読書日記保存版2001年 2000年版 home


12月23日(日) B

比企理恵の「神社でヒーリング」 実業之日本社 1300円

ゴーストライターだろうが、いいたいことはわかる。癒しではなく、新鮮な感動体験をどこ

味わうか、この女優の場合、神社への参拝ということなのだろう。フレッシュな感情が、

免疫力を高め前向き思考を生み、表情あかるく周囲からも期待され、集中力は増し良い

アイデアも浮かぶ。次々といい方に廻っていく、それが運がいいということなのだ、多分。


12月20日(木) A

「世界宗教建築事典」 中川 武・監修 東京堂出版 13000円

早稲田の建築史研究室が、総力を結集した総アート紙380頁。世界各地の宗教建築249

点を写真あるいは図版で解説。まあ長かったわ。初めて知る建築も多かった。地理、歴史、

教、社会を建築という軸から眺めることだから幅は広い。しっかり勉強して疲れちゃった。


12月7日(金) A

「やがて中国の崩壊がはじまる」 ゴードン・チャン 草思社 1700円

後半がぜん面白く、午後に大きくくいこんだ。嫌中派の感情的な中国崩壊論と違い説得

十分。国有企業と銀行の破綻は日本以上で、共産党体制では改革不能。問題はその

局がどのようにして起こるかだ。WTO加盟で加速される、2つの想定をしているが、無

台湾侵攻と、その敗北による現体制の崩壊っていうシナリオがありそうな気がする。


11月22日(木) A

「図書館逍遥」 小田光雄 編書房・発行 星雲社・発売 1900円

前に読んだ、「ブックオフと出版業界」は感心しなかったが、今回は書名もいいじゃないか。

丹念に描いていく、50編の図書館にまつわる、内外の著名人のエピソード。切り口も多様

初めて知ることも多かった。最後に5才で亡くした盲目の母の思い出で泣かせてくれた。


10月14日(日) A

「連戦連敗」 安藤忠雄 東京大学出版会 2400円

失礼ながら、この人の文章、発言にはいつも物足りなさを感ずる。ハッとするようなオリジナリ

ティをみつけだせないのだ。講義録のためか読みやすいが、評点はむしろ日曜の朝をあ

NYチェアに座っての2時間を、至福の読書タイムにしてくれたことにたいしての感謝の気持。


10月6日(土) A

「たんぼ」 めぐる季節の物語 写真=ジョニー・ハイマス NTT出版 3786円

1994年初版、1997年第8刷、2001年9月図書館受入で、新刊あつかいで許して。1934年生

、日本在住の英国人写真家が、各地の田圃風景を切りとる。もちろん1月から12月まで並べ

れた写真自体も美しく感動的。それに私自身の56年の心象風景あるいは想い出を重ねあわ

だでさえ涙もろいたちが年をくってさらに昂じてしまったのか、不覚にも涙を流してしまっていた。


9月25日(火) A

シリーズ環境社会学[三] 「歴史的環境の社会学」 片桐新自・編 新曜社 2400円

歴史的環境の保存をキィワードに現況報告。テーマの選択がよい。明日香・京都・浦・小樽

などの「街」について、「トトロの森」のナショナルトラスト運動、塔や墓・霊園あるいは負産に

いてなど。とくに「郡上おどり」の保存についての報告では、まさに社会学の面白さを実感した。


9月1日(土) A

「カンガ・マジック 101」 ジャネット・ハンビー ポレポレオフィス・発行 連合出版・発売 1143円

1995年初版2001年5月改訂版。東アフリカの1枚の布「カンガ」タテ110cmヨコ150cm、身体

巻きける53の着方を紹介、さらに48の用途を著者の夫、デビット・バイゴットが図解。訳はカ

愛好研究会織本知英子さん。全104頁の薄い本だが実に愉快、さっそく発行元に1冊注文。


8月10日(金) A

「アール・ヌーヴォーとアール・デコ 蘇る黄金時代」 千足伸行・監修 小学館 価格不明

値段はどこにもないが数万円はしそうな、A4判厚さ4センチの美術書。書名の内容よりも、産業革

後の都市化社会の出現と、世紀末の雰囲気からアール・ヌーヴォーの生まれる背景について詳

する。アール・デコなんて最後の数ページ。しかし美術論特有の難解さはあるものの、19世紀末

らどのようにしてデザインが生まれ、そしてモダンデザインが開花したかを、想像させるには十分。


7月27日(金) A

「定常型社会」 新しい豊かさの構想 広井良典 岩波新書 700円

厚生官僚からMITへ現在千葉大助教授だが、いずれ東大へ呼び戻されそう。福祉を環境とともに

としてとらえる持続可能社会の冷静な提案は幅広く、奥深い。個人の生き方としては「時間」とい

要素を、政治においては「社会保障」の議論をとおして、新しい地平をみつめる、今年1番の必読書。


7月9日(月) A

「世界の橋」 ディヴィッド・J・ブラウン 加藤久人・綿引 透 共訳 丸善 8400円

土木工学の華、「橋」の歴史。石造アーチの発明から、ルネッサンスをへて、産業革命以降の鉄の使

用。トラス、鉄骨アーチと吊橋による長大橋の全盛から、鉄筋コンクリート、プレストレストの発明をへ

て、斜張橋の時代をむかえるまで、息をのむような美しい写真が連続する。しかし、高い本ではある。


6月7日(木) A

「王子さまを探す女、お姫さまを待つ男」 町沢静夫 佼成出版社 1400円

「自分探し」の落し穴。現在社会の若者の病理を、平易かつ明快に指摘する立大教授。母親密着性

糾弾するが、これは農耕民族の宿命ともいう。父親の存在感と幼児期のしつけの再評価。うつ病予防

の3原則など豊富な内容。それにしても通俗的な書名、「ボーダーライン」とでもしておけばいいのに。


5月26日(土) A

「日本の木造住宅の100年」 坂本 功・監修 (社)日本木造住宅産業協会

上記、社団法人が東大大学院坂本研究室に委託した調査の報告書。明治以降の住宅を構造、構法、

取り、設備、産業の面から詳細にみていく。建築史の分野からは意外と抜け落ちていて新鮮。今後

は、それら研究の「元本」になりそう。住宅の面からみても、この百年の変化の激しさを実感した次第。


4月29日(日) A

「20世紀の美術家500人」 美術出版社 2200円

セルリアンブルーの表紙に細かく白抜きで500人の名前を刻む。1ページに1作品と的確な解説。A

からZまで時代、地域に関係なくアーティストが並ぶ。まさに社会、政治を反映する芸術、モダンから

アートへ「戦争の世紀」という20世紀の始まりから終わりまで、その背景を想いおこす重量感。


3月21日(水) A

新世紀へのメッセージ「20世紀の良品」 株式会社良品計画 2000円

身体の解放、電気と石油、インスタント性、移動と伝達、快適と便利、趣味と遊び、伝統と現代。の8つ

キーワードから斯界のオピニオンリーダーに20世紀の良品をアンケート。計算されつくされた奇麗な

写真。モノ・マガジンにも似たような企画の特集号があったが、じっくりと考えさせる点ではこちらが上。


3月11日(日) A

道迷い遭難を防ぐ「最新読図術」 村越 真 山と渓谷社 1700円

期待してなかっただけに、時としてこういう本にぶちあたるのは、ことのほかうれしいものだ。道迷いに

いたらないためのナヴィゲーション技術を、32の遭難事例をもとに解説する。文章もうまいが、なんと

いう説得力、オリエンテーリング全日本で18才から15連覇した、静岡大の先生だというから当然か。


2月12日(月) A

「21世紀に向けて異文化コミュニケーション」 プリブル・チャールズ ナカニシヤ出版 1800円

アメリカにおける異文化コミュニケーション学を、北陸大学外国語学部助教授が紹介。訳語が日本語と

わかりにくいものの、全体としては理解できる。自分さがしと平行した「他者」の発見「他者」との交

流、と腰巻きにある。いまや生活技術として、小学生から教えておいていいのではないかと思うほど。


2月1日(木) A

「マスコミ無責任文法」 イアン・アーシー 中央公論新社 1300円

日本の中学校でAETを勤めたのち、山口大学で研究生として留学したカナダ人が、マスコミ報道での

日本語に文句をつける。白日夢という形式を嫌いな人には、無視されそうだ。その無責任きわまりない

用法は、この単一民族国家のもつ無責任さ故なのか。後半は大学の新設学部の名称の不思議さを、

さらには自治体、企業の内容空疎な美辞麗句のキャッチフレーズを槍玉に日本語の抽象性にせまる。


1月28日(日) A

「脳の時計、ゲノムの時計」 ロバート・ポラック 中村桂子・友子 訳 早川書房 1800円

現役の生命科学者とその長女の訳が非常にいい。感覚、意識、記憶そして病気死について、最先端

の脳研究の解説ながら、文学的匂いを感じた。脳内時計による知覚のコンマ何秒かの遅れ、それが個

の資質を決定しているのか。そこに原題「THE MISSING MOMENT」の意味するところがありそうだ。


1月17日(水) A

「健康不安の社会学」 健康社会のパラドックス 上杉正幸 世界思想社 1900円

宇宙と同じように健康には果てがないそうだ。それを追求することは、最終的には自己排除につながり

「いじめ」やアイデンティティの問題にまで。本来、覚える快感というミクロな健康が、マクロな社会的健

圧力に歪められているとか。死をみつめて、「手後れの幸せ」を提唱する、香川大学教授は喫煙者。


2001年1月14日(日) A

「サイコ・タフネス」 不安をパワーに変える心理術 伊東 明・小林信也 TBSブリタニカ 1500円

「千葉すずは無意識的に五輪に行くのが恐かったのではないか」という鋭い指摘。心理学者とスポーツ

ライターが、いかにしてスポーツマンの「こころ」を鍛えるか、について書いた技術書。内容がむしろ豊富

すぎて、実用に困るケースがありそうに思える。武道では「心と身体は一体」という考えかたが印象的。


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