12月10日(水) B
百の知恵双書005 「参加するまちづくり」 農文協 2800円
伊藤雅春・大久手計画工房。まちづくりの方法論としてのワーク
ショップ。11月1日「会議が絶対うまくいく法」の会議進行と同じ。
徹底的に性善説に基づく「計画論」として良くわかる。問題はかか
わる人を含め、時間経過の中でいかに鮮度を保つか、であろう。
12月4日(木) A
「働かないって、ワクワクしない?」A・J・ゼニンスキー VOICE
1800円。これは聖書である。自由時間をアクティブにポジティブ
に楽しもうという発想だ。セルフ・エスティーム(自分を大切にする
気持ち)を持って、一人の時間を楽しむ。自分自身と、世界を好き
になること。そして今この瞬間を生きるのだ。ひさびさのA評価。
11月28日(金) B
「改訂版 砂浜紀行」 江川義則 近代文芸社 1200円
素人の砂浜評論家。私と同じ58歳。全国の有名な砂浜を、訪ね歩き
砂の白さ、粒の大きさや鳴き砂度などのデータを、砂浜の大きさや景
観写真とあわせて列挙。この人のライフワークだ。こういうのはいい。
11月9日(日) B
平凡社ライブラリー「山名の不思議」 谷 有二 平凡社 1200円
おそるべき博識の人である。歴史に強く、言語学にも詳しい、さらに登
山屋さんだから、現実の山自体も知っている。それにアジア各地にお
ける行動力も注目されている。文庫版ながら非常な説得力を感じた。
11月3日(月) B
「鎮守の森の物語」 上田 篤 思文閣出版 1700円
1930年生まれの都市計画の先生。前から民俗学方面に強かった
が、しばらくぶりで出会うと「鎮守の森」にくびったけの様子。ついに
社叢学会を創立。この本でも、そんな神と景観との関連を追及する
各地の研究が中核。景観から神が生まれた、と言いたげ。大賛成。
10月2日(木) B
「中国リスク 高成長の落とし穴」 日本経済新聞社 2500円
鮫島敬治・日本経済研究センター編。書名どおり冷静に中国の抱え
る、将来的リスクをもれなく検証。リスクは日本と同じ、要はそれを克
服できるだけの政府、地方政治があるかどうか。悲観と楽観の差は
そこから来る。どうにかなっていく、というマドルスルーの可能性大。
9月25日(木) B
「カトウくんのおまけ」 吉田光夫 ダンク出版 1900円
玩具デザイナー加藤裕三。1987年から、6年間のグリコのおまけ
のデザインはまことに秀逸だ。50歳での急逝、友人達の思い出話
は多分に感傷的。しかし彼の仕事の完成度と短すぎる生涯に、人
間の運命あるいは生かされ方ということを、しばし考えさせられた。
9月1日(月) B
「教育を経済学で考える」 小塩隆士 日本評論社 1800円
経済学的にみて教育は投資か消費か、という命題ではじまる。教育
には基本的に能力識別機能があるとして、そこから所得格差の拡大
や社会階層の固定化など、現在の社会傾向を必然と分析。だからこ
そ「ゆとり教育」が、公平化に逆行と糾弾する。すでに第5刷発行だ。
8月9日(土) A
「日本語使い方考え方辞典」 北原保雄・監修 岩波書店 3000円
日本語すべてにわたっての正しい使い方を、その歴史から教えてく
れて、なるほどと肯くばかり。ちょっとおかしいよ、と思うことを鮮やか
に説明。ただ7人の学者による順繰りの執筆で重複するところあり。
7月7日(月) B
「日本の伝統的都市空間」[解説篇] 宮脇 檀 中央公論美術出版
当時宮脇研の院生だった中山繁信工学院大教授の序文に、7年で終了し
た、このデザインサーベイの全てが語られている。もっと空間分析がなされ
てよいし、集落の比較という方法もあったはず。あえて肯定的にみれば歴史
的な変化を調査する、建築社会学とでもいうべき方向があるかもしれない。
7月6日(日) B
「日本の伝統的都市空間」[図面篇] 宮脇 檀 中央公論美術出版
1966年から7年間の法政大宮脇ゼミのデザインサーベイ記録。[解説篇]
と2冊でA3版45000円。当時雑誌に発表された図面の迫力はそのまま。
しかし今みると種々の感慨。だんだんと図面密度が落ちてくるのは何故だ
ろうか。ダンディ宮脇さんの、一時のお遊びの様な気がしてならないのだ。
6月3日(火) B
「水の世紀」 村上雅博 日本経済新聞社 2000円
中東おける紛争が実は水を巡る争いだ、という高知工科大教授による水政
治学の解説。水と安全はタダ、という今までの日本の常識では、想像もでき
ない。そんな水の偏在をどうするか、さらに新技術による水資源開発提案。
6月1日(日) B
「塗物茶器の研究」 内田篤呉 淡交社 3000円
MOA美術館学芸部長による棗(ナツメ)の研究。ヒマつぶしにと借りてきたが
これが意外と面白い。中世の書院茶から佗び茶の生まれる過程、つまりそこ
で誕生した棗を介しての茶の湯の流れに、しばし想いをはせることができた。
5月2日(金) A
ちくま新書 「グレートジャーニー」 関野吉晴 筑摩書房 950円
TVは必ず見た、あの関野さんは武蔵美の教授。北海道新聞日曜版の連
載だという。南米からアラスカまで出会った人とのエピソードを、文明の果
てで生きる子供達の姿を、淡々と綴るだけに胸がしめつけられる想い。後
編を期待すると同時に、もっと厚い本にして読ませてほしいと願うものだ。
4月18日(金) B
エリアガイド「地図で歩く東京U 東京区部西」古今書院 2200円
東京都地理教育研究会・東京私立中学高等学校地理教育研究会 編
中学と高校の地理の教師が、地図を片手の地理授業散歩のコース紹介。
すでに東京を離れて30年近く、その昔を思い出しながら、あるいは時折訪
ねる子供達のアパート周辺を思い浮かべながら、地理の勉強を楽しんだ。
4月10日(木) A
「都市の空間史」 伊藤 毅 吉川弘文館 9000円
建築史の東大教授による分厚い学術書。中世つまり室町時代の、寺院を中
心とした都市の成立がメインテーマだが、町屋の形成あるいは都市景観論、
さらには都市防災と、非常に幅のひろい視点。それぞれをどう発展させるか
タネが一杯の印象。大学院でゼミの輪講を受けている気分だ。楽しかった。
3月11日(火) B
決定版「図説・戦国甲冑集」 伊澤昭二 文・監修 学研 2100円
「歴史群像」シリーズ特別編集。戦国時代以降の甲冑、その他の意匠には
思わず笑っちゃうほどのユニークさ。これはそれらを集めたムック本でその
全貌を見事におさめている。まさに日本のデザインがここにはあるとおもう。
3月10日(月) B
「A TWENTY YEAR RETROSPECTIVE」 マイケル・ケンナ 5800円
(株)エディシオン・トレヴィル。今話題、英の風景写真家の復刻版。朝夕の
曇天の微妙な光をとらえた、詩情豊かなモノクロ写真。これ見りゃ誰だって
もう一度「銀塩写真」に戻ってみたいと思う。20mmの広角が欲しいわぁ。
3月8日(土) B
「ニューヨーク 摩天楼都市の建築を辿る」 小林克弘 丸善(株) 2700円
香山壽夫監修・建築巡礼シリーズ、都立大教授・建築家が案内。その創成
期も詳しいが、圧巻は社会現象としての20世紀初めの高層建築。スカイス
クレーパーという響きと摩天楼という名訳。さらにアールデコ、モダン、その
後のポストモダンとデザイン史の教科書だ。発行は3年前でWTCは健在。
2月14日(金) B
「日本美術のことば案内」 日高 薫 小学館 1800円
国立歴史民俗博物館の若手女性助教授による、日本美術の技法解説。図
版も美しく、わかりやすい。想うことは美術だけでなく、文学その他との相互
作用と、今も西洋美術に影響を与え続ける日本文化の底の深さ。それも島
国としての政治の安定性による幸運さ故なのか、といつもの思いを新たに。
2月1日(土) A
「会議革命」 齋藤 孝 PHP研究所 1200円
身体論、コミュニケーション論に続いて会議論。それにしても全てが超一級
品レベル。スタンスと方向性がしっかりしている所以か。今すぐにでも、この
スタイルで会議をしてみたいと思う。次は、いったい何を出してくれるのか。
1月6日(月) B
「スウェーデンはなぜ少子国家にならなかったのか」 竹崎 孜 あけび書房
1800円。高齢化、少子化が当然の先進国でのスウェーデン・モデルを淡々と
述べるのは留学し、さらに客員教授まで務める先生。英国が、高福祉化から後
退した今、この北欧システムは憧れ。日本の目標とするアメリカ・モデルとは正
反対で学ぶこと多し。が、このレベルに達するに何十年かかるやら、とため息。