建物高さイメージ/再開発ビル群

 おまけ 飯田商工会館/サヨナラ・オープン

昭和41年以来 親しまれていた商工会館の建て替えが決まり 解体時期を迎え

2回にわたり見学開放が行われた 一時は市内でもっとも高い建物だったので

そこからの市街地中心部の展望を記録しておきたい

2011・11・ →jump

1) 建物高さのイメージの形成

  景観インタビューを続けていて いつも話題になるのは再開発ビルの高さの問題である

  つまり周囲の建物に較べると 高過ぎて違和感を覚える という人がいるのだ

  その反面 市街地の中心部の景観としては それほど気にならないという人も存在する

  数からいえば前者の方が多いのだが そういった高さという景観意識がどこから生ずるのか

  またどう考えるべきか 景観構造上 避けて通れない大きな問題である

  京都や奈良など古都における建物の高さ論争 また国立市の高層マンション騒動をはじめ

  全国で話題に事欠かない

  ここでは再開発ビルをモデルにして飯田市内の他のビルの状況を見ながら

  景観意識についての思考の糸口を探ってみたい

 

2) 個人の景観感情

  景色を見て湧き上がるという点からみれば 個人の感情はその人の景観経験の反映である

  育った生活風土や日常的な生活環境に大きく左右されるのは当然である

  またよく言われるように 一方で秩序のない東京の景観を糾弾する人がいれば

  猥雑なその風景こそ まさに東京景観と賞賛する人もいる

  さらには美醜論争にまで行き着く問題として 近年の工場萌えや廃墟趣味とも

  共通する景観問題の難しさをも表わしているようだ

  飯田市での例を挙げれば 旧市内を形成する台地の斜面について

  景観的に評価しない人もいれば 逆に その迫力ある風景を好む人もいる 

  また開発か保全か という二元論的な経済環境との対比にも影響されていて

  それに関係する業界にいれば 許容する範囲は広くなってくる

  これはグローバルか地産地消か などとも同根でもあるようだ

 

3) 工学的な高さ意識と景観シンボル

  高さの認識は対象物までの距離と 高さそのものから生ずる 見上げる角度つまり仰角によるものだが

  ここにおいて距離についても遠近感という感覚が存在していていることにも留意しておく必要がある

  つまり視覚の恒常性から その距離感を利用することも 遠近法として

  過去の建造物には応用されてきた

  そんな距離感にくわえ 見上げる角度 極端にいえば首を動かす感覚も高さに関係しているようで

  そこにおける筋肉の緊張感が さまざまな感情を生んでいるようにも思える

  例えば高さに対する憧れは 塔という形で実現されてきており 景観シンボルとして尊重されている

  日本でいえば東京タワーであり また昨今のスカイツリーという社会現象でもあり

  世界においても あまたの景観遺産として認識されている

 

4) 水平視野における視角の問題

  一方で高さ意識に関連するものとして水平視角の問題がある

  ちょうどパノラマ景観の逆のもので 水平視野に占める対象物の割合である

  いうまでもなく その割合が大きければ心理的な圧迫感あるいは閉塞感を覚え

  高さ意識と合成され 巨大なものという認識が生ずる

  ただしここにも高さ同様に上記の距離感が関係しているのであるが

  一般的にそれが自然物の場合には 景観シンボルとして賞賛される傾向にある

  たとえば富士山などの山見えビスタであり ヨーロッパアルプスの迫力景観である

  建造物の場合には もう少し微妙で 先に見たように評価は分かれる傾向にある

 

5) 都市イメージと建物高さ意識

  京都・奈良において高い建物が相応しくない という感情は

  その都市のもっている古都イメージと関連するのは当たり前のことで

  国立市の高層マンション訴訟については

  落ち着いた文教都市の住宅地イメージに相応しいか という景観論争に行き着く

  飯田市民の景観インタビューによれば 松本中心部の高層ビル群については

  高すぎる という感情はもたないようである

  つまり中心商業地における高さ意識は

  都市の規模による商業集積の大きさからくる都市イメージに左右されているようだ

 

6) 建物立地と景観シンボル  

  さらにはその建物の周辺状況が高さ意識にも関連する

  どこからも良く見えるという立地にあれば 景観意識にはのぼりやすく

  どの位置から どの程度見えるかが検討される必要がある

  周囲の建物が低ければ 高さは一層強調されることになるし

  低層の建物に隠れたり セットバックされていれば 高さ意識は薄れることになる

  場合によれば 季節や時間との関係 順光か逆光か も印象に係わりそうだ

  もっと重要なことは 上記の景観シンボルとの関係で

  親しまれている景観シンボルが それにより邪魔されるとなると

  余計に高すぎるという批判にさらされることになる

  あと そのもののデザイン性も 大きく関連しているようで

  それへの評価が高ければ 高さの問題も許容されそうだし

  歴史遺産のような貴重なものも 同様ではないだろうか

 

7) 低層・中層・高層・超高層のイメージ 

  一般的に低層建物といえば2階建て までということになろう

  中層建物は3階から5階まで 6階建て以上を高層建物と呼んでいるらしい

  ただし高さ10m以下の木造3階建ては低層とイメージしてよいのではないか

  中層というイメージも古くは団地など集合住宅において

  5階まではエレベーターなしで造られたことから 形成されたようだ

  その昔 建物の安全性に関する調査にかかわった経験からは

  「樹より高いところには人間は住めない」 という言葉があって

  そこからも中層と高層の認識にも影響があるようだ

  先の景観インタビューによれば 飯田市民の景観意識としては

  5・6階にその区別があるような印象である つまり7階建て以上を

  高い建物として認識しているように思える

 

8) 飯田市の高層建物(7階建て以上)

飯田市都市計画図に建物位置を落とし込み

@ ディスカンソ東和町 13階建て

市内で最も高いビル 周囲が低いだけに評判が悪い

なによりも景観シンボルの風越山のビスタを遮っているところが問題

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A ディスカンソ江戸町 8階建て

セットバックして後ろが8階建て 未だ入居者募集中

東側からは隣接の3階ビルの陰で圧迫感は少ない

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B ホテル・オーハシ 10階建て

市街地の軸線から外れているため あまり意識されないようだ

しかも道路からは逆光

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C 飯田商工会館 7階建て一部8階

高速バスのターミナルでもあるのだが そろそろ という感じ

これも軸線を外れているため意識には上りにくいが

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D ホテル・ニューギンザ 6階建て一部7階

不法建築風の増築で7階 どうも営業はしていないようだ

高さというより外壁の老朽化が目立ち 都市景観上問題化しそうだ

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E 飯田病院 6階建て一部7階

基本的に6階建て中央の展望レストランが7階

左写真の東側は圧迫感

 

準工業地域だが西側の前面の駐車場で高さ意識が緩和されているようだ

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F マンション・ピースフル 8階建て

道路からはセットバックしていて 近づかないと全容は見えない

だから高さ意識は少ない気がする

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G エステートマンション見晴 7階建て

後ろ北側に台地(見晴山)をしょっているので 遠くからは高さは感じない

近づいてみると相当な圧迫感

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H 県営住宅城下団地 7階建て

前が多目的グランド 後ろが城址の段丘という立地

前の道路は歩行者専用

遠くから見ることになって

斜面の緑に溶け込んでしまう

 

9) 再開発ビルの高さ意識スタディ

1 愛宕坂を上りきった扇町から 小道を知久町方面に

2 左は知久町1丁目から見上げる さらに進んで 3 ビルの直下から

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今度はりんご並木に沿ってのビル景観

4 右が動物園前から 5 左が知久町角から

6 右は本町角 このあたりが最も高さを感ずるところ

7 左は通り町角から

 

さらに進んで 8 右は松尾町角からの 巨大な姿

9 左は中央通り角から

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10 国道沿いに遠望する 市役所前から

11 知久町角から

12 本町角から

13 通り町角から直角に通り町を下る

14 右は リンゴ並木角から信金ビル

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銀座通りを1丁目から 15 左は中央通り角のスクランブル交差点

16 右は松尾町角から

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逆に銀座通り5丁目から 17 橋南公民館前から

18 左は知久町角 19 右は本町角からの見上げ

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20 追手町から 図書館前

ここはビル群より5m近く低い標高も影響していて

実際には風越山のビスタを邪魔してはいないが

意識上そう感じている人も多い

21 追手町小学校前から

つまりはこの通りが飯田城址へ通ずるもので

飯田市街地の主要な軸線となっているためか

22 飯田BC前の辻から

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23 最後に主税町から通り町方向 長野県合同庁舎前から

24 左は旅館「大安」前附近から 25 右は銀座通り角

左の堀端ビルは地元業者による設計

26 同角から信金ビルの見上げ 27 右は信金ビル越しに風越山方向

銀行ビルは軽快なデザイン コストもかかっているようだ

今まで高すぎると思っていた金木犀の並木も建物スケールが大きくなるとそれほど感じない

さらに道路幅も22mと広いので 市街地のシンボル風越山の見え方もプラス方向

本町1丁目 28 左が通り南側の見上げ

それほど広くない道路の南側一杯 つねに暗い印象は否めない

このあたりが高すぎるといわれる所以か

29 右が北側の見上げ

低層部があるので当りは柔らかい

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2010・11・4

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飯田商工会館/サヨナラ・オープン

もともとは飯田商工会議所を中心に放送会社・出版社あるいは青年会議所など

さまざまな団体が入居していたが 同時に高速バスのターミナルでもあった

正面玄関と1階乗車券発券所と待合室

3階の商工会議所大会議室 右7階は展望食堂という名のレストラン ここしばらくは無利用

建設当時 夏休みのアルバイトとして細澤工務店の現場にお世話になり 2・3階の躯体工事を見ている

ペントハウスには入れなかったので 以下は6階屋上からのパノラマ

正確には西北方向 風越山を背景に再開発ビル群

ここらが北方向になりそう 銀座通りから東野方面 鉄塔はNTT

旧展望食堂のガラス越しに 主税町から谷川を挟んで橋北台地方向 鉄塔は中部電力

下が追手町 主税町の突端 長野県合同庁舎 奥に上郷 高松台地方向

南方向からやや東寄り 旧飯田城址方向 追手町小学校の奥に 飯田美術博物館

ほぼ南方向は南常盤町 ホテルオーハシの2棟と左に飯伊森林組合

常盤町の東陽興業本社ビルの向こうに松川を挟んで鼎の段丘方向

上常盤町から伊賀良北方方面を遠望 中央の杜が愛宕神社

 

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