飯田卸団地−高度成長の残り香

 

※飯田バイパス松川橋 →jump

 

股間に違和感を覚えつつ 使い続けていた 室内自転車用のサドルだったが

左側のスプリングの切断(これはかなり前から) 樹脂製の下地が前後2つに割れていた

11年間使用したサドルは ネットでサイクルトライから手に入れたもの

実店舗が飯田卸団地の中にあると知ったのは それからしばらく後のこと

ついに新しいものを購入すべく 卸団地を訪ねた

普段はまったく縁のない場所 それでもサッシ関係のカタログを貰いにきたり

防火防犯部の広報ティッシュの注文やらで 何度かは来ている

サイクルトライは営業時間が正午から 仕方なく団地内の喫茶店・珈琲人形ROSEでランチ

卸団地の中心部 飯田卸会館の1階の 昭和を感じさせるインテリア 店内には常連さん2人

昼過ぎに店舗へ 現在市中のスポーツ自転車専門店は ここと天竜峡に1店

数多くの有名メーカーの完成車や部品が並んでいる ロードの走行会なども企画しているようだ

少し値上がりしていたが 前と同じブリジストンの一般用サドルを手に入れた

*

前々から この卸団地という特殊な場所についても 記録しておく必要があると思っていたので

日をあらためて訪問し 全体像を理解すべく あちこち歩いてみた

飯田市の中心部からは段丘を下って2kmちょっと 天竜川にそそぐ支流・松川の合流点に近い右岸

国道153号と同じく151号の交差する位置になる なお153号のバイパス・アップルロードは

3つの部分からなる長大な松川橋によって 団地の西端の上部を通過している

 

松川橋歩道から東側を見た 団地内の中心道路 一番奥の左側が青果物 右側が水産物関係の市場

左側は ほぼ全てが食品関係の問屋 右側は その事務所関係か やや規模が小さい建物

大きくは1本のメインストリートと南側のサブストリートから成り立っているが

これはその裏通りのサービス道路

サブストリートは物販関係の商社が並んでいて 道路側は店舗事務スペースとなっている

したがって裏の倉庫に面したサービス道路が必要になるわけ

松川橋の歩道からは団地に下りる階段が3ヶ所あり ここは最も南側に位置している その踊り場から

今度は地上に下りて 団地内の様子を確認する

県道18号と国道153号の交差する永代橋南詰から 50mほど弁天よりにエントランス

一方通行の道路を40mほど進むとメイン道路

幅員12mにくわえ 建物は5・5m後退し 駐車場に使っているので 広々とした印象

逆側から ここから道路は傾斜が強く 上溝橋方面とつながっている

左が水産物の県水丸水 右が飯田青果

水産物関係は すでに終了しているが 青果物は まだ入・出荷の状態

こちらはサブ道路 左がクロサワ 右が安藤衣料

その手前に横道が やや西に振れながら 中心部の卸会館を通り 県道18号と結んでいるが

クルマは通行不能 歩行者のみ

左が卸会館 喫茶・珈琲人形ROSE と和食・妃の鮎が入居

右はトマツ裏側 暗渠で井水・新井川が流れていて 北側の境界となっている

横道は これも井水の思井川から段丘に上がる道路と結んでいて

当初の計画では段丘上に職員駐車場が設けられていた 現在は高架橋下が主として使われていて

上の駐車場は空き地の様相 ただ道路は さらに大型は無理だが八幡方面につづいていて便利

横道は 東側にもう1本 これは幅員も広く 県道18号に出られるので 利用度も高く

隣接建物のサービス道路としても機能している

その先の県道18号は主要地方道として 飯田市街と天竜川左岸を結んでいる

その割には幅員が狭く 民家も建てこんでいて 印象はあまり良くない

この道路に面して トマツ本店と飯田米穀ガラス部が共同組合として店舗を構えている

飛び地は もう1ヶ所あって松尾高架橋の西側に2つの建物

日曜雑貨卸の今泉 と国道153号に面してスガヌマ 現在はシモジマ・パッケージプラザとして一般営業

*

最後に団地やや東寄りの段丘端部に 羽場獅子塚古墳がある もともとは前方後円墳だったようだが

一部削られて 現在 児童公園となっている 段丘際を流れる井水・思井川を橋で渡り 階段で上ることができる

*

全体面積は3.67ha 内部の道路や建物の機能配置は なかなかうまくできていると思った

ただ周辺道路が主要道路にもかかわらず狭く その接続もふくめ 周囲に印象を悪くしている

これは昭和50年中頃の並木通りの3角公衆トイレ その左が元水産品市場の跡地の立体駐車場

飯田旧城下町の中心部 本町・通り町・松尾町にあった市場や問屋も 昭和30年代からの高度成長の時代を迎え

トラックなどの物流も活発になり 昭和42年ころから移転の構想が出てきたという

1981年に発行された「飯田卸団地十年史」によれば敷地の選定にも紆余曲折があり

また内部の道路配置計画でも かなり時間がかかった模様 この航空写真も同時代で

ブルーの屋根群が まだ新しく見える

県の高度化資金等の融資を受けて着工 市場関係は昭和45年ころからは移転も終わったようだ

その後 中心市街地には再開発が行なわれ 現在の姿になっている

卸団地は正式には昭和47年に竣工となっている そのころからすでに50年近く経過

その間には中央自動車道の全通 国道153号 通称アップルロードの上溝インターまでの開通があり

鉄骨モルタル塗り あるいはサイディング・スレート波板張り 実質オンリーの建物群は かなり古びてきた

しかも問屋という形態自体も変革を強いられており 新たな投資も難しい状況

昭和45年(1970年)といえば大阪万博の開催された年 一説には経済的な変曲点とも言われている

まさに都会から地方に遅れてやってきた高度成長時代の象徴ともいえる都市景観であろう

*

新しいサドルは さすがに細部が改良されていて 値上がりも止むをえないと思った

室内自転車に取り付けて いつものように読書しながらのペダル踏み 調子はいいようだ

さてあと何年もつのやら というか こっちの身体と どっちか

2020・8・16

 

飯田バイパス松川橋

通称・アップルロードと呼ばれる国道153号線は八幡段丘を曲がりながら下り 松川を渡って 上郷地区に入っていく

国道は上溝インターで地上に降りるが そのまま松川橋としてバイパスは上郷地区で合流

上の写真のように 松川橋の松尾高架橋部分には目隠し塀がつづいていて 西側の眺望はないが

上溝インター手前では風越山と飯田市街地が遠望できる

さらに川を渡る鉄骨製の橋からも 上郷別府の城東地区と風越山 橋は国道153号 永代橋

こちらは上郷別府から右カーブする バイパスの全景

鉄骨の松川橋からの松川と 平行する県道18号線

国道・永代橋からの松川橋 左が上郷高架橋

高架橋下は道路維持車輌の駐車場

鉄骨の松川橋からコンクリートの松尾高架橋へ

その境目にバイパス歩道への階段 東西両方向の歩道に昇ることができる

特徴のある松尾高架橋の橋脚の造形 右は高架橋の終点近く 国道153号が下をくぐっている

松尾高架橋の下は卸団地の職員駐車場 年中日陰で 雨雪もかからない理想的な駐車場

(2020・9・6)

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