景観 M mostvaluable PP panoramapoint

眺望絶佳景点 段丘のパノラマポイント 12地点

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1) 眺望絶佳と

  飯田市周辺の景観構造について個人的な探索をはじめてから 3年

  テーマを決めては あちこち訪ね歩き

  またインタビューを通して それぞれの抱く景観イメージと

  とっておきの景観ポイントを教えてもらい その場所に立って確認してきた

  その間 数々の美しい風景に接してきたのだが

  「最も美しい風景はなんなのか どこの景観が優れているのか」 とずっと考えてきた

  またインタビューの際にも 逆に 「あなたの好きな風景はどこなのか?」

  と聞かれたことも度々あった ここでその答えをまとめてみたい

  つまり コモンビスタ の考える 眺望絶佳風景である

1 飯田城址の突端から見た八幡段丘

以下の写真は35mm換算で70mm程度の焦点距離で撮影

(1〜4 まではこちらを参考に)

  やはり個人のイメージや季節・時象の風景を超越する眺望絶佳とは

  今まで あちこちで述べているようにパノラマ風景だと思う

2 常磐町 飯伊森林組合駐車場から鼎段丘方面

 

2) パノラマ景観における俯瞰角度(down-vista)と水平視野(broad-vista)

  「パノラマ景観の条件」 (→ こちら で述べているように

  その必要条件としては足元から水平線あるいは地平線

  そして空の 天頂部まで連続するタテ方向の空間と

  ヨコ方向の空間があげられる つまり俯瞰角度と水平視野である

3 箕瀬坂肩口から鼎方面

 

  理想的には真下方向 展望タワーから見下ろすような

  あるいはそれに近い角度が必要になる

  また水平視野もできれば全周360度が理想的で

  まちろん安全柵や窓枠なども無いほうが望ましい

4 上飯田白山通り トーエネック裏の小道から鼎一色方面

 

  現実的には以上の空間は気球に乗るか ハンググライダーや

  パラグライダーでしか味わえない体験であるが あえてそれに近い場所を考えれば

  俯瞰角度に関しては30度くらいの心理的恐怖心を感ずる角度以上

  (30度というのは急傾斜地崩落危険区域の危険角度でもある)

  水平視野において も少なくとも180度あるところ としたい

  視点も高ければ高いほど良く 近景が意識されないほど「絶景」 と呼ばれるものとなる

  

5 鼎一色の宅造地から飯田病院方向

(5〜7 まではこちらを参考に)

 

3) 眺望絶佳景点(MVPP)としての崖地ポイント

  上のように空を飛ぶことを別とすれば それに近い理想パノラマ景観は

  山岳頂上景観や崖地景観 高層建物のバルコニー景観などであろう

  そんな場所を 眺望絶佳景点(MVPP)とよびたい

  そして日常的にそれを求めるとすると崖地景観である

  

6 鼎一色 願王寺の坂道を下り 道なりに右に90度曲がるところ 飯田市街地中心部方向

ここは240度近い水平視野がある 左方向には風越山

 

  中世以来 ときの支配者たちは城館として そのような場所を求め

  あるいは築いてきた 天守閣の最上階から眺める街並み

  城址の石垣の突端に立って見渡す山川などは現在の観光の名所でもある

  ただ山麓の高台の展望ポイントでは 意外に眼下の木々に邪魔されて

  俯瞰視野という点からは条件的に厳しいことが多い

  やはり後述する飯田市とその周辺の河岸段丘における急傾斜地域

  法面補強された崖地パノラマ景観こそ 眺望絶佳景点(MVPP)の候補である

  ただ そんな条件の個人の宅地は あちこち見受けられるものの

  一般人が自由に出入りできるという場所というのは かなり限られてくる

7 下伊那農業高校グランド下の坂道の肩口から風越山方向

 

4) 正面景観対象物(Central Facing Object)

  さらに崖地景点だけあればMVPPに成りうるか といえばそうとも言えない

  景観を構造化し理解するためには 何らかの視覚対象物が必要で

  たとえば そこにあるのは浜辺と海と水平線に区切られた空だけでは

  眺望絶佳とはいえないのではないか

  建造物や山や川あるいは丘といった地形的な構成要素

  上記の例では集落や川・林の向こうの海辺 その遠くに島影あるいは岬など

  が存在するとき MVPPとなりうるのだと思われる

8 下久堅虎岩の高台 常信院から風越山方向

 

  つまり一般的にはランドマークといわれる景観構成物が どうしても必要なのだ

  しかもそれら CFO は適当な(近すぎず遠すぎず)距離になければならない

  さらにそれは水平視野の真正面にあることが望ましい

  と同時に太陽との位置関係 つまり逆光にならない位置にあることも重要だ

9 喬木村 アルプスの丘公園から座光寺方向

 

  遠山郷下栗や徳島祖谷などに見られる いわゆる斜面集落においても

  上記のような俯瞰角度と水平視野の崖地景観も見受けられるのだが

  いかんせん近景・中景のみで 遠景を欠いているので

  パノラマ景観としては特殊なものといえそうだ

10 豊丘村 林公園から高森町下市田の市街地方向

5) 飯田市と周辺のMVPP

  そこで以上のような条件をもつ飯田市とその周辺のMVPPを捜してみた

  崖地景観がある場所は 松川を挟んだ河岸段丘の突端であり

  天竜川による幾重にも重なる河岸段丘のやはり突端である

11 高森町月夜平のハーモニック道路展望台から

高森町の最上段で天竜川からは5段目 中央に町役場から高森中学校 眼下に中央道

 

  それは 2)であげたような適当な俯瞰角度と水平視野をもち

  かつ 4)であげたCFO(正面景観対象物)のある MVPP(眺望絶佳景点)である

12 高森町下市田の高台から ここは天竜川からは2段目 直下に国道153号が通っている

10の地点と対面する位置 豊丘村 林公園は段上の右端の林

  一般的にはこういったMVPPは1ヶ所があるかないかというところ

  これだけのMVPPが存在する ということこそ

  飯田市とその周辺の貴重な景観資産といえるのではないだろうか

2011・7・4

*

段丘景観 BEST10 ツアー 

(2013・2・6)

建築史ワークショップのメンバーでの上記パノラマポイントを巡るツアーを企画した(2013・1・27)

図中数字は勝手にランク付けした BEST10

前回の計画は大雨で流れ 前日の雪降りから一転快晴の日曜日 参加者は4名

まずは No.8の飯田城址の突端に立って鼎方面を眺めた

続いて常盤町へ移動し No.2飯伊森林組合駐車場へ

眼下の竹薮の成長が著しく 景観を阻害

さらに No.5のトーエネック裏の段丘景観を眺めたあと 松川対岸へ移動 願王寺下の No.1ポイントへ

気温は低いものの風もなく穏やかな午前中

坂を上下して No.9の下伊那農業高下から風越山の偉容を愉しんだ

今度は天竜川を渡り No.2虎岩の高台 常信院の境内から飯田市街地方面を望む

このあと No.6の喬木村アルプスの丘公園 No.4の豊丘村林公園と廻り

3時間のツアー行程を終了した No.10の高森町月夜平展望台は今回省略

**

鼎段丘・坂道景観ランキング

(2014・6・24)

飯田市街と鼎地区は松川によって隔てられているが その鼎段丘に上るための坂道がいくつもある

いずれもその肩口は まさに段丘の城下町・飯田市街地の姿を眼にする 絶好の景観ポイントである

ここではそれを坂道景観と名付け 以下の要素の検討から パノラマ景観の条件を見極めてみたい

1 視野の広さ ………(ブロードビスタ)

2 視点の高さ …(実比高と高さ感覚)

3 景観対象物 … (遠景・中景・近景)

4 奥行感 ……………(ロングビスタ)

検討項目は以上の4点としているが 比較は同日同時刻が理想である

今回は実現できなかったが あらためて写真を差し替える予定でいる

 

第1位 かやがき坂

ほかの坂道が東に上っていくのに対し この坂道だけは西に上っている

クルマで通る際は谷側は下り車線となり 左手に飯田市街地を見ながら下ることになる

ここの一番のポイントは風越山から飯田城址まで一望に納める視野の広さであろう

写真では左の風越山から愛宕台地まで 市街地中心部はさらに右方向 

遠景の風越山と中景の飯田市街地の二つのポイントが適度に離れていて 視野の広さを強調しているような気がする

また近景の鼎住宅地との比高はそれほど大きくないのだが 手前に大きな建物がないだけに 高さ感覚を体感できるようだ

鼎小学校も 位置が少し遠く また風景に溶け込む色彩で あまり気にならない

 

第2位 矢高公園坂

遠景の風越山と中景の飯田市街地は重なり合う位置に入ってくる

視野はむしろ これより右に開けている

ここも近景の鼎住宅地に大きな建物がないので 高さ感覚を実感できる

 

第3位 下農テニス坂

下伊那農業高校のテニスコートから少し下った位置にクルマを留められる空き地があり

そこからの坂道景観も定評のあるところ

風越山と飯田市街地は ここでも少し離れており やはり視野の広さ感覚に貢献している

ただ問題は鼎中学校の校舎と体育館の存在 つまり近景に これだけのボリュームがあることが

高さ感覚を失わせる方向に作用しているのではないか

 

第4位 牛草坂

矢高公園から さらに東に移動すると旧遠州街道の牛草坂 下には新しい坂が同じように上っている

視野もある程度確保されているが 比高は少ない

手前に大きな建物もなく 風越山と飯田市街地が ほぼ一目で見られる位置関係だが

鼎住宅地を望む高さ感覚は 矢高公園坂よりも小さいようだ

 

第5位 一色長坂

風越山方向では上飯田方面まで

上記のなかでは もっとも西に位置していて 地元では長坂と呼ばれている

ここも視野は確保されてはいるが 遠景の風越山と中景の飯田市街地とは離れすぎていて

むしろ風越山を眺めるというよりは 市街地の上の伊那山地と雪を頂く南アルプスが遠景となる

仙丈岳の大きな山容と飯田市街地のビル群との対比は絵になるが 松川のやや上流部で

鼎下段の平らな部分は ほかに比べると少なく その分 近景の住宅地の奥行が少ないので

高さ感覚は それほど出てこないように思われる

*

以上をまとめてみると 今回あらたに認識できたのは 近景の重要性である

つまり一般住宅など均質な景観素材が面として 見えることが理想で

突出した大きな建物が眼前にあるのは好ましくない といえるのではないか

 

今までに訪れた場所でさがしてみたら 手元にいくつかの例があったので提示したい

左は長野県合同庁舎3階から橋北段丘 手前には車庫部分の屋根

右は鼎一色の宅造地から飯田市街 手前に大きな工場

左は喬木村の縄文の丘より 遠く飯田市街と風越山のやや望遠写真 手前にはダンボール工場

右は豊丘村・林公園の先 旧東洋大セミナーハウスから松川町方向 手前は豊丘中学校

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なお上記写真は撮影そのまま つまり実際に見えているものであるが 視野の問題同様

編集ソフトや望遠レンズで切り取ることによって 別イメージの風景写真とすることは可能だ

つまりそれらが別項目で指摘しているように写真イメージと現地の風景の相違 あるいは

景観投票が写真コンテストに変質してしまう要因なのかもしれない

 

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