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12月28日(土) B

「奥三河自然讃歌」 横山良哲 風媒社 2000円

昭和21年生まれ、高校生物の教職を終え、鳳来寺山自然科学博物館長を兼

る住職の、新聞連載。カラー写真は的確で、自然に対する優しさがあふれる

章。その懐の深さは羨ましくなるほど。スローライフというのは、まさにこれ。


11月21日(木) A

「小布施ッション」 セーラ・マリ・カニンガム 日経BP出版 2500円

来日11年、小布施堂・桝一市村酒造場の取締役の金髪美人。主催した1年間

12人の講演記録。こういう講演集は好きではないけど、さすが編集工学・松岡

正剛の弟子だけにスキなし。もう全国的な有名人だが、今後の興味は小布施を

離れる時が来るかどうか、普通の講演屋には、なってもらいたくないのだが…。


10月29日(火) B

平凡社新書「江戸庶民の旅」 金森敦子 平凡社 740円

江戸を専門とする同年代のライターの綴る、庶民の旅の実状。中期以の経済

の発達からなる、旅への欲求高まりを。また幕府の人質としての大名族の

女取締をよそに、関所を抜ける女性達の出現など、あくことのない「旅物見遊

山」への好奇心を描き、後味爽やか。大平街道がそんな抜け道の一つとはね。


10月27日(日) A

「YOSAKOIソーラン祭り」 坪井善昭・長谷川 岳 岩波書店 760円

今や札幌の名物「YOSAKOIソーラン祭り」北大2年で第1回祭りを開催し、以来

10年、世界の祭りに仕上た長谷川と、当時の大学教授との共著。その成長の軌

跡は読むだけで興奮。さてこの有能な人材が今後どうするのか注目していたい。


9月25日(水) B

「世界の七不思議」 J・ローマー E・ローマー 河出書房新社 3800円

5年前の発行で新刊ではないが、面白かったので書いておきたい。子供

頃の絵本の記憶から、ずっと気になっていたが、これを読んでようやく

すっきり。七不思議についての解説としてより、古代のイメージがルネッ

サンス経て現代までの投影過程を検証する、社会学の論文でもある。


9月23日(月) A

「ボタン博物館」 大隈 浩・監修 東方出版 6000円

アイリスという日本一のボタン・メーカー、その本社内のボタン博物館の

コレクションと解説。古代から中世、近代さらに現代までの、精緻な工芸

美しさ、と同時にその背景の生活文化に想いを馳せる旅でもある。


8月21日(水) A

「消えた飯田藩と江戸幕府」 鈴川 博 南信州新聞社 4000円

郷土新聞に10年間連載。たしかに見た記憶はあるがとても読む気にはな

らなかった。国内留学した先生の、修士論文を元にした747頁の大著。旧

田藩主堀氏の系図を縦糸に、古文書を読み解き、当時の街の様子、出

来事、江戸幕府の政策まで丹念に活写。とくに幕末の状況は面白かった。


7月3日(水) A

「世界のサインとマーク」 村越愛策・監修 世界文化社 2400円

ていうかサインとピクトグラムの事典である。歴史的な経緯はもちろん、

世界各国の事情にまで広く、かつ深いのだ。しかも編集も、エディトリア

ル・デザインもカチッと決まった感。さすがにデザインの大御所の監修。


6月17日(月) A

「自然体のつくり方」 レスポンスする身体へ 斎藤 孝 太郎次郎社

2000円。前著「身体感覚を取り戻す」も面白かったが、今度はその

践編。さらに後半は、劇団のワークショップなどのコミュニケーション

論。鴻上尚史の身体論とも共通するものが。今後はこっちが主体

なりそうだ。いずれも小学校前半の、教育の一環として実現する必要。


6月13日(木) B

「日本の地形レッドデータブック第2集」 小泉武栄・青木賢人 編

古今書院 5200円。北海道、神奈川、新潟、富山、山梨、静岡の各県

保存すべき地形。意外に楽しめた。2万5千の地形図が想像力を

きたてる。早朝の、小鳥のさえずりを聴きながらの、静かなひととき。


5月2日(木) B

「地方都市の風格」 辻村 明 東京創元社 6500円

全649頁、歴史社会学と称し都市のランク付けを試みる1926年生まれ

社会学者。城下町、旧日本軍の軍都、旧制高等教育機関の3つが

点根拠。ちなみに長野10点、松本16点、わが飯田3点。それにしても尾

道0点はかわいそう。独善的だが、意外とその通りかなあ、とも思うのだ。


4月13日(土) B

講談社ソフィアブックス「タイムトラベルの哲学」 青山拓央 1500円

小さい頃から「今、生きている」という意識の無限さが不思議でならなかった。

千葉大大学院の哲学博士院生が考える、そんな今という時の流れ、あるいは

時間。よくわからないにしろ答えをつかんでいる様子。さてこれからどうする。


3月19日(火) A

「エドワード・ホッパー」 R・G・レンナー タッシェン・ジャパン 1000円

ニュー・ベーシック・アート・シリーズ、不思議な印象のアメリカの画家。著者は

そのフロイト的解釈を試みるが、わずらわしい。初期の人影のない風景画か

後期の人物を配した情景画まで、眺めるだけでいい。共通する、日差しまたは

人口照明の光と影と、そして必ずあるブルー系の色彩が、不安感を表出する。


2月14日(木) A

「余命一年…だとしたら」 スティーブン・レヴァン (株)ヴォイス 1700円

5日かかって読んだのだが、本を開くたびに背骨に響いた。「死」を肯定的にとら

え、そのトレーニングを試み東洋思想に詳しい詩人。身体で覚えるべき禅を言

葉で的確に表現。訳もうまくストレートに理解。今後、何回も読み返すことだろう。


2月5日(火) A

「日本百低山」 小林泰彦 山と渓谷社 2200円

写真は最後の著者紹介の小さな顔写真だけ、というイラストレーターの著者にふさわし

体裁。マーカーでの明るい山の絵と、手描き地図。月刊「山と渓谷」に20年以上の連

載「低山歩き」だという。百もあると多少退屈するも、妙にホッとする本。癒し系なのだ。


1月30日(水) A

「ニコマコス流 頭脳ビジネス学」 大平 健 岩波書店 1200円

不思議なビジネス書である。各章の鏡に、アリストテレスの「ニコマコス倫理学」からの

引用。聖路加病院精神科医長ながら、読み進むにつれ「楽しさ」としてのビジネスを感

ずることになる。なるほど仕事とはこういうものだったのか、と思いしらされてくれる本。


1月26日(土) A

「図説 民俗建築大事典」 日本民俗建築学会・編 柏書房 13000円

「民俗建築」が「民家」をしめすものと、初めて知ったとは情けないではないか。460頁

を超えるこの事典は、民家を建築学だけからではなく民俗学、歴史学、住居学、家政

学など様々な面から見つめ直すものでもある。執筆者は90名におよび、民家を体系

的に知るには、まことによろしい、貴重な資料。来週の住生活論の講義にもってこい。


1月22日(火) A

「大工力」五重の塔から立体トラスまで 黒田重義 理工学社 3800円

14で弟子入り、以来58年の大工の棟梁。戦時中の大空間洋風トラスの実践から、つい

間伐の小径木を使った立体トラスの考案にいたる。小言幸兵衛のウルサさも、格調の

ある文章だ。専門の研究会はあるようだが、後継者はいるのか?木の建築が、見直され

ているだけに今後の展開に期待したい。それにしても大工というのはスゴい存在である。


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