読書日記保存版(印象に残った本) 2010年1月〜2010年12月back
過去読書日記 2000年1月〜2009年12月
12月11日(土) A
「瞽女さん」 杉山幸子 川辺書林
1500円。長野在住ライターによる越後
高田瞽女の聞き書き。全138頁の粗末
な郷土出版も そこには泣ける話ばかり
しっかり記憶しておきたい平成5年刊。
11月24日(水) B
「十一面観音巡礼 愛蔵版」 白州正子
新潮社 3000円。最も人気のある仏像
だが 憑かれたように訪ね歩く旅は昭和
50年の初版。想像力の豊かさと 格調
高い文章が 35年の時を経て甦った。
10月26日(火) A
「野宿入門」 かとうちあき1000円
草思社。野宿は高校以来10年以上という
ベテラン独身女性の 野宿談義。自筆のイ
ラストとともに ホンワカとした書きっぷりに
は大いに共感。今後の健闘を 祈りたい。
9月20日(月) B
「成熟日本への進路」 波頭 亮780円
ちくま新書。「成長論」から「分配論」へ
との副題は高福祉高負担の北欧型社
会への志向。そこに至る日本的政治・
官僚社会を打破するための 具体策。
9月11日(土) B
「鑿大全」大工道具研究会 誠文堂新光社
3500円。大工・指物・彫刻、ノミのすべて
がわかると豪語するムック本 千代鶴是秀
を初めとする名工達と それを求めた名棟
梁達との物語りなど もはや伝説の世界。
9月1日(水) B
「地形図の読み方・歩き方」 渡辺一夫
誠文堂新光社1800円。標高0メートルか
ら山岳まで の副題通り、東部の篠崎から
最西部の雲取山までの東京横断歩き旅。
全てに2万5千の地形図と、現場写真付。
8月18日(水) C+
「非才!」 M・サイド 柏書房 1900円
すべてにおいて才能などではなく、練習と
運なのだ と英の元卓球チャンピオンが体
験とともに例証をあげていく。俄かに信ず
ることもできないが、説得力は あります。
8月3日(火) C+
「死を忘れた日本人」 中川恵一1500円
朝日出版社。東大医学部准教授の死に
ついての思索は幅広く、宇宙論から逆に
遺伝子論さらには時間論から宗教・哲学
と、専門の緩和ケアを意識しつつ遊弋。
7月14日(水) B
「小屋と倉」 安藤邦廣 建築資料研究社
3800円。筑波大安藤研究室25年の成果
を正方形のムック本に。全国の倉の姿を、
建築的かつ社会学的追求は、迫力満点。
6月25日(金) B+
「進化考古学の大冒険」 松木武彦
新潮選書 1200円。認知科学からヒトの
歴史を探る認知考古学者 最初に社会性
を得るために美が存在したのだ、とうれし
くなるような持論展開だ。もうちょいだぜ。
5月23日(日) B+
「60歳からの満喫生活」 デビット・ブラウン
三笠書房1300円。ジョーズほかの映画プ
ロデューサー 1916年生まれが後半戦の
極意を伝授。その80%を、実践している自
信はあるゼ。訳は多才な作家・佐藤富雄。
5月3日(月) B
「日本宗教美術史」 島田裕巳 美術新聞社
3300円。今までありそうでなかった、日本
美術を宗教史から概観 まさに日本美術の
創生の過程を示唆する内容で 逆に美術こ
そが社会を創ってきた、ともいえるようだ。
4月28日(水) B
「日本は世界第5位の農業大国」 838円
淺川芳裕 講談社+α新書。月刊「農業経
営者」副編集長の若手 カロリーベースで
の自給率の欺瞞性など 猛烈な農水省批
判。希望としての農業の存在に説得力。
4月14日(水) B
「ツイッターノミクス」 タラ・ハント文藝春秋
1571円。グリーバリズムの次を予感させ
る内容。原題THE WHUFFIE FACTAR
(ウッフィーの原理 と訳したい )の方が上
の書名よりも相応しい。希望の未来あり。
4月11日(日) B
「日本の路地を旅する」上原善弘1600円
文藝春秋。本を開いてみて ここでの路地
が、部落のことだと知った。その大阪更池
出身の若手ライターのルポは さすがに深
い内容。既出文再構成だがズシンとくる。
4月8日(木) B
「自転車ぎこぎこ」 伊藤 礼 平凡社1600円
一般的に思い入れが強くなる 自転車乗りの
文章だが、この御歳77 伊藤整の次男の元
日大教授はあくまでも飄々 あちこちへのサ
イクリングの雑誌掲載再構成は愉快至極。
3月21日(日) B
「日本の伝統建築の構法」 内田祥哉
市ヶ谷出版社2000円。大先生の講演と
既出文の再構成のテーマは 柔軟性と寿
命。古建築から現代まで、構造と耐久性
への視点の鋭さには、恐れ入りばかり。
3月17日(水) B
「まるごと三味線の本」 青弓社 2400円
軽装本ながら、内容は もう三味線大全とい
うべきもの。読めば 一度その世界にひたっ
てみたい と思うはず。田中悠美子・野川美
穂子・配川美加 編著 早速FMスタンバイ。
3月1日(月) B
「死ぬまでに見たい世界の建築1001」
エクスナレッジ7600円。古代・中近世より
も、近代以降現代建築の紹介に主力の全
959頁。写真のない記述への不満も かき
消す、厚さ6.2cm 重さ2kgの迫力十分。
2月25日(木) B
「チンドン 聞き書きちんどん屋物語」
大場ひろみ・矢田 等 バジリコ2400円。
ロックから、チンドン屋の世界に入った著
者による業界史。豊富な写真と 聞き書き
は、昭和を記憶する貴重な資料である。
2月23日(火) B
「強い者は生き残れない」 吉村 仁
新潮選書1200円。環境の不確定性から
生き残るための生物の進化論を 政治・経
済にあてはめる静岡大教授。民主主義の
成立も 社会の進化の必然、と納得した。
2月10日(水) B
「自然界の秘められたデザイン 雪の結晶
はなぜ六角形なのか?」 I ・スチュアート
河出書房新社2600円。書名から宇宙に
まで展開、訳の上手さに拘わらず 理解は
半分。生物から哲学までも 数学の支配。
2月8日(月) B
「村野藤吾 建築案内」 2000円
TOTO出版の建築MAPシリーズに無理
やり持ち込んだのは 村野藤吾研究会。
1984年93歳で逝去した建築の巨匠の
幅の広さを、十分に堪能させる内容だ。
1月30日(土) B
「戊辰戦争」 保谷 徹 吉川弘文館2500円
戦争の日本史シリーズ 08年刊2刷。東大
教授による鳥羽・伏見から函館までの軍事
史。ライフル銃装備が、なしくずし的に維新
を成し遂げた経緯を活写。映画的 面白さ。
1月27日(水) B
「車掌のお仕事」 田中和夫 北海道新聞社
1500円。国鉄を退職の大ベテランの同新
聞連載の再構成。小説・脚本が趣味らしく
過去から現在のJR北海道まで 全体構成
も的確で鉄ちゃんも納得、素人も満足だ。
1月25日(月) B
「音で観る歌舞伎」 八坂賢二郎 2800円
新評論。1944年生まれ、長らく国立劇場
で伝統芸能全般の音響を担当。舞台裏か
らの 歌舞伎の世界の紹介は目線も低く、
わかりやすい。また初めて知ること多し。
1月4日(月) A
「インパラの朝」 中村安希 集英社1500円
小田実・沢木耕太郎に匹敵とは誉め過ぎか
ユーラシア・アフリカ紀行684日。美人の女
の子には、評価が甘くなる傾向はある。第7
回開高健ノンフィクション賞の加筆だという。
1月2日(土) B
「パリ 地下都市の歴史」東洋書林3800円
G・リアー+O・ファイ。パリの地下深く 巨大
な空洞があるというのだ。下水道のことかと
思ったら 建築用の石材を掘り出した跡だと
いう。その物語を丹念に掘り起こしたもの。