景観演習 U/松川町・部奈の日常景観

−明るさ・豊かさ・安定感−

 

春景色 →jump 新緑五人坊主 →jump 梅雨明け →jump 8月出穂 →jump 9月稔り →jump

9月秋晴れ →jump ※11月晩秋 →jump

松川町部奈(べな)は天竜川左岸 いわゆる竜東の高台 もともとは部奈村だったが 生田村の一部となり

さらに松川町と合併した 80戸ほどの集落 平は東西と北の3方に開いている

中心部には前田諏訪神社があり 旧分校の手前に旧農協建物を再利用したカフェ十分がある

(以下撮影日 1818年10月21日)

宮田出身で名古屋でカフェを営んでいた店主が移り住み フレンチプレスの珈琲店を開いている

なんとなく明るく豊かな感じの集落で 店主に ここ部奈で一番好きな場所はどこかたずねたところ

店の前から中央アルプスを見渡す風景が最高といっていた

ほぼ集落の全域からアルプスが望めて 矢印標識は その周遊コース案内

道路を渡って少し望遠を利かせた集落とアルプスビュー

さらに望遠で対岸の西北・上片桐方面 その上片桐から見た部奈の集落と展望台が下の写真

(この写真のみ2018年10月8日 撮影)

こうして見ると意外に横に拡がった集落で つまりは平の部分が多いということ

そのあたりが前述の明るさや豊かさを感じる所以なのかもしれない

さて店主との話では展望公園はたしかに眺望としてはいいが どこか物足りないという

少し西側に下がったアルプスビュー展望公園 サル除けの扉を開けて進む

ちょうど天竜川の屈曲点を下に見て 中川村の田んぼから 台地上の上片桐

標高は650m 天竜川との比高は200mほどになる

中央アルプスは右から空木岳 赤梛岳と南駒ケ岳 さらに越百岳 左に念丈岳

少し左に振ると 元大島の町並が午前の光に輝いている たしかにここは絶景ポイントだ

ただアプローチのわかりにくさ 広さなど居住性の問題など 店主のいうことも理解できる

日常生活において絶景が必要なのかどうか むしろ常に安心感につつまれるような景観が

周辺にあることの方が重要なことのようにも思える

2018・10・30

 

日常景観の安心感

その後ふたたび現地を訪れ 集落内を歩き廻って ビューポイントを探してみた

(以下撮影日は2018年11月2日)

やはり中央部からの眺めが 最も心が安らぐ風景だと感じた ではその印象はどこから来るのか

以下の3つのイメージにたどりついたので仮説的にあげておきたい

 

明るさ…奥行のある大きな平の拡がり

豊かさ…目の前に重なる田んぼ風景

  安定感…視野の中心にアルプスビュー

 

明るさは言うまでもなく 朝から夕まで 陽の光が満ちている地形条件によるもの

豊かさは農耕民族としてのDNAに刷り込まれている 稲穂の稔りを感じさせるもの

見上げる大きな山容は畏敬の念と それに護られている という意識を覚えるもの

 

そんなイメージのもとに上記にくわえ 代表的なビューポイントとして以下の3点をあげてみた

上の中央部での @につづいて

A 中心部の道路を東に移動し 大堤越しの中央アルプス

B 中心部から北方向 少し標高が下がった道路から さとやま自然園の向こうに中川村田島 段丘上の上片桐

C アルプス展望公園からの天竜川から 中川村の有名な渡場のイチョウ並木も眼下

段丘の緑と上片桐 中央アルプスと連続する絶景

*

以上の風景が 季節とともに どう変わっていくのか それによって上の仮説を実証できるのか

今後 定点観察を続けてみることにした

2018・11・25

 

絶景パノラマ vs 地平額縁効果

あまりにも晴れ渡った空に 家人が部奈へ行ってみよう と言いだして生田発電所から坂道を登ってみた

(撮影日 1918・12・24)

それにしても見事なアルプスビュー集落内を あちこちと案内してみたのだが

上の地点でのアルプスよりも この方がなぜか大きく見えるのだ

どちらかといえば 視点の高さを感じるパノラマ的なものに較べると 視点が低く

下半分が均質な「地」で蔽われた見え方は 額縁効果といえるのかもしれない

中心部の神社前からのビスタでも同様に感じた

なお展望公園については 行きたくない との家人の意向で未検討)

*

面白いのは上記写真すべてにおいて対象の中央アルプスが

やはりパノラマ系にくらべ日常系が大きく写っていることである

本来 焦点距離(画角)が同じならば 同じ大きさになるはず

いや むしろ距離的には近づいているのだから 少しでも大きくなるはずだ

何故か これは写す際に 無意識のうちに脳内イメージに合うように

望遠を効かせる習性が撮影者側にあるということではないだろうか

*

視覚における額縁効果については こちら

(2019・1・20)

 

初冬のアルプスビュー

中央アルプスも冠雪したようなので 天気を見計らって訪れてみた

(撮影日 2018・12・14)

やや雲はかかっていたが 期待通りの雪山風景 太陽はちょうど背中にいる

空木岳は小さな雲に隠れてしまったが 見事な存在感

ここでは雲が移動するまで しばらく待ったものの これまで

展望公園からの風景は想像どおり

(2018・12・23)

 

春景色

4月半ば 雲ひとつない快晴に 部奈集落を訪ねてみた

(撮影日 2018・4・16)

ほぼサクラの季節は終わっていて 前田諏訪神社のサクラも散り始め

やや霞がかった空気の中 田起しの終わった田圃の土の色に春を感じる

ため池の水の色も 心なし緑っぽく見える

中川村田島の段丘の緑 あるいは手前の芽吹き近い樹木の枝にも柔らかさを感じた

展望台の右手には遅咲きのサクラが1本残っていた

(2019・4・21)

新緑五人坊主

5月末 田植えの終わった部奈集落

(撮影日 2019・5・30)

中央アルプス赤梛岳と南駒ケ岳のカールに現われる5人坊主 肉眼では はっきりと確認できるのだが

スマホの望遠ではここまで わずかに5つの点が写っている

大堤の土手にも緑が溢れている

やはりこの季節の鮮やかな緑の豊かさは感動的

田植えの終わった 眼下の中川村の田んぼ

(2019・6・2)

梅雨明け

(撮影日 2019・7・31)

平年よりも長い梅雨がようやく明けて 田圃の稲も出穂が近づいている

ただ山は雲の中 8月の富士山は3日しか見られない というし

3000m級の連なる中央アルプスも 同じようだ

写真としては大きな目標を失っていて どうしても広角気味となっている

(2019・8・11)

8月初旬

(撮影日 2019・8・7)

出穂した田圃風景だが 山には夏雲がかかり大きさを実感できない

しばらく雲が動くのを待ってはみたが 状態は変わらず

中川村田島方面も同様

展望台に移動しても 雲は晴れず

(2019・8・25)

9月初旬

(撮影日 2019・9・6)

稲穂の稔り 稲刈り間近の田圃風景

しばらくぶりに中央アルプスが姿を現した

ただ空木岳は やはり雲の中

中川村の田圃も あと1週ほどで稲刈りか

 

9月中旬

(撮影日 2019・9・14)

一部稲刈りの終わった田圃も見える 望遠でやや霞がかかった中央アルプス

小さな雲が湧きあがり 左から右に流れていく 右端には宝剣岳

少し待ってみたが 次から次へと雲が湧いて頂上にかかっていく

下の中川村の田圃は稲刈りが終わっているようだ

(2019・9・18)

9月下旬 稲刈りの終わった田圃と中央アルプス - カメラの画角について

 

前回の写真を眺めているうち どうも望遠を利かせすぎている と思うようになってきた

そこで快晴の朝 またまた部奈に行き もう少し引いた写真を撮ってみた すでに稲刈りは終わっている

(撮影日 2019・9・26)

画角でいうと36度前後 35mmカメラ換算で 55mmくらいの焦点距離

ハザ掛けの様子が見られないところから コンバインでの収穫のようだ

ただやはり印象としては 実際に見ているよりも迫力が足りないが

右手の西駒・宝剣岳と千畳敷カールまでは納めたいところ

理想的には 上記稲刈り前の写真のように 100mm前後の望遠で ここに写る範囲の写真にしたい

となると 望遠で撮ったものを つなぎあわせる方法が適当なのかもしれない

(2019・10・10)

11月中旬 晩秋

(撮影日 2019・11・18)

下界では しばらく晴天がつづいたと思えば 雨が降り それとともに気温も下がって すでに紅葉がはじまっている

中央アルプスも冠雪ののち 日中の気温の高さに融けたりを繰り返しているようだ

谷筋に残った雪のせいで立体感は増しているような気がする

春先に現れる雪形・五人坊主も この季節に見たのは初めて

上記の画角についても安定してきた 思い立って訪れてみてよかった

(2019・12・3)

**

なお上記展望台へのアプローチ道路は いつの間にか簡易舗装が成されていた

 ただサル除けの金網の扉は 従前通り上下の留め金を外し 落とし金を持ち上げて開く必要がある

当然 帰りには また逆の作業をしなければならない

*

そのほか集落のあちこちで中央アルプスを撮った写真を集めてみた

中望遠での中央アルプス 集落の入り口附近から

そこから本通りを伝承センター方向に進んだあたりから

さらに本通りを伝承センターから大堤に向かったあたりから やや望遠で

本通りの一筋西側の通りから 果樹栽培の盛んな集落 矮化栽培のりんご畑と中央アルプス

(2019・10・10)

 

三角点・尾根道歩き

三角点とは国土地理院による地図作成のための三角測量に用いた測点である

明治10年ころから一等三角点測量がはじまった そのご二等・三等と枠を狭めながら

明治期に行なわれ さらに四等三角点測量は昭和の40年代まで進められ

それぞれ標石が埋められているのを見ることができる

(飯田市の三角点については こちら

その位置は一般には見通せるような小高い地形の頂上に置かれており 景観的にも

重要なところが選ばれているようだ 部奈には三等三角点と四等三角点があるので

そのあたりを探索してみた

 

四等三角点・北の原 (652m)

四等三角点は中心部からやや北方面の道路沿い カーブミラーの右手奥

白いプラ標識があって その脇の草の中に標石がある

 

三等三角点・部奈 (703m)

北の原三角点から南方向の山の上に部奈三角点がある

カーブミラーの右手の山の上の送電鉄塔の附近のようだ

部奈集落の中心部から東南の山側に入っていくと 水道施設がありその脇に山道が上がっている

その最初の頂上部に三角点があるらしい

落ち葉の中になんなく見つけた標石 脇には杭棒が立っていた

周囲は赤松林で松茸の季節には おいそれと近づけない 少し曇り気味になってきた

ここからは林に邪魔されて集落の全体像を見えない

そんな場所をさがして 尾根伝いに山道を歩いてみたが 結果は同じ

やや下がった位置からも同様で

さらに下がったところから果樹園越しに集落を眺めてみた

(2019・3・10)

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