。左
も右も斬りまくるが、育ちの良さゆえ許される。井上陽水と共通する医者の息子の特殊型。鉄道、
グルメ、写真、文学、早熟な天才ももう不惑らしい。ほんとは、やっぱり医者になりたかったのでは。
8月3日(金) D
「威圧の中国 日本の卑屈」 長谷川慶太郎・中嶋嶺雄 ビジネス社 1500円
副題を「新冷戦時代の幕開け」中国嫌いな、お二方の対談だから、最初から最後まで中国の悪口。
しかしそれも「…だそうだ」という伝聞ばかりで迫力は感じない。それにひきかえ恥ずかしくなるほど
の李登輝へのヨイショが、終わりまで続く。こんなていどの話では、わざわざ本にする必要はない。
8月2日(木) C
「江戸の手わざ」 ちゃんとした人、ちゃんとした物 田中敦子 文化出版局 1600円
東京の下町職人訪問。江戸指物、江戸袋物、江戸小物細工、江戸小紋、江戸切子、江戸桶、江戸
銅器、江戸からかみ、江戸団扇、東京友禅である。こういったものを、日常生活のなかでサラリと使
えれば最高。それと、クラフトと手わざとの違いとはなにか、しばし考えこんでしまった暑い昼さがり。
8月1日(水) C
「人と土地と歴史をたずねる和菓子」 中島久枝 柴田ブックス 1800円
食と料理をテーマとするライターが全国の和菓子をたずね歩く。大きく、饅頭、羊羹、団子、せんべ
い、上菓子(練りきり、こなし、きんとん)、南蛮菓子、駄菓子と7つにわけ、その由来、作り方、名物
をならべる。名品だけにいい値段。甘いものには、すぐ手が出るほうだから、目の前におかないで。
7月31日(火) C
「私とパトが建てた居心地のいい家」 めぐろ みよ 講談社 1400円
家づくりの本については必ず読むことにしているので、しかたなく。パトとはヨークシャテリア。3階
建てアトリエをイラストレーターが自分の好みで作った。5月1日の井形慶子、7月5日の荻原博子
といい、キャリア女性の家づくりは肩肘の張りっぱなし、旦那芸のおっとりさを期待する方が無理?
7月30日(月) B
「フロン」 結婚生活・19の絶対法則 岡田斗司夫 海拓社 1500円
婦論であり夫論であり、父論であるという。オタク評論家が多数のインタビューをもとに書き上げた
現代家庭論。スタンスは女性の側で、結論として家庭から夫をリストラすべき、別居が望ましいと。
本人は結局、離婚したが家庭としては、つきあってる様子。そんなら単身赴任が一番いいのでは。
7月29日(日) C
「柳昇の新作格言講座」 春風亭柳昇 講談社 1300円
十数年前、地元で寄席を企画した今はなき友人に「誰がすき?」といわれ、柳昇とこたえ馬鹿にさ
れたことも。田舎じゃ、新作の評価はひくいんだなあ。その今や大御所、落語界現役最長老の人
生格言集。真面目な人柄がうかがえて、あのトボけた味を期待する向きには、物足りない感じだ。
7月28日(土) C
「偽善系U」 正義の味方に御用心! 日垣 隆 文藝春秋 1429円
10数年前、信濃毎日新聞に新進ライターとして「毎日1冊本を読むようにしている」と載っていた印象。
けっこう講演をこなしたりして、今はそうとう売れてるらしい。その着道楽とギャンブル好きは、綱渡り的
な生活のストレス故か。他人事ながら、ちょっと心配になるほどの反骨精神の旺盛さには共感したい。
7月27日(金) A
「定常型社会」 新しい豊かさの構想 広井良典 岩波新書 700円
厚生官僚からMITへ現在千葉大助教授だが、いずれ東大へ呼び戻されそう。福祉を環境とともに経
済としてとらえる持続可能社会の冷静な提案は幅広く、奥深い。個人の生き方としては「時間」という
要素を、政治においては「社会保障」の議論をとおして、新しい地平をみつめる、今年1番の必読書。
7月26日(木) C
必ず役に立つ「狭小住宅63」 監修・Memo男の部屋編集部 1524円
この雑誌「Memo男の部屋」というのはずっと狭小住宅を特集していて、今回その中間報告をだして
きた。都会の極小あるいは変形敷地の最小限住宅。悪条件をデザインで、豊かな暮らしにかえて
いく。しかし無理は無理、キチンと施主には説明しなきゃ。とくに屋根裏の暑さを指摘しておきたい。
7月25日(水) C
「一冊で世界地理と日本地理をのみこむ本」 目崎茂和・監修 東京書籍 1700円
同企画の「一冊で世界史と日本史をのみこむ本」が、けっこうなロングセラーとなって、柳のしたの
どじょうをねらった本か。つまりは世界と日本の地理雑学じゃないか。内容的には世界と日本を同
時対照しただけで、それほど濃いとはいえない。クイズマニア初心者向けというところではないか。
7月24日(火) B
図解でわかる「文字コードのすべて」 清水哲郎 日本実業出版社 2700円
パソコンでの文字使用、JISの第3、第4水準の漢字をどう出すか。あるいは異体字、中国の簡体字
果ては朝鮮のハングルから梵字にいたるまで、パソコンにおける文字がどうコード化されるに至った
か、くわしく説明。仏語、独語、キリル文字、北欧文字までWIN、MACそれぞれの解説。脱帽です。
7月23日(月) C
「これは『骨董』ではない」 尾久彰三 晶文社 2900円
柳宗悦に心酔し、その弟子を縁者にもつ日本民藝館の学芸員が、高校生のころからのモノ集めの
遍歴と品々を語る。古いからではなく、高価だからでもない、用としての美をもとめ、またその在処を
さぐる日々。しかし門外漢には結果的には同じようなものだと思う。理屈をこねるだけ始末がわるい。
7月22日(日) B
「栗林慧全仕事」 独創的カメラでとらえた驚異の自然 学習研究社 4700円
長崎県の田舎で自然科学写真研究所を主宰する、昆虫カメラマン。曲折を経て、3センチから無限ま
でピントの合う、超深度接写のメカを創出し、昆虫の目で見る自然世界を写し出して、世間をアッとい
わせた。たしかにムシになったような不思議な感じ。しかしエディトリアル・デザインがダサいのでは。
7月21日(土) C
「雑穀が未来をつくる」 国際雑穀食フォーラム編 創森社 2000円
2000年8月「国際雑穀食シンポジウム」を軸に未来の食を問う。ミレットというんだとか、アワ、ヒエ、
キビ、タカキビ、シコクビエがいわゆる「五穀」というらしい。小鳥の餌としか思ってみなかったけど、ウ
マいらしいですよ。いわゆるアトピーや花粉症など、昨今の免疫力の低下をも、防ぐ働きもあるそうな。
7月20日(金) C
フードビジネス「手の届くブランドを生み出す」 河野道久・編 オータパブリケイションズ 1524円
外食トップ・インタビュー集。マクドナルドの藤田 田、スターバックスの角田雄二ほか8人のフードビジ
ネスの勝者たち。それぞれの経営哲学は、正反対のことを言ってたりして、あまり参考には、なりそう
もない。浮き沈みの激しい業界であるがゆえか、現在それぞれが輝いている。それこそ個性なのか。
7月19日(木) C
「ちょっとだけ 考える。」 思想という劇薬 フルタヒロシ 日本経済新聞社 1000円
「気づかい」「ふれあい」「癒し」そんな弱い薬は、もう君たちには効かない。今を生きる若者たちが再び
思想を始めることを願う、東アジア思想史専攻の筑波大教授が、ゼミの学生を相手に挑発する。しかし
軽いようでいて重いようでもある、よくわからない、そのスタンス。同じように理解するのも難しかった。
7月18日(水) B
「知ってますか ? いい家の値段」 小林高志 ニューハウス出版 1714円
家づくりの金の問題だけにしぼった著者は、120軒以上手がけたという建築家。同感部分多し。わか
らないところは、はっきりわからないという態度に好感。風呂があるという住宅が普及してから30年も
経っていない。絶対的なことは、誰にも言えないはず。今までの住宅の実用書の中ではハイレベル。
7月17日(火) C
「大いなる西部劇」 逢坂 剛・川本三郎 新書館 2300円
1943年生まれの作家と1944年生まれの映画評論家が、青春の西部劇について延々と語りあう。
同世代としてわかるんだけど、文句がひとつ。それはテレビ西部劇についての記述の少なさ。あの時
代の西部劇ブームの、半分以上はテレビによるもの。週に3本は放映を楽しみにしていた中学時代。
7月16日(月) B
「裸の眼」マン・ウォッチングの旅 デズモンド・モリス 別宮貞徳・訳 東洋書林 2500円
英の動物行動学者、1967年「裸のサル」で世界的ベストセラー。得た大金で世界探求の旅に出立、
この本はその間のエッセイ集。1982年の来日の記録あたりから面白くなってくる。好奇心と感受性
こそ、人間観察の達人たる必要条件か。訳も上手なり。「裸のサル」も早く読まなきゃいけないよね。
7月15日(日) C
「実験室の笑える?笑えない!事故実例集」田中陵二・松本英之 講談社サイエンティフィク 1500円
群馬大応用化学科の先生たちによる、有機化学実験での失敗やアクシデント例。BBSでのカキコミ
とレス、というかたちで進行する。専門用語、略語が多いのでわからないところも多々あるのだが、雰
囲気は門外漢でも理解できる。化学はいまちょっと人気がないけど、けっこう面白そうじゃないですか。
7月14日(土) C
戦場の IT革命 「湾岸戦争データファイル」 河津幸英 アリアドネ企画 2200円
10年前の1月17日からの1ヶ月半は興奮した。軍事評論家による湾岸戦争研究。第2次大戦以来
の大規模な戦争、ハイテク戦争といわれた内幕を公刊戦史を読みくだき解説。多国籍軍の大勝利も
詳細にみれば、うまくいったことばかりではない様子。しかしまあ戦争とはなんと巨大なシステムか。
7月13日(金) B
「RoBolution」 日経メカニカル・日経デザイン共同編集 日経BP社 2667円
人型二足歩行タイプのロボット産業革命。ホンダのASIMO、ソニーのSDR−3X、ERATOのPINO、
早大高西研のWABIAN、青学大のMk.5、現在最先端を歩む、5つのプロジェクトを徹底解剖する。
最終的な姿がどうなるかは不明だが、ASIMOがよさそう。これにソニーの上体の動きをくわえれば。
7月12日(木) C
「ひとり泊まり」女を上げるホテルたち 村瀬千文 幻冬社 1400円
11月21日「アジアンリゾート」“女殺し”のホテルたち−の続編。ホテルジャンキーを自称するキザな
文章は性懲りもなくつづく。今回はリゾート・ホテルとシティ・ホテルの2部に分類、わけしりのマダムら
しい眼で評する。この本を読んで、ホテルを予約するファンがいるというから、何もいえない、貧乏人。
7月11日(水) C
「ほぼ日刊イトイ新聞の本」 糸井重里 講談社 1700円
コピーライターの大御所がはじめた同名のインターネットホームページの2年半。はずかしながら、この
ページの存在は知らなかった。ネットに関する雑誌類に眼をとおしていない証拠。しかしなぜか読中、
読後の違和感。つまりはインターネットの使い方の問題。もう少し枠をはみ出なきゃイカンということか。
7月10日(火) B
「信州百水」 写真・文 栗田貞多男 信濃毎日新聞社 2500円
長野市在住の写真家による、信州水の風景百態。源流、湿原、渓谷、滝、湖沼と分類、さらに渓流、
湧水、水辺の風景行事、最後に中流の流れ、を見せる。百名山があれば百水だ。水が緑とともに人
間環境の大きな位置をしめ、景観をかたちづくってきたからには、もっとも大切にすべき存在である。
7月9日(月) A
「世界の橋」 ディヴィッド・J・ブラウン 加藤久人・綿引 透 共訳 丸善 8400円
土木工学の華、「橋」の歴史。石造アーチの発明から、ルネッサンスをへて、産業革命以降の鉄の使
用。トラス、鉄骨アーチと吊橋による長大橋の全盛から、鉄筋コンクリート、プレストレストの発明をへ
て、斜張橋の時代をむかえるまで、息をのむような美しい写真が連続する。しかし、高い本ではある。
7月8日(日) B
とんぼの本 「世界乗り物いろいろ事典」 櫻井 寛 新潮社 1500円
もう何回も登場の、鉄道写真家による乗り物づくし。象、ラクダ、シマウマ、はては中国は白帝城登山
の強力から、クィーン・エリザベス2世号、オリエント急行まで。鉄道はとうぜん、海、陸、空、すべて体
験したというのがご自慢。ただしコンコルドには予約をしながらも、例の事故で搭乗できなかったとか。
7月7日(土) E
「300人委員会バビロンの淫婦」 ジョン・コールマン 太田 龍・監訳 成甲書房 2200円
ケネディ暗殺はもちろん、エイズは人口抑制の陰謀、エルニーニョはロシアの気象調節兵器の結果
というトンデモ本。たんなる反ユダヤ論かと思ったら、スケールはもっと大きい。インフレは300年前
からの、世界制覇をたくらむ計画だとサ。次になにを言い出すかと、ついに最後の頁まで来ちゃった。
7月6日(金) C
「キモノ文様事典」 藤原久勝 淡交社 1800円
文様といっても抽象化、デザイン化されたものではなく、手描き友禅や名物裂のような古典柄の集大
成だ。その発生やら季節感の説明は、まさに日本文化そのものではある。しかし、それ故、現代社会
生活との溝の深さをも感ずる。毎年、日本の文様を年賀状のモチーフにしているだけに複雑な心境。
7月5日(木) C
「職人を泣かせて建てた300年住める家」 荻原博子 角川書店 571円
土台に暴れやすい「クリ」を、使うことすら難しいのに、それでもって家をつくる無謀さ。施主直営工事
でも1000万の予算超過と工期のおくれ。施主、建築家、職人それぞれがトコトン奮闘した様子で後
味は良ろしい。ただ今後の保守管理にどれだけ耐えられるか、ほんとにどのくらい持つのかいろいろ
考えさせられる本ではある。眞木建設の田中棟梁もいまやすっかり有名人、その昔オコられた経験。
7月4日(水) B
「大学図鑑!2002」 オバタカズアキ&石原壮一郎 ダイヤモンド社 1800円
有名大学のすべてがわかる!今年は我が母校も含め、首都圏の国公立6大学も追加。2000年か
ら3巻目、本音の大学情報は、現役高校生に重宝されているらしい。加えて予備校講師の覆面座談
会、関西名門女子大の赤裸々な証言座談会、と内容はさらに充実。大学生読者からの情報も満載。
7月3日(火) C
「片付かない!見つからない!間に合わない!」 リン・ワイス WAVE出版 1500円
誰にでも身に覚えのある、上の書名のような生活態度は、性格ではなく、大人のADD(注意欠陥
障害)という精神疾患であるとしている。大学を2度中退したという、訳者ニキ・リンコも、自分自身
がそうだと認めている。それにたいする治療、療法、薬物などの紹介。こうして社会はより複雑化。
7月2日(月) C
庭のデザイン1「燈籠」 中根史郎 学習研究社 1800円
和式庭園の点景として重要な、「石燈籠」についての趣味の本である。仏への献灯としての役割から
神社の正面にも設けられるようになり、さらに16世紀末ころからは、茶庭にもちいられ、やがて江戸
時代、百花繚乱の時代をむかえていく。古今の名庭と、そこの燈籠の名品を集めた写真集でもある。
7月1日(日) C
「怒りのブレークスルー」 中村修二 発行・ホーム社 発売・集英社 1600円
四国の片田舎で青色発光ダイオードを開発し、昨年USCのサンタバーバラ校の教授に転身した電
子工学技師の半生記。ここまで日本の悪口を言われると、ここで生活するしかない身にとっては力
が抜けるばかり。大学入試を全廃せよ、との意見もわからないこともない。しかし天才がいて秀才が
いて凡才がいて社会が成り立っている、という意識はない。そこらがひっかかるところなのだろうか?
6月30日(土) C
「五感の故郷をさぐる」 山下柚実 東京書籍 1500円
昨日の楽観論と正反対。近代社会が切り捨ててきた「五感/感覚」について、もういちど眼を凝らそう
という試み。学級崩壊やLD、ADHD児童の増加も「五感/感覚」の喪失が一因と指摘する。ところが
後半、白州正子を気取っての、日本文化論がはじまってしまい、急速におもしろさが失せてしまった。
6月29日(金) C
「プレイフル・ワールド」 マーク・ペシ 早川書房 2400円
MIT中退のプログラマー、インターネットのウェブ上で、3次元立体ヴィジュアルを展開することので
きる、VRML(ヴァーチャル・リアリティ・モデリング・ランゲージ)の製作者。ファービー、レゴマインド
ストーム、AIBO、PS2など新しいオモチャで、人間のイマジネーションはますます進化すると楽観。
6月28日(木) C
「日本の水文化」水をいかした暮らしとまちづくり 三和総合研究所・編 ミネルヴァ書房 2000円
〈環境・エコロジー・人間〉シリーズ第3巻。編集協力、国土交通省土地・水資源局水資源部だそうだ。
水をキイワードに、地域の水文化を研究することから、まちづくりを、また地球環境を考えようとする試
み。方法論としてくわしいが目標がなんなのかはっきりしない。そこらが今ひとつ乗りきれないところ。
6月27日(水) C
「カフェCafe」東京スタイル50 毎日新聞社 1200円
新しいカフェ文化ができたようだ。あちこちのカフェをメニューとともに紹介。一方で老舗、古くからの喫
茶店も対比させている。国立の「邪宗門」や「ロジーナ茶房」にまじって、中野の「クラシック」も。30数
年前ですら、その古びたインテリアに驚いたのに、いまだ健在とは。さすがに代は替わってるらしい。
6月26日(火) C
「木の家に住むことを勉強する本」 「木の家」プロジェクト編 (株)泰文館 1886円
木の家がブームらしい。この本は農文協が発売で、入門編というべきか。単なる「家づくり」の本ではな
く、木、森、木材、棟梁さらには炭焼き、しいたけ栽培など幅ひろく展開。いろいろな「木の家」の造り方
がある。あまり凝り固まらず、地元産材を使う伝統工法、杉を使ったローコスト、集成材使用、民家再
生、古材利用、それぞれの長短を、はっきり示したうえでの選択を、施主と一緒に考えるべきであろう。
6月25日(月) D
「アリがわらうときキリギリスがわらうとき」 大滝令嗣 扶桑社 1524円
21世紀の人生設計と副題。この大変革期、サラリーマンはどう生きるか?著者は理系出身ながら経
営コンサルタントとしてとくに人事関係を専門とする。退職金、年金など人生シミュレーションをしてくれ
るが現実感なし。この人の周辺は大企業のサラリーマンばかり、そうでない人にはまるで関係ない。
6月24日(日) C
機長が教える「自衛隊機操縦の秘密」 山田 誠 エール出版社 1700円
自衛隊機といっても戦闘機ではなく、元海上自衛隊の哨戒機のパイロットの話だ。P3−Cだから、対
潜水艦の哨戒や、救難任務が主である。戦闘機にくらべれば地味だけど、4発の大型機を操るのは、
それはそれで面白そうだ。前に千葉市で低空を飛んでいるのを見たことがある。館山基地への帰り。
6月23日(土) C
「披露宴 好・珍プレー」 亜繰舞子 文芸社 1500円
披露宴司会業数十年が立ち会った、結婚式泣ける話、笑える話。悲喜こもごもの人生だが、その最大
のターニングポイント結婚披露宴に、スポットを当てたのは企画の勝利か。肩の凝らない軽い読み物に
仕上がった。文句を、というわけじゃないが、強いて申せばその大阪的な泥くささが東京人にはどうか。
6月22日(金) C
「やっぱり木の家」 坂本 卓 葦書房 1700円
本人が満足していれば何もいうことはありません。昔どおりのやり方で家を建てる話。間取りも外観も
それはまさに30年前のもの。同年代の機械屋さんながら、中小企業診断士という器用な人だ。もちろ
んガンコで、奥さんのいうこともあまり聞かなかった様子。将来、愛想づかしをされないことを祈りたい。
6月21日(木) C
「全国住民サービス番付」 日本経済新聞社日経産業消費研究所・編 日本経済新聞社 1700円
「先進自治体」がひとめで。様々なサービス、行政システムをランキング。これを見て一喜一憂する首
長職員が眼に浮かぶ。わかりやすい反面、数値化しやすい内容に偏って、個性のあるサービス、シス
テムが生まれない危険性。いつまでたっても我が飯田市が出てこない。巻末にアンケート無回答と。
6月20日(水) C
「サディストは合コンでテーブルを拭く」 富田 隆 世界文化社 1200円
思い当たるヤツいるでしょ?「いがちな人」50人の心理分析だそうだ。駒沢女子大心理学者が“よくい
るタイプ”をネタにしての性格分析で盛り上がる。「関西弁を使う関西出身でない男」は、調子のいい時
はフレンドリーな感じだが、ちょっと気分がすぐれない時には、まったく別人になる軽い2重人格だとさ。
6月19日(火) C
「老後を楽しく暮らす家」 山本ふみこ 建築資料研究社 1800円
同社発行のインテリア雑誌「Comfort」に連載されたとか、知らないぞ。終始、違和感を覚えた。エッセ
イストというが、たしかに身の廻りのことを書いてるぶんには雰囲気はあるのだ。しかし何処かを取材と
いうことになると、説明者の受け売りで現実感が感じられないのだ。そういった意味では正直なお人。
6月18日(月) D
「ダンカンが行く!」 ダンカン 新潮社 1300円
小説新潮での連載。ダンカンの2泊3日ていどの、旅日記の集合だが企画が新潮社で、放送作家とし
てのダンカンの実力(?)を出しきっているとはいえない。視点が定まっていないというか、彼の個性が
伝わってこないのだ。だから編集担当など、内輪ネタが多くなる。旅にテーマをもとめちゃいかんか?
6月17日(日) B
「サクラを救え」 ソメイヨシノ寿命60年説に挑む男たち 平塚晶人 文藝春秋 1762円
全国の桜の7割を占めるという染井吉野が短命だとは聞いた。一代雑種としての成長の速さも病虫害
に弱く、忌地性のため植え替えも難しい。ところが弘前城の染井吉野は120年も生きているという。そ
の謎にせまる骨太な物語。なぜ青森なのか?同じバラ科のリンゴの剪定と施肥が、そのヒントらしい。
6月16日(土) B
「『精神障害者の犯罪』を考える」 山口幸博 鳥影社 1800円
近所に精神障害者のリハビリ施設ができることになり、図書館にリクエストして入れてもらった。著者
は地方公務員でありながら、その触法問題について、その歴史、欧米の事情と過去の判例を紹介。
司法精神医学の抜け落ちた問題を提起。おりしも大きな事件の発生で、注目の本となってしまった。
6月15日(金) B
「ケータイ生活白書」 博報堂生活総合研究所 NTT出版 1600円
今や世界語の「ケータイ」。今後そのケータイ文化が、どんな未来を目指すのかを模索する。ケータイ
自体の進化予想もさることながら、日本的な発想、つまりニーズを汲み上げるうまさが世界をどう変え
るか、の社会論でもある。著者はそんな日本の将来性を IT先進国としてバラ色で描いてみせている。
6月14日(木) C
「グルーヴィー ブック レヴュー」 「同 ブック 2001」 ブルース・インターアクションズ 各1900円
70年代「全都市カタログ」の様なものか。そのころを中心にマニアックな本や音楽の紹介。時代の雰
囲気を知るものとしては違和感、2冊とも読めなかった。歳をとりすぎたか、しかし同年代の諸君、な
ぜ黙っているのだ。植草甚一になりたがっている連中には「30年早いよ」というべきではないのか。
6月13日(水) D
「板谷バカ三代」 ゲッツ・板谷 漫画・西原理恵子 角川書店 1200円
角川書店の「メンズウォーカー」他に連載されたものだとか。大山倍達の本とはなんの関連性もない。
ただひたすら家族のバカさ加減をこれでもか、と説明してくれる。雑誌の連載ならばマンガ雑誌と同じ、
なんでもありでけっこうだけれど、本にすることはないだろう。買って読むひとはいないんじゃないかな。
6月12日(火) B
「装丁/南 伸坊」 フレーベル館 2300円
馬丁や園丁のように、装禎の職人を自認して、装丁家ではなく「装丁」を名乗る。ややこしい話ではあ
るが、中身は作品とその誕生の過程を語る。歌舞伎でいえば「けれん味タップリ」の猿之助のように、
毎回のアイデアを自分自身が楽しんでいる様子。玄人筋には、あまり買わない人もいるのでないか。
6月11日(月) B
「日本社会の可能性」 維持可能な社会へ 宮本憲一 岩波書店 1700円
そこで大御所の登場。環境問題を軸に、サステイナブルな社会をもとめ、日本の財政、政治システム
地方自治まで、幅広く論議をする。農業を中心とする内発的発展と景観の復旧により、環境の再生を
提案。しかしイデオロギー的な生々しさが随所に現れ、かならずしも大賛成というわけにはいかない。
6月10日(日) B
「必読!環境本100」 石 弘之+環境ゼミ 平凡社 1500円
東大大学院新領域創成科学研究科石弘之研究室のゼミ研究。実際は104冊、それぞれ3、4冊づつ
院生が本の解説を担当している。ここにある本を全部読めば、環境問題の専門家になれるわけ。おお
まかな流れは理解できるものの、サステイナブルな社会と経済成長の関係は未だよく見えてこない。
6月9日(土) C
「可笑しなアメリカ不思議なニホン」 長野智子 青春出版社 1400円
「ひょうきんアナ」が夫の転勤でNYへ、ニューヨーク大学大学院メディア環境学を専攻しつつの5年間
の報告。毎日新聞の連載をまとめたものらしい。なるほど軽薄な文体も、目線の低さを強調、バブル
絶頂期のアメリカの姿を垣間見せる。専門のメディアにたいしての日米の意識のちがいがおもしろい。
6月8日(金) C
「もっとも危険な読書」 高橋源一郎 朝日新聞社 1800円
週間朝日連載の「退屈な読書」の単行本化。本にたいして「愛」があるのか、129篇の書評はほとん
どが美点のみを取り上げる。唯一の例外が、柳美里の「命」で、後味が悪いと評している。「好きにな
れなかった本については書かないことにしている」というから余程のことなんだろう。読むつもりもない。
6月7日(木) A
「王子さまを探す女、お姫さまを待つ男」 町沢静夫 佼成出版社 1400円
「自分探し」の落し穴。現在社会の若者の病理を、平易かつ明快に指摘する立大教授。母親密着性を
糾弾するが、これは農耕民族の宿命ともいう。父親の存在感と幼児期のしつけの再評価。うつ病予防
の3原則など豊富な内容。それにしても通俗的な書名、「ボーダーライン」とでもしておけばいいのに。
6月6日(水) C
世界おもしろ比較文化T「トイレはどこですか?」 小屋一平 心交社 1500円
旅と比較文化をテーマにホームページを運営してきたウタリクリエイツ筑波研究所に寄せられた世界ト
イレ事情。韓国から中国、モンゴルそしてロシアからヨーロッパへ。さらにトルコ、エジプトからパキスタ
ン、インド、チベット、東南アジア、オセアニアと地球を半周。すべて写真入りで、ここまで続くと疲れる。
6月5日(火) C
アートビュウシリーズ「ターナー」 藤田治彦 六曜社 1800円
近代絵画に先駆けたイギリス風景画の巨匠の世界だそうだ。水彩の地誌画家としてスタートし、晩年
のあの有名な「雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道」にいたるまでの、画風の変遷のすべてを、
影響を受けた絵画とを対比させながら克明にたどる。こんなにも、器用な画家とは知りませんでした。
6月4日(月) C
「飼ってはいけないマル禁ペット」 パンク町田 どうぶつ出版 1400円
動物好きでプロレスラー志望、モヒカン刈り、フリーのペットコンサルタントである。ほ乳類、は虫類はも
ちろん、魚類、鳥類、両生類その他、昆虫類まで。それぞれの餌、価格、月刊飼育費用、対人適応度
に学術的な説明も詳しい。がそれよりも、エピソードをつづる半分壊れた文体がおもしろく、ユニーク。
6月3日(日) B
「テレビ−『やらせ』と『情報操作』」 渡辺武達 三省堂 1600円
同志社大教授による硬派のメディア論。テレビにおける「やらせ」「情報操作」はそもそもが逃れられな
いものとし、それらを監視する、公立の「日本マスメディア委員会」と、後で検証可能な資料を保存する
「国立映像資料館」の設立を提唱。ケイタイ、インターネットなどとの関連については言及していない。
6月2日(土) C
あなたも理想の家が持てる「建てて、納得!」 片山かおる 文藝春秋 1429円
バブルをうまくやり過ごし、前作「お受験」であてて中古の3階建てを購入した著者が、こんどは住宅に
挑む。今回もカチッとした文章。34軒の1戸建てを取材するが、ほとんどが建築家とうまくいった例だ。
最後に施主、建築家、工務店、不動産屋の座談会で本音が出る。ほんに、住宅づくりはむずかしい。
6月1日(金) B
スペンサー・シリーズ第二十七作「ハガーマガーを守れ」 ロバート・B・パーカー 早川書房 1900円
本屋でずっとガマン、やっと図書館に入った。素人がみればヘタな訳なのだが、ファンはその計算しつ
くされた語彙の選択に酔いしれるのだ。もうストーリーはどうでもいい。しかし今回はホークがヨーロッパ
へ出かけて不在。スペンサーとスーザン、ホークの3人の、絶妙な会話を楽しむ向きには不満気味だ。