パノラマ景観の条件

山並み大図鑑

松本在住写真家・佐々木信一さんの写真集 発行・信濃毎日新聞社

書店の店頭で見かけ パラパラしたが 図書館に入ったので早速借りてきた

表紙にも使われている 北アルプス風景 佐久市平尾山から

佐久平の背景に 左の穂高連峰から右の白馬三山までの見事なパノラマ

こちらは飯田市街 笠松山展望台からの南アルプス

そして中川村・陣馬形からの中央アルプスの展望

さらには飯田市下久堅から風越山の下に拡がる 段丘と飯田市街

(2021・6・20)

 

杖突峠からのパノラマ写真を発見したので追加します 2010・3・3 →jump

豊丘村福島てっぺん公園展望台 2017・5・22 →jump 松川町部奈・アルプス展望公園 →jump

 

上郷公民館からの伊那山地と天竜川

改築された上郷公民館の駐車場からのパノラマ景観

視点が低く やや樹木に邪魔されていて残念

こちらは2階から屋上に出ての上記駐車場越しのパノラマ

やはり改築前の公民館2階講義室からの窓から見たパノラマに軍配があがる

(2019・10・)

1) 眺望絶佳への憧れ

  飯田周辺の中世の山城を訪れてみて、

  そのいずれもが眺望にすぐれていることを再確認する

神ノ峰城から飯田市街地方面

 

  戦略上の必要性とともに、眺めの良さも立地選定の

  大きな条件であったことは間違いない

鈴岡城から天竜川を挟んで神ノ峰方面

 

  「美しい」と思う感情は、「視覚における心地良さ」を感ずることである、と定義したい

  美とは脳のある部分で働く快適性の表出であり、意識・無意識を問わず、求めるものだと思う

同じく隣接する松尾城からの眺め 少し望遠

 

  景観の美しさにも、様々なものが考えられるが

  眺望絶佳、つまりパノラマ景観はその最たるものと思われる

座光寺北本城から天竜川を挟んで喬木村中心部

2) 近景・中景・遠景・超遠景

  ここで景色のなかで対象物までの距離を、以下のように考えてみる

  @ 近景………0〜200m     対象物そのもの

  A 中景………200〜500m   対象物がなんであるかわかる

  B 遠景………500〜2000m  対象物を特定できる

  C 超遠景……2000m〜    スカイライン・空・背景

天竜川左岸の台地から 中央の飯田市街地まで5km

 

3) 視点の高さと俯瞰角度 

  感動的な眺望を考える場合、もっとも重要なものが視点の高さであろう

  そして風景を俯瞰し、中景から遠景へ連続する立体感を味わうことで

  むしろこの場合には、近景は不要となる

  人間の眼は、横方向の視野は広いが、縦方向には構造上広くはない

  見渡すためには、眼球運動だけではなく、顔全体を動かす必要があり

  行動として記憶されやすい

  だから俯瞰角度が大きくなるほど、いわゆる 「絶景」 といわれるものとして

  意識されるのではないか

長姫台地から鼎方面を望遠で 台地上の建物群まで1km

 

4) 視覚目標の設定 

  上記パノラマ景観に接するとき、視覚は無意識的に目標を設定している

  特徴のある形、知っている場所など特定し、脳の中で風景を構造化する

  ランドマークが必要とされる所以である

  遠くの山容、川筋あるいは道路、建物など、あるいは色彩などの

  個々の構成要素自体が美しければ、よりその印象は強まることになる

逆に鼎台地から飯田台地を望遠で

 

5) 水平視野 

  パノラマ景観では、以上の要件とともに、水平的な視野の広さも必要で

  「風景の見え方」 でも見ているように、視野の端にも近景が入らない程度

  つまり両眼視で少なくとも140度くらい、理想をいえば180度の水平視野が望まれる

  視覚は、そのなかで自由にズーミングを行っていて

  額縁効果は、パノラマ景観では、むしろマイナス側に働くようだ

飯田美術博物館裏側から鼎台地 樹木による額縁効果

 

  例えば山登りという行為を考えると、高山帯より高いところでは

  常にパノラマ景観が望める、ということになる

  感動体験が人間の免疫力を増す、ということもいわれていて

  登山による達成感や景観への感動によって、難病が快方に向った、

  という話をきくこともある

  現在のところは科学的に証明されているわけではないが

  景観心理の効用として、気に留めておきたい

  海を眺める場合も、視野については十分なことが多いが

  視点の高さが、そのパノラマ景観に影響する

  オーシャンビューという言葉も俯瞰風景が前提となる

  さらには古くからの津と呼ばれる湊町は背中に丘を背負っているケースが多く

  そこからの眺め−港景観というパノラマ風景も定評のあるところだ

 

6) パノラマ・ポイントの重要性

  飯田市周辺の景観構造を考える際、なんといっても

  天竜川と松川その他の支流との、複雑な河岸段丘が特長である

  地形は高さをもって、立体的に構成され、あちこちに上記の

  パノラマ景観を見ることができる

喬木村帰牛原への上り坂道途中の小公園から天竜川上流方面

 

  それはとくに人里はなれた名勝などではなく

  市民の生活の中に溶け込んでの日常的な景観ではある

  しかし全国的に見れば、珍しく貴重な、飯田市の景観でもっとも大切なもの

  といえるのではないか、したがって積極的に全国に発信していきたいと思う

  少なくともそれらパノラマ・ポイントには小公園を配置し

  皆んながノンビリとその景観を共有し、感動できるように整備したいものである

  

下伊那農業高校テニスコート下の小空地は 飯田市街と風越山を望む絶好のパノラマ・ポイント

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2009・9・19

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杖突峠展望台での 諏訪湖から八ヶ岳方面への大パノラマ

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こちらは飯田市の南西 沢城湖展望台から 伊賀良方面

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  なおパノラマ景観については もう少し発展させ MVVP(眺望絶佳景点)という概念から

  飯田市と周辺の段丘を望む12地点を選びだしてみた(→こちら) 2011・7・4

 

 

豊丘村福島てっぺん公園展望台

2015年に完成した展望公園 正面は高森町市田方向 右手に中央アルプスの雪山

右から風越山と その裾野に拡がる飯田市街 左の大きな山塊が恵那山 撮影時刻は午前10時

市街地を拡大 手前の赤い阿島橋右手から青い屋根のパチンコ店方向へリニアが走ることになる

座光寺の段丘から見た てっぺん公園方向 手前建物は旧飯田工業高校の校舎群

こちらは伊那谷随一と言われる陣馬形からのパノラマ 撮影時は午後3時を廻っており やや逆光気味

ここのCFO(正面景観対象物)は眼下の天竜川の屈曲と いわゆる田切地形 さらに正面の中央アルプスの雪山

視点は てっぺん公園に較べて 500mほど高い 天気の良い午前中に訪れてみたい もっといいのは展望台下でのキャンプ

(2017・5・22)

松川町部奈・アルプスビュー展望公園 2018・10・2

松川町は天竜川の左岸の旧生田村 北の中川村と接する集落が部奈

なんとなく明るい雰囲気の集落で ほぼ全域から中央アルプスが望める

対岸の高台 上片桐あたりから見た 集落と展望台位置 意外に横に拡がっている

つまり南北に平な場所であるということで これが明るさの一因かもしれない

サル除けの電気柵の向こうに展望公園 来る途中にもサルの群れが道路を占拠していた

周囲は果樹園だから無理もない 扉をあけて入ると真新しい休憩所

その先に天竜川から松川町が一望 標高は650mをきるくらいで 天竜川とは200mの比高

手前には雑木林があるが 大きく曲がる天竜川と天龍橋 中央左が元大島

少し望遠をかけてみる 雲のかかっているのが安平路山か 左が本高森山のようだ

見所はやはり天竜川の屈曲点 川の流れがくっきり見られるのは 陣馬形と同じ

左に振ると 高森町の下段の国道153号

右方向は天龍橋から中川村方向 晴れた冬には雪をいただく中央アルプスが正面 川から山までの一望はたぶん見事だろう

公園へのアプローチが一般的とはいえないが それだけに穴場ともいえるスポットなのかもしれない

 

 

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