大橋新景観:長大橋の景観条件

 

※伊南バイパス中央アルプス大橋開通

長さ990mの長大橋 飯島町田切から駒ヶ根市福岡まで1.8kmの区間が開通

与田切大橋につづいて 中田切川を渡り

全長 9.2kmの伊南バイパスが全通することになった

橋の上からの中央アルプスは 空木岳が正面に

左が田切側 右が福岡方向

午前中には陽の光に橋の構造と中央アルプスが映えそうだ

(2018・12・30)

 

羽場大瀬木線・松川切石大橋補足 →jump

1) 橋の空間性

  そもそも「橋」という存在は 「道」という動的な視点と 「川」という大きな空間が出合う場所である

  したがって 日常の景観上はまことに重要な場所で 広場という概念がなかった日本の近世において

  橋詰という言葉があるように 江戸・大阪などの大都市では人々が出会い また集う場所でもあった

  地方都市の成立過程においても 川は真ん中にあったり 傍には必ず存在しているもので

  必然的に橋が必要とされてきた

  ただ飯田市の場合 川の位置が低いことから 長い木橋を架けることは難しく

  一旦川床に下りて 小さな橋を渡り 今度は斜面をまた上って対岸にいたるケースがほとんどで

  高い視点が取りにくいことから 上記のような景観的な意味は薄かった といえよう

  別項にもあるように 明治中期に木製トラス橋や吊り橋がさかんに建設され

  上記の橋の空間性は ようやく高まったのではないかと思われる

松川に架かる国道151・256号の新飯田橋 遠く風越山を望み 手前に飯田城址

 

2) 道路の高速化と長大橋の建設

  さらに昭和の後期 モータリゼーションの進展で 道路のスピード化が計られ

  構造力学の進歩とともに 長い橋が建設されるようになった

  さらに近年は 谷を大きく跨ぐ 長大な橋があちこちに出現している

阿知川の渓谷をまたぐ国道151号・万歳大橋(昭和47年)

  それらは○○大橋という名称が付けられ すでに近くに大橋がある場合には

  新○○大橋と呼ばれることになる

  構造計算の高度化と土木施工技術の進歩から ダイナミックかつ美しい橋の姿を

  みせつけている

  

県道1号線・米峰大橋(平成24年)から見た千泰大橋(昭和57年)

3) 視点の高さによる新しい景観の出現 

  そういった景観要素としての橋自体の存在する風景にとともに

  そこを通る人にとっても まったく今まで考えられなかった新しい景観が生まれることになった

  つまり視点の高さである

  これまた別項で考えてみているが 美しい景観にとって 最も必要なものは

  ブロードビスタと呼ばれる視界の広さ に加えロングビスタと呼ばれる奥行きの深さ

  さらに景観対象物の存在と 高い視点である

  景観対象物の存在は別として そのほかの要件をすべて満足する場所が 大橋からの景観である

飯島町・与田切大橋(平成24年)からの中央アルプスと与田切川の平の俯瞰

こちらは先ごろ開通の松川切石大橋から やや望遠での松川と飯田段丘さらに伊那山地

橋上構造については →jump

4) 橋梁の計画と景観予測  

  そこで土木の設計者に望みたいのは 単なる交通工学上の検討にとどまらず

  周辺地形を読みながら 橋上からの景観予測をも計画の柱にすえてもらいたいのだ

  橋梁の勾配はいたし方ないものの その横方向の移動は わずか数メートルでも

  そこからの正面景観は かなり違ってくることもありうる

  さらにはクルマでの移動景観 自転車での視界の変化 さらには歩行者のスピードでの

  見え方も考慮に入れておきたい

川路大橋を下っての竜丘土地区画整理事業地区の俯瞰

5) 橋梁設計の景観想定と景観デザイン

  国家プロジェクトのような 大きな橋梁設計では もうすでに行われているが

  近年の3Dウォークスルー動画の制作技術の進歩は目覚ましく

  住宅や建築物のプレゼンには必須のものとなっている

  地方においても いや風光明媚な地方だからこそ 設計の早い段階での

  景観想定のツールとして使ってほしいのだ

野底川大橋(平成12年) 両側に高い目隠し 西側目隠しは とくに近くの県職員住宅への視線を配慮したようだ

飯田市の象徴としての風越山 東側歩道から車道越しに見る

電線もなく市街地で最も山に近いビューポイントでもあるのだが

 

  そこでは どんな景観を見せたいのか 上記クルマ・自転車・歩行者の視点で検討を加えていく

  たとえば橋梁に歩道をつけるとすれば どちら側に設けるのが望ましいのか

  そこにおいて少し立ち止まって のんびりできる空間あるいは施設は必要ないのか

  そしてその場所に相応しいのは どの地点なのか

国道153号松川橋手前の松尾高架橋 やはり西側には高い目隠し

一見大橋風だが3つの部分からなっていて 歩道は西側についたり東側についたり

続けて歩くのは不可能 これは東側歩道より車道越しに風越山と飯田段丘

こちらは新たに開通した松川切石大橋 かなりの勾配はあるものの歩道を歩く人をかなり見かける

犬を連れた散歩やウォーキング またこの手前の食品も扱う既存ドラッグストアへの切石方面からの買い物など

側壁は高速道路でお馴染みの透明なポリカーボネイト板 東側一部目隠し透明シート貼り

やはり上の2例とくらべると高さはあるがスッキリとした印象 (2014・2・4)

6) スモール・レスト・スペース

  あっちこっち展望景観を求め歩いていて ほしいのは 小さな休息所だ

  いわゆる展望台には 当然ながらベンチが用意されていて

  弁当を拡げることができる

左は上飯田・御用水脇のベンチスペース いい空間だが左の竹薮が成長しすぎて景観破壊

右は与田切大橋の東側スモールスペース 逆側の中央アルプスの眺めはいい ベンチを置きたい

 

  せっかく素晴らしい展望景観がありながら それがピンポイントゆえに

  少し立ち止まって のんびりできる空間がないのは残念なことだ

  あるいはそこでの安全性を保つ施設としての 手スリの形状・防護柵のあり方

  さらにはそこにいたるまでの橋梁以外での駐車スペースが必要かどうか

  など実際の設計要件として検討されることが望ましい

高森町と豊丘村を結ぶ天竜川の明神橋 2本の橋脚ごとに計4ヶ所のレストスペースが設けられている

左が上流側 右が下流側 ただ景観対象物がはっきりしない点は残念だ

ここまで大きなスペースが必要かどうか は別として これを実現したことには関係者に敬意を表したい

2013・4・7

 

7) ドローンによる景観想定調査

  以上の記述から3年 各界の技術の進歩は日進月歩だが ここへきて景観調査での

  新技術として ドローン利用が注目されている

  今までの無人飛行体としてはラジコンによる飛行機あるいはヘリコプターが用いられたが

  4つ あるいは6個の回転翼による安定性にくわえ GPSの普及 さらには

  ビデオカメラおよび記憶媒体の高性能化 および電池性能の向上で ほぼ自律的な

  飛行と動画撮影が可能となってきている

  上記 橋上からの景観想定には もはや3Dパースに頼ることなく 実際の見え方を

  事前にそのまま体験できるのだ

  

  

 

 

 

 

三遠南信道・天竜峡大橋(仮称)工事空撮

阿南町のドローン空撮家・勝又さんより 現場上空写真をいただいたので掲載します

附近は一般人は立入禁止で工事状況は まったくわからなかった

ときどき見学会は開かれるようだが 高所からの俯瞰風景は見ることは不可能

動画からの切り出しだが 解像度の高い4K映像からで まことに貴重な写真となっている

 手前が川路側の天龍峡インター 奥が竜江側 JR飯田線の鉄橋との位置関係に注目したい

グルッと旋回して竜江側橋台

さらに旋回するとJR線路は鉄橋から川路のトンネルに入って 天龍峡駅に向かう

左旋回を続け 竜江側上空 左にインター 中央やや右に川路区画整理地区を遠望

その真上に風越山の輪郭

 

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