読書日記保存版(印象に残った本) 2004年back
12月12日(日) A
「熊野古道巡礼」 吉田智彦 東方出版 2000円
格調の高い まえがきを読んでワクワク。そして期
待通りの内容。世界を放浪し紀州に住みついた昭
和44年 東京生まれ。南紀州新聞の連載だったと
いうが、自然体での感覚にこちらもゾクゾクした。
11月15日(月) B
「紙芝居昭和史」 加太こうじ 岩波現代文庫
1200円。1971年刊行の文庫化。紙芝居界の中
心人物の描く盛衰記は白黒映画を見るごとき面白
さ。これは関った人々、時代への鎮魂歌でもある。
11月7日(日) B
世界の美術「ロマン主義」D・B・ブラウン岩波書店
4800円。「ロマン主義」も知らず長く読めそうとい
うだけで借りた447頁。「自由」を知り「自然」と「歴
史」を発見した 18世紀から19世紀にかけての社
会の想像力を 豊富な図版で味わうことができた。
10月10日(日) B
「個性はどう育つか」 菅原ますみ 大修館書店
1700円。お茶の水大助教授による、発達心理学
研究。性格がどの段階でどこから影響を受け、決
定されていくのか。被験者群の追跡という、縦断調
査から、最後には夫婦間の愛情問題にまで至る。
9月15日(水) B
「地下鉄の歴史」 佐藤信之 グランプリ出版
2200円。首都圏・中部圏・近畿圏 地下鉄史。マ
ニア向けというより交通論の教科書。経済社会の
変遷の中で、計画の変更の連続を、淡々と記述。
そこにかかわった人の労力を想い、圧倒された。
9月8日(水) B
「名古屋・岐阜と中山道」 松田之利・編 2500円
街道の日本史29 吉川弘文館。 「義富屋仙吉」を
代々名乗った元結問屋がウチの先祖。当然、岐阜
と関係ありそう。読み進むうち、ルーツへの興味増
大。美濃紙との結び付きが、鍵となりそうな気が。
8月18日(水) B
「メディア文化論」 吉見俊哉 有斐閣 1800円
メディア論教科書を意図。前半はやや難解。後半
のメディア史、現在社会がいかにして各メディアに
より形作られて来たかを、実感させてくれる内容。
8月2日(月) A
「頂上の彼方へ」 トッド・スキナー NHK出版
1800円。今や全米の企業から講演依頼のロック
クライマー。カラコラムの巨大岩峰トランゴ・タワー
の登頂をとおしての人生戦略哲学。たしかに読む
ごとに、未来への希望と勇気が湧いてくるのだ。
7月2日(金) B
「マネー・ボール」 マイケル・ルイス 1600円
ランダムハウス講談社。大リーグにまったく新しい
野球を持ち込んだ、ビリー・ビーンというアスレチッ
クスGMの美学をクールに描く。米における野球と
いう物の存在の大きさ。野球小説の如き 面白さ。
6月14日(月) B
「山の文化とともに」 齋藤一男 アテネ書房
4200円。中世の山岳信仰から始まるが、やはり
明治から、昭和後半までが面白い。そして現在の
中高年の登山ブーム。山岳界の重鎮が描く 日本
登山の一大叙事詩であり、また鎮魂歌でもある。
5月3日(月) B
「階層化日本と教育危機」 刈谷剛彦 3800円
有心堂。1989年新学習指導要項以降を「失われた
10年」と各種調査で実証。さらに現在も階層化社会
の中で増幅と、東大教育学の先生。最後に大胆な改
革案も提示。2001年刊で第6刷。遅きに失した感。
4月14日(水) A
「仕事に使えるゲーム理論」ジェームス・ミラー2600円
阪急コミュニケーションズ。人間の行動原理を、「利得の
最大化」と見る、ゲーム理論の経済学教科書。それはま
た、政治学の教科書でもある。社会主義の崩壊は当然。
信頼というものが如何に脆いか、をも教えてくれるのだ。
4月12日(月) B
「民話の地理学」 佐々木高弘 古今書院 3200円
地味な本だが内容は刺激的。神話、伝承、昔話の成立
を人間の感覚から想像する試み。景観は当然だが聴覚
触覚も重要視。将来の学問的な拡がりをも予感させる。
4月5日(月) B
「不耕起でよみがえる」 岩澤信夫 創森社 2200円
福岡正信先生以来の米づくりのエポックかも知れない。
田を耕さず、できるだけ湛水し多様な生物環境から稲の
生育条件を確保という逆転の発想。あくまでも強い苗が
前提。いろんな意味で、今の日本を考える哲学がある。
3月11日(木) B
貴道裕子の「ぽちぶくろ」 (有)スーパー・エディション
3714円。骨董店お内儀の蒐集五百余点。どれもデザイ
ン性高く粋。永六輔が三亀松師匠宅で、知らないうちにポ
チ袋が手の中に、と述懐。思えば亡き祖母が市立病院の
ナースに、握手しつつチップを渡そうとした有名な事件。
3月7日(日) A
「シルクロード 路上の900日」 大村一朗 (株)めこん
2500円。「深夜特急」以来の超弩級。西安から徒歩で羅
馬まで、しかも中国から中央アジア、イランへの越境は驚
異。泣き出しそうな惨めな一人旅こそ若者の特権。出会い
と、政治、民族、宗教への素直な感性。執筆7年622頁。
2月14日(土) B
「行政マンの体験的情報術」 青山やすし・編 学陽書房
1800円。 青山さんは前東京都副知事、名前は第2水準に
もないため平カナで。残り2人も都庁職員。最初は極めて日
本的な役人の処世術と馬鹿にしていたが、なかなかどうして
行政だけでなく、組織の中の人間としての有益な知識満載。
2月11日(水) B
「多文化世界」G・ホフステード 有斐閣 2884円
オランダの社会心理学者による世界の国民文化の分析。4
つの指標でその差違を探る。それによれば欧州の隣国です
ら相当異なった社会文化が存在するという。ちょっと難解で
もうすこし,一般化した解説が欲しいところ。1995年発行。
2月8日(日) B
「天外 第三 風は踊り 星は燃え」沢木耕太郎 3200円
スイッチ・パブリッシング。「全ての旅は感傷旅行」という著者
の390頁の写真集というか、心象風景アルバムだ。日曜の
朝ページをめくりながら「旅こそ幻想」ではないかと思った。
1月20日(火) B
「ホームビオトープ入門」 養父志乃夫 農文協 1619円
水辺ビオトープだけに限らず、バタフライガーデン、ミニ林や草
地、さらには家庭菜園から、草屋根、壁面や屋上緑化にまで。
生き物を我が家に招く方法は勉強になる。しかし管理は大変。
1月17日(土) B
「食料品完売マニュアル」 松田 明 文芸社 1400円
スーパーの食料品売場の試食コーナー、売り子のノウハウを
昭和50年生まれ美人が開陳。迫力が、もろに伝わる。腹式呼
吸の発声とパフォーマンス能力、つまり役者そのもの。これは
日常生活でも必要な要件。実行すれば、運も向いてくるはず。
1月3日(土) B
「水素エコノミー」ジェレミー・リフキン NHK出版 2100円
15年ほど前の「エントロピーの法則」から、地政的とくにイスラ
ム社会との対立を加え、悲観的ながらも説得力十分。最終2章
でインターネットと同様の「水素エネルギー・ウェブ」と称した燃
料電池による、グローバルかつローカルな夢を熱く語るのだ。